10話 瑠璃華のアルバイト先と遥先輩とのお話
遥先輩と知り合ってから2日後、遥先輩から連絡があり、わたしは今、生徒会室の扉の前にいます。わたしは、生徒会室の扉をノックしてから入室する。
「失礼します」
「いらっしゃい、瑠璃華さん。そこのソファーに座って下さい。今、お茶とお菓子を用意します」
「遥先輩。わたしは、バイトについて話を聞きに来ただけなので、そこまでしてくれなくても……」
「いいんですよ。私が、そうしたいだけですので」
しばらく待っていると、遥先輩が紅茶とクッキーを持って来た。
「瑠璃華さん。どうぞ、飲みながら話しましょう」
「ありがとうございます。遥先輩」
出された紅茶とクッキーを、楽しんでいると、向かいのソファーに腰を掛けた遥先輩が話しかける。
「瑠璃華さん。そのクッキーのお味はいかがですか?」
「はい! とっても美味しいです。このクッキーは、遥先輩が作ったんですか?」
「いいえ。これはあるお店で売られている物です」
「あるお店……ですか?」
何となく、遥先輩の意図がわかった気がする。
「そのお店こそが、私が瑠璃華さんに紹介するバイト先です」
「お菓子屋さんですか?」
「そうですね。メインはケーキなんですが、クッキーやスコーンなども作っているお店です。瑠璃華さんは『pâtisserie AMAI』というお店をご存じですか?」
『pâtisserie AMAI』って、たしか、繁華街から少し逸れた通りでも、人通りが多い場所にある。美味しいと評判のお店だよね。
「はい、知ってます。美味しいって評判のお店ですよね」
「ええ、そこが瑠璃華さんにバイト先として紹介できるお店です。私の知り合いが、そのお店の経営者の娘さんと仲が良いらしくて、紹介してくれました」
「へ~、そうなんですね。ケーキ屋さんか~」
美味しいって評判のお店だし、忙しそうだけど、色々な種類のケーキやお菓子を見ながらお仕事するのもいいかもしれないな~。でも、ケーキやお菓子の名前を覚えるのは大変かも……。
「どうですか、瑠璃華さん。そのお店で働いてみませんか?」
「はい! 色々と覚えることが多そうで心配ですが、働いてみたいです!」
「わかりました。では、そう伝えておきますね。少し待っていていただけますか。私の知り合いに連絡しますので」
そう言うと、遥先輩は知り合いの人に連絡を取り始める。しばらく待っていると、遥先輩が連絡を終えて話かけてくる。
「知り合いに話を通して貰いました。お店の連絡先を教えますので明日、お店に連絡してください。私の紹介だと言えば、大丈夫です。面接の日程や履歴書など、必要な物を確認してください」
遥先輩にお店の連絡先を教えて貰いました。いや~、わたしのために、ここまでしてくれるなんて、本当に遥先輩は優しい人です。生徒会長という立場上、誤解されやすいんだと思います。
「遥先輩、ありがとうございます。何かお礼が出来ればいいんですが……」
「ふふ、瑠璃華さん。お礼なんていいですよ。荷物を運んでくれたお礼で、バイト先を見つける約束でしたから、気にしないでください」
「そ、そうですか……あっ! そうだ! 前にも言ったんですけど、人手が必要な時は、協力しますんで、何時でも連絡してくださいね」
「ふふ、瑠璃華さんは律儀な人ですね。では、瑠璃華さんの力が必要な時は、連絡します。じゃあ、この話はもう終わりにして、紅茶とクッキーを食べながら、他の話でもしましょうか」
そういうと、遥先輩は紅茶を口にした。わたしは、気になっていたことを質問することにした。
「そういえば、遥先輩には妹さんがいると聞きました。どんな子なんですか?」
「い、妹ですか……そうですね……大人しくて本を読むのが……好きな子ですかね。なぜ、瑠璃華さんは妹のことを?」
「実は、新しく出来た友達に聞きまして、どんな子なのかな~って気になったので」
「そうですか……」
わたしが、遥先輩の妹さんについての話題を出してから、遥先輩の様子が少し変です。別に妹さんとの仲が悪い感じはしないんですけど、言葉を選んでいるような気がします。なにか、別の話題に変えた方いいかもしれませんね。
「遥先輩は、春町グループの社長令嬢って聞いたんですけど、遥先輩のお母さんが運営している、コンセプト喫茶についてどう思いますか?」
わたしが、その質問すると遥先輩は、今まで以上に様子がおかしくなってしまいました。この空気どうするんですか!
「えっと……母の運営しているお店のことですよね……そうですね……コンセプト喫茶は、父や母の趣味ですし。小さい時から色々と話は聞いてましたから、偏見なんてありません。瑠璃華さんは、なぜ、そのことを知っているんですか?」
「実は、わたしが通っているメイド喫茶がありまして、そのお店のメイドさんとお話するのが楽しみで、その時に色々と聞いたんです」
「へ、へ~そうなんですね。ふふ……」
遥先輩の様子が、少し良くなった気がする。わたしが、遥先輩のお母さんが運営しているお店のお客さんだからでしょうか?
「瑠璃華さんが通っているというお店は、知っています。母がかなり拘っていると話していましたから。そ、それで、瑠璃華さんがよくお話しするメイドさんというのは、どのような方なんですか?」
「そのメイドさんは、わたしが通っていたメイド喫茶が潰れてショックだったことを話すと頭を撫でて慰めてくれたり、引っ越ししたことを話した時には、肩もみや肩たたきをしてくれました。最近、お店に行った時は、乱れたわたしの髪を綺麗に整えてくれたんです。急にやられた時は、驚きましたけど、わたしとっても嬉しかったんですよ。実は、わたしですね……昔からメイドさんにご奉仕されたり甘やかされたいと思ってまして、そのメイドさんのお陰で、願いが少し叶って嬉しかったんですよ。あはは、わたし何で遥先輩にこんな話したんだろう……わたしって、変ですよね~」
本当に何で遥先輩に、こんな話をしたんだろう? 遥先輩ってなんだかハルみたいで、すごく話しやすいんだよね。
「いいえ、瑠璃華さん。あなたは、変じゃないですよ。私にだって、人には言えない願いがありますからね」
遥先輩は、わたしにそう言ってくれました。本当に遥先輩はいい人です。この人ともっと仲良くなりたいです。
「遥先輩の人に言えない願いってなんですか?」
「人に言えない願いなんですから、言えるはずがありません」
「ええ~、わたしは話の流れで言っちゃいましたけど、ズルいですよ~」
「ふふ。じゃあ、私と瑠璃華さんがもっと仲良くなったら、お教えしてもいいかもしれませんね。おや、もうこんな時間ですか。瑠璃華さん、もう帰った方がいい時間になりましたね。名残惜しいですが、帰りましょうか」
「はい。遥先輩、今日は本当にありがとうございました」
わたしは生徒会室を出て家へと帰りました。
次の日、遥先輩に言われた通り、紹介されたお店に連絡して面接の日程などを確認しました。折角、遥先輩が紹介してくれたんですから、採用されるために頑張らないといけませんね。




