41話 瑠璃華はメイドと妹(仮)に挟まれる
えーっと……いま、わたしはメイド服を着た遥先輩と可愛らしい部屋着を着た奏ちゃんに挟まれています……なんでこうなったんだっけ?
奏ちゃんが私たちに提案をした後。
奏ちゃんは、遥先輩になにかを言ったみたいで。それを聞いた遥先輩はメイド服を手に取り、少し待っていて下さいと言い残して部屋を出ていきました。それに続いて奏ちゃんも着替えてくると言い残し自分の部屋へと戻って行っちゃいました。
わたしは、2人の急な行動に状況が理解出来ないまま、遥先輩の部屋で待つことになりました。
困惑しながら待っているわたしの元に、メイド服姿の遥先輩と可愛らしい部屋着を着た奏ちゃんが戻って来ると、直ぐに2人はわたしを挟むように両脇に座って今に至ります……こ、これからわたしは2人に甘やかされるんですよね?
あ、あれ? そういえば、何だか2人とも顔、近くないですか? 遥先輩とは、慣れている筈なんですけど……奏ちゃんもいるとなんと言うか……。
美少女と言える程に、綺麗に顔が整っている2人に挟まれて、吐息すら聞こえるほどに近い距離に2人の顔があるのは、緊張すると言う言葉では言い表せない心境です……。
「あ、あの~遥先輩、奏ちゃん……え、えーっと……これからなにを? それと……2人とも、ち、近いよ……どうしてそんなに顔を近づけて来るんですか?」
「瑠璃華お姉ちゃん、忘れちゃった? それは勿論、瑠璃華お姉ちゃんを甘やかすんだよ。ねぇ~お姉ちゃん」
「はい。瑠璃華お嬢様をこれから甘やかさせて貰います。奏には負ける訳にはいきません」
「お姉ちゃん、すごいやる気だねぇ~。私も頑張っちゃおうかな~」
あぁ……遥先輩も奏ちゃんも完全にスイッチが入っています。わたしを絶対に甘やかすという堅い決意が2人からひしひしと感じます……。
「は、はぁ……お手柔らかに、お、お願いします……」
何だか、遥先輩が今までにないほどにやる気に満ち溢れているような気がする。一体、奏ちゃんは遥先輩に何を言ったの?
「まぁ、あまり時間もないから。ねぇ、瑠璃華お姉ちゃん。何か私達にして欲しいことってある? あっ! でも、エッチなことはダメだぞ!」
「そ、そんなことお願いしないよ!」
「もう、奏は……。瑠璃華お嬢様、改めて何かして欲しいことは御座いますか?」
そんな急に言われてもな~。どうしよう……。
「う~ん……急にそんなこと言われても……」
わたしが、どうしようかと悩んでいると急に奏ちゃんが……。
「ふぅ~」
「きゃっ!? な、なにするの!?」
「ん? 瑠璃華お姉ちゃんのカワイイお耳が目に入っちゃってね、つい。それにしても、カワイイ声が出たね~」
「うぅ……き、急に奏ちゃんが……」
わたしが、奏ちゃんに抗議しようとしたら……。
「ふぅ~」
「ふわぁ!? な、なんで、は、はるかっ……ハルもわたしの耳に!?」
予想外の遥先輩からの不意打ちに、また変な声が出ちゃったよ。
「申し訳ありません、瑠璃華お嬢様。なんと言いますか……つい出来心と言いますか、はい……」
2人ともわたしをからかって遊んでない?
「ねぇ聞きたいんだけど、瑠璃華お姉ちゃんはお耳をいじられるのが好きなのかな? なんか好きそうな感じがするなぁ~」
「えっ、う、う~ん……。ま、まぁ、正直に言うと好きだけど……って! そうじゃなくて! もう、2人とも急に耳に息を吹きかけるのはやめてよ! わたし、すっごくビックリしたんだよ」
「そうでした……申し訳ありません」
「ごめんね~じゃあ、次からは先に言ってからするね。それにしても、瑠璃華お姉ちゃんはお耳をいじられるのが好きなんだね。ふ~ん……それじゃあ、これはどうかな?」
奏ちゃんは、わたしの耳元で優しくささやき始めた。あ、これは……ヤバイかも……。
「瑠璃華お姉ちゃん、いい顔してるね~。お姉ちゃんも、ほら、やさ~しく耳元でささやいてあげなよ。瑠璃華お姉ちゃん喜ぶよ~」
「え? わ、わかったわ。そ、それでは、失礼して……瑠璃華お嬢様、如何でしょうか?」
遥先輩もわたしの耳元でささやき始める。こ、これは……2人が左右から、わたしの耳にささやきかける度に、吐息が……。
これは……ASMRでは絶対に味わうことが出来ないこの感じ……。さ、さいこ~。絶対に今のわたしの顔は、緩み切っているに違いない……。
「耳元でささやいただけですけど。こんなに瑠璃華お嬢様の顔が綻んでいらっしゃるなんて」
「お姉ちゃんは、まだまだですね~。ねぇ、瑠璃華お姉ちゃんはもしかして、ASMRとか聞くの好きじゃない?」
「はぇ? どうしてわかるの?」
「まぁ、反応を見て好きそうだな~って思っただけ。私もね、色々と勉強として聞いたりしているからね」
「ASMR……瑠璃華お嬢様が以前、好きだと言っていましたけど。私はあまり詳しくなくて……」
「やっぱりね、お姉ちゃんはそういうのに疎いから。よし! じゃあ、瑠璃華お姉ちゃんが帰った後に、私が詳しく教えてあげる。それにバイノーラルマイクもあるから、練習だって出来るからね」
「わかったわ。これも、瑠璃華お嬢様のためです。必ずや瑠璃華お嬢様にご満足していただけるようになります!」
遥先輩がやる気になっています。それにしても奏ちゃんもASMRを聞いているんだ。しかも、バイノーラルマイクまで持ってるなんて。すごく高いって聞くけど……。
「奏ちゃん、バイノーラルマイク持ってるんだね。あれって、高いって聞くけど良く買えたね」
「高価な物なんですか? その、ばいのーらるまいくと言うものは? 奏、どうやってそれを?」
「ああ、それはね。瑠璃華お姉ちゃん、私達のママがコンセプト喫茶を運営する会社の社長なのは、知っているよね?」
「うん。奏ちゃんの働いているお店もそうだよね」
「そう。ママは職業柄、流行っていることを調べてコンセプト喫茶に生かそうとしているんだって。それで今の流行りを調べていたらVtuberを知ったらしくて、興味を持ったママは色々なVtuberを見ていたらASMRのことを知ったみたいでさ」
「それで奏ちゃん。どうしてバイノーラルマイクを買うことになるの?」
「ん? それはママが面白そうだからって買ってきたんだよ。それで私に試しに使ってみてって渡されたんだよ」
「私はそんなこと聞いたこと……いや……聞いたことがあるような?」
「はぁ、一応お姉ちゃんがいる時にママが言ってたんだけどね。今の流行りはVtuberだから、企画中の会社のPRイベントに人気のVtuberにオファーしたいって話の中でこのことについても言ってたんだけど。お姉ちゃん憶えてる?」
「え、え~っと企画しているPRイベントの話は憶えているけど……」
「はぁ……お姉ちゃんは、もう少しそういうことに興味を持った方が良いと思うな~。瑠璃華お姉ちゃんが、好きなことってそういう物だと思うし」
「はい……」
遥先輩が心なしか落ち込んでいるような。人の好みは人それぞれだと思うから。あんまり気にしなくて良いと思うんだけど。
「無理に興味が無いことを知ろうとしなくても良いんじゃないですか? わたしは、無理に自分の好きなことを押し付けたりはしたくないですし……」
「いえ、奏の言う通りです。私はもう少し色々なことに興味を持つべきだと思います。先ずは、瑠璃華お嬢様の好きなことを知ろうと思います!」
「そうですか……無理はしないで下さいね」
「うんうん。その意気だよお姉ちゃん。じゃあ、先ずは瑠璃華お姉ちゃんのお耳を幸せにすることから始めようか」
その後も、遥先輩と奏ちゃんに耳を優しくマッサージされたりして、耳は幸せだけど……気持ち良すぎて理性を保つのに精一杯だよ……。奏ちゃんが的確にわたしのツボをついてくるし、遥先輩も奏ちゃんの教えたことをすでにものにしています。
や、やばいです……2人が同時にわたしの耳を攻めてくるんですよ。も、もうむりです……。
「る、瑠璃華お嬢様。大丈夫ですか?」
「は、はひ……だ、だいじょうぶれふ……」
「あらら、これは少しやり過ぎちゃったかも? でも、喜んでいるみたいで良かった~。私の指導のお陰だね」
「瑠璃華お嬢様、少しお休みしますか?」
「うん……やすむ……」
「それでは横になりましょうか。今、枕を用意します」
「待ってお姉ちゃん。こうすれば良いんじゃないかな?」
2人が何か話していますが、一体何をするんでしょう?
「わかったわ。とりあえず、やってみましょう」
そう言うと遥先輩は、ローテーブルを部屋の隅に移動させる。奏ちゃんはクッションに座りました。
一体なにが始まるんですか? ただ横になって休むだけじゃないの?
「それじゃあ、お姉ちゃん。私とくっついて。ほらほら」
遥先輩と奏ちゃんは、密着した状態で膝枕の体制を取り始めました。
「瑠璃華お姉ちゃん、私とお姉ちゃんの膝の間に頭を乗せて。ほらほら~」
「う、うん。わかったよ」
わたしは、奏ちゃんに言われるがままに密着している2人の膝の間に頭を乗せる。
こ、こんな膝枕、生まれて初めてです。なるほど、遥先輩と奏ちゃんでは体格差があるから、奏ちゃんだけクッションに座っているんですね。奏ちゃん側が少し低いけど、寝心地もそんなに悪くない。
わたしがそう思いながら目を開けると遥先輩と奏ちゃんが、わたしを優しい表情で見下ろしています……なんか、少し恥ずかしいよ……。
「どうですか? 寝心地が悪いなどはありませんか?」
「奏ちゃん側が少し低い感じがしますけど、悪くは無いですよ」
「あはは、急に思いついたからね。もし次にやる時は、もっと寝心地が良くなるように考えておくよ」
その後。わたしは、2人に優しく撫でられながら休んでいました。
「どうですか、瑠璃華お嬢様。休めましたか?」
「はい、もう大丈夫です」
「ふっ、ふっ、ふっ。喜んでくれたようで何よりです。あっ! 私、お手洗いに行って来るから2人でゆっくりしててね~」
そう言って奏ちゃんは部屋から出て行きました。
「ふぅ……瑠璃華お嬢様。どうですか? 私の家に来た感想は」
「そうですね。色々と驚くこともありましたけど、楽しいですよ。奏ちゃんとも仲良くなれる気がしますし。それに遥先輩の部屋を見れました」
「そうですか……それは良かったです。一時はどうなるかと思いましたが……。瑠璃華お嬢様、これからも奏共々よろしくお願いしますね」
「はい。わたしこそよろしくお願いします」
「ふふ、いい返事です。奏が戻って来たら、夕食に致しましょうか」
わたしと遥先輩は、奏ちゃんが戻って来るのを待っていたんですが、一向に戻って来る気配がありません。どうしたんだろう?
「奏ちゃん、戻って来るのが遅くないですか?」
「そうですね。どうしたんでしょうか? 見てきます」
「わたしも行きます」
わたしと遥先輩が部屋を出ると、何か美味しそうないい匂いがします。遥先輩に案内されてキッチンへ向かうと……。
「あっ! 来たね、2人とも。もう用意できてるから、座って座って」
遅いと思ったら、奏ちゃんはキッチンで料理をしていました。今日は、遥先輩が料理をする日だって聞いていたんだけど、どうして奏ちゃんが?
そう思いましたが、奏ちゃんに促されてわたしと遥先輩は席に座る。
「奏、今日は私が食事を作る日だと思うんだけど?」
「あっ! そうだったね、私が作る日だと勘違いしちゃったよ。あはは!」
「はぁ……明日は私が作るから」
「あはは! ごめんね~お姉ちゃん。食事が冷めちゃうし早く食べよ~。はい、それじゃあ、いただきま~す」
「それもそうね、瑠璃華さん。食べましょうか」
「はい。いただきます」
その後、遥先輩と奏ちゃんと他愛のない会話をしながら食事を楽しみました。
「どう、瑠璃華ちゃん。美味しかった?」
「うん、美味しかったよ」
「そっか。まぁ、お姉ちゃんが事前に用意していたものを調理しただけだからね。褒めるならお姉ちゃんに言うといいよ」
「やっぱり奏、勘違いしたのは嘘なのね」
「あはは! もう過ぎたことだよ。気にしない気にしない。わたしが片付けるから2人はゆっくりしてて」
奏ちゃんに言われるがまま遥先輩とゆっくりしていると、片づけを終えた奏ちゃんが戻って来ました。
「瑠璃華ちゃん、今日はどうだったかな?」
「うん、奏ちゃんには色々と驚かされたけど楽しかったよ」
「そっか……良かった。そういえば、もう良い時間だと思うけど、どうするの瑠璃華ちゃん?」
そう言われて、時計を見ると8時を過ぎている。
「あっ、そうだね。そろそろ帰らないと」
「そうですか、瑠璃華さん。今日は……」
「お姉ちゃん、瑠璃華ちゃんを家まで送っていきなよ。夜道を瑠璃華ちゃん1人で帰らせる気?」
「それもそうですね。瑠璃華さん私が家まで送っていきますよ」
「いや……でも、わたしを送ったら帰りは、遥先輩1人じゃないですか」
「だいじょ~ぶ。私がタクシー呼んでま~す。そろそろ来ると思うから準備してね~」
いつの間に奏ちゃんは、タクシーを呼んだの? 気が利き過ぎじゃない?
「いつの間に……まぁ、そういうことなので私のことは気にしないで下さい」
「は、はい。気を使わせてすいません」
「良いんですよ。それでは、私は着替えてきますので瑠璃華さんも準備してくださいね」
わたしは、帰る準備をして遥先輩が戻って来るのを待っていると奏ちゃんが話しかけてきた。
「瑠璃華ちゃん。今日はありがとね、私のお願いを聞いてくれて。私、瑠璃華ちゃんが受け入れてくれてとっても嬉しかった」
「いいんだよ。わたしも奏ちゃんのお願いを叶えてあげたいと思ったんだし。奏ちゃん、これからもよろしくね」
「うん! あっそうだ! 瑠璃華ちゃんの時間が空いている時に私の友達を紹介するね」
「わかったよ。どんな子達か楽しみ」
奏ちゃんとしばらく会話をしていると遥先輩が戻って来ました。
「お待たせしました。それでは行きましょうか瑠璃華さん」
遥先輩が先に玄関を出て、わたしも後に続いて出ようした時、奏ちゃんがわたしの耳元で小さく話しかけてきました。
「瑠璃華ちゃん、お姉ちゃんとこれからも仲良くしてあげてね」
「えっ?」
「お姉ちゃんは、少し抜けていたりダメダメなところもあるけど、私の自慢のお姉ちゃんだからね。お姉ちゃん、瑠璃華ちゃんと一緒にいる時、幸せそうだから。ずっと仲良くして欲しいなってこと」
「うん。わたしも遥先輩と一緒にいると楽しいし、そうしたいと思ってるよ」
「そっか、そっか。良かった~まぁ、まだ友達以上恋人未満ってところかな?」
最後に奏ちゃんが何か言っていたような気がするけど、声が小さくて聞き取れませんでした。
わたしが玄関を出ると、タイミング良くタクシーがやって来ました。
「いいタイミングですね。さぁ、乗りましょう」
遥先輩に促されタクシーに乗り込む。行き先を伝えて、しばらく遥先輩と会話を楽しんでいるともう家についてしまいました。
わたしは、タクシーを降りて遥先輩と窓越しに少しだけ会話をする。
「遥先輩、今日はありがとうございました」
「いえいえ、お礼を言うのは私の方ですよ。奏を受け入れてくれたことも含めて。これから先、私と奏が瑠璃華さんに迷惑をかけてしまうかもしれませんけど、改めてよろしくお願いしますね」
「はい! よろしくお願いします」
家に戻ったわたしは、ベッドに横になり今日の出来事を思い返す。
今日は、驚くことや楽しいことが沢山あったし、友達も出来た。まだ、お姉ちゃん(仮)については実感はわかないけど。いずれ慣れるんじゃないかな。
それにしても、遥先輩と奏ちゃんに挟まれて耳をいじられたりした時は、ヤバかったです……流石姉妹と思うほどに息が合っていました。辛うじて理性を保てていましたけど、あれ以上されていたらどうなっていたことか……。
わたしは、2人にされたことを思い出し顔が熱くなり、枕に顔を埋めながら身悶えした。




