40話 遥先輩の部屋にて……
「ここが、遥先輩のお部屋ですか……」
「はい。あまり面白味のない部屋ですが。ゆっくりして下さいね」
部屋の中を見渡すと。とても綺麗に整頓されたシンプルな部屋です。でも、何でメイド服があんな目立つ場所に掛けてあるんでしょうか? それ以外にも……。
「あっ! あれって、前に遥先輩とゲームセンターに行った時に取ったぬいぐるみですよね。ちゃんと飾ってくれてるんですね」
「ええ。瑠璃華さんに取って貰った物ですから」
以前、ゲームセンターで取った景品のペンギンのぬいぐるみが、ベッドの近くに飾ってありました。
「さぁ、瑠璃華さん。どうぞ座って下さい」
遥先輩は、ベッドの上に座り。手でポンポンとベッドを叩きながら、わたしに座るように促して来る。
「それじゃあ、失礼しますね」
わたしが、遥先輩の隣に座ると遥先輩は……。
「まず最初に、瑠璃華さん。妹の奏が、その……瑠璃華さんのことを色々と振り回したみたいでごめんなさい。そして、気遣ってくれてありがとうございます」
「いえ、わたしがそうしたいと思ったんです。ふふ」
「えっ、瑠璃華さん。どうして笑っているんですか?」
「奏ちゃんを見て姉妹なんだなぁ~って、思ったんです」
「そ、そうでしょうか? 奏と私って、似てるでしょうか?」
「顔とか雰囲気とかが少し似ていると思いますけど、そうでは無くて。わたしが似ていると思ったのは、誰かを甘やかしてあげたいという、強い思いとそれを叶えるための行動力とかですかね」
「そうなんですか……。まぁ、確かに私と奏の願いは似ていますし、姉妹ですからね。似ていない方が不自然なのかも? 知れないですね」
遥先輩は少し考えながら、そう言いました。
「ところで、奏ちゃんが言っていた。遥先輩とわたしが学園で、あまり人目を気にせずに会えるようにすることですが。奏ちゃんと友達になれば解決するんでしょうか?」
「恐らく大丈夫だと思いますよ。奏は私よりも頭が回りますし、人間関係についても奏の方が私よりも上手く人と付き合っていますから。そのはずなんですけど……どうして、学園であんなに大人しい静かな子を演じているのかは、私にもわかりませんけど。奏には奏の考えがあってのことだと思います。奏は、無意味なことをしない筈ですから」
「そうなんですか。じゃあ、この件については奏ちゃんに任せた方が良いみたいですね」
「そうですね。恐らく、私や瑠璃華さんに出来る事は限られますから。奏の指示などがあった時に、行動すればいいと思いますよ」
「わかりました。ところで遥先輩。どうして、あんな目立つ所にメイド服が?」
わたしは、まるで絵画のように、目立つ場所に飾られたメイド服を指さし質問する。
「ああ、あれですか。今まで、時々着るぐらいっで。誰かのために着ることもなかったメイド服ですけど。瑠璃華さんのお陰で、ようやく私がやりたかったことに使うことが出来たので、嬉しくてこうやって飾っています。もちろん、直ぐに着ることが出来るようにしていますよ。あっ、そうです。折角、瑠璃華さんが私の家に来たことですし、着ましょうか?」
「嬉しいですけど。時間もあまり無いですから、大丈夫ですよ」
「確かにそうですね。ごめんなさい。瑠璃華さんが私の部屋にいると思ったら、浮かれてしまって」
「いえ。わたしだって、遥先輩のお部屋に来れて嬉しいです。今日はゆっくりとしませんか?」
「それでは、いつも通り膝枕でも」
遥先輩は、ポンポンと膝を叩く。
「それじゃあ……よいしょ」
よく遥先輩に膝枕をして貰っていますけど。遥先輩の部屋では、新鮮な気分です。
「瑠璃華さん。どうですか?」
「はい~。遥先輩の部屋で膝枕して貰えるなんて、すごく嬉しいです~」
「ふふ、瑠璃華さんを私の家にいつか招待したいと思っていましたけど。このような形で瑠璃華さんが家に来ることになるとは思っていませんでした」
遥先輩はそう言うと、わたしの頭をやさしく撫でる。
しばらく、遥先輩に膝枕をして貰いながら、頭などを撫でられたりしていると。
「瑠璃華さん。折角ですから、夕食を食べていきませんか? 今日は、私が食事を作る日ですので」
「それは嬉しいですけど。良いんですか? 遥先輩のご両親が帰ってきたりとかは」
「大丈夫ですよ。父も仕事で遅く帰ってくるでしょうし。母は最近、会社のPRイベントを企画をしていて。多分、父と同じで帰って来るのが遅くなるでしょう。そのせいで最近は、奏と2人で食事をしていましたから。瑠璃華さんを含めて3人なら、賑やかですし、奏も喜ぶでしょう。もちろん私も瑠璃華さんと楽しく食事がしたいです」
「わかりました。お言葉に甘えてご馳走になります。それで今日は、何を作る予定なんですか?」
「今日はですね。ミートソースパスタです。昨日の内にミートソースは用意していましたから。後は、パスタを茹でたりするだけですから、あまり時間は掛かりませんよ。まだ、夕食には少し早いですから。もう少しだけ、ゆっくりしましょう」
そんな時に、遥先輩の部屋の扉をノックして奏ちゃんが部屋へと入って来ました。
「ひゅ~。お二人さん、本当に仲が良いんだ。羨ましいぜ~ってね」
「奏、からかわないで。それと、ノックして直ぐに開けるのはどうかと思います」
「まぁまぁお姉ちゃん、そう固いこと言わないでよ。それと、ふっ、ふっ、ふっ、瑠璃華ちゃん。そんなに幸せそうな顔して、お姉ちゃんの膝がそんなに気にいった? 私の膝も気に入ってくれたら嬉しいな~」
わたしは、ハッと我に返り起き上がる。
「ふっ、ふっ、ふっ、瑠璃華ちゃん。顔が赤くなってて、可愛い。ごめんね、お楽しみのところを邪魔しちゃって」
油断していました。あぁ……奏ちゃんにとはいえ。見られてしまうなんて……は、恥ずかしい……。
わたしが、恥ずかしさで顔を押さえていると。
「瑠璃華さんをからかわないで下さい。恥ずかしがっているじゃないですか。そういえば奏。後でお菓子と飲み物を持って来ると言っていたのに、見当たらないのですがどうしたんですか?」
「あ、それはね。用意しようと思ったんだけど。夕食もあるから、いらないかな~って思ってね。代わりに提案したいことがあって」
提案したいこと? 一体何なんでしょうか?
「何ですか? 奏が提案したいことと言うのは?」
「それは……お姉ちゃんは私が瑠璃華ちゃんを甘やかすことを許してくれたけど。それでも心配でしょ。だから、最初はね。お姉ちゃんと私とで瑠璃華ちゃんを甘やかそうかと思って。瑠璃華ちゃんもその方が緊張とかしなくて良いと思うんだ」
確かにその方が良いと思うけど。今その事を提案するってことは。
「あの~奏ちゃん。今、その提案をするってことは……今から?」
「そうだよ。今しかないでしょ。ちょうど良いと思うよ。どう? お姉ちゃん?」
「奏がそう言うってことは。最初から、そのつもりでしたね。瑠璃華さん、夕食が少し遅れると思いますがどうですか?」
まさか、遥先輩と奏ちゃんに同時に甘やかされることになるなんて、思ってもいませんでしたよ。わたしに断る理由は無いです。約束ですからね。
一体、奏ちゃんはどんな風に甘やかして来るんでしょうか?




