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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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53 アインホルン公女の前世 そのよん

 オティーリエが、今の自分と前世の自分の間で揺れ動くのは、前世で生きていた記憶がはっきりしてるからだと思う。

 オティーリエもそのことは自覚してるんじゃないかな?

「アルベルト様。『彼女』の話を聞いていただけますか?」

 きっと自分の中でも整理したいことがあるんだろうな。誰かに話すことで、考えがまとまるときだってあるもんね。

「うん、いいよ。話してごらん」

 僕に促されたオティーリエは、安堵した顔をして話し始めた。


「名前は……、今まで通り『彼女』にさせてください。どうしても『彼女』の名前はこの世界で言いたくないんです」

「そうだね。『彼女』はあの世界で亡くなっている。いくらオティーリエが生まれ変わりであっても、君は彼女じゃない。ならその名前は言わないままの方が良いね」

「ありがとうございます。『彼女』は両親と兄との四人家族。祖父母は居ましたが一緒に暮らしてはいませんでした」

 典型的な核家族生活だったのか。

「……たぶん、平均よりはいい暮らしをしていたと思います。欲しいものは何でも買い与えられていましたし、習い事なんかも、やってみたいと言えば反対されることなく、習わせてくれました」

「恵まれていたんだね」

「そうですね。金銭面では」

 含みのある言い方だなぁ。

「精神的には恵まれてなかった?」

 僕の問いかけに、オティーリエは苦笑いを浮かべる。


「虐待があったわけではないのですよ。あからさまな差別もありませんでした。家族行事に置いてきぼりにされたことも、学校の行事をすっぽかされるというようなこともなかったのです。ただ両親の関心は、常に優秀な兄に向けられていて、平均的な『彼女』は……、どういったらいいのでしょうね。あぁ、そう。見せびらかすためのペット、のようでした」

 なんとも言い難い。でも見せびらかすだけのペットって……、それは充分に、差別になるんじゃないか?

 アンジェリカもそうだったんだけど、家族に虐待や差別をされてる人って、感覚がバグってると思う。

「以前もお話ししたと思いますが、『彼女』の外見は平均よりもちょっといいぐらいです。絶世の美少女というわけではありませんでした。でもちょっと可愛い程度でも、美容にお金を掛ければ標準よりも上に見えますよね。そこに家の……、昔ながらの著名な〇〇家という付加価値が付けば、なおのことです。『彼女』は幼い頃に有名ブランドのキッズモデルをしていたのです。親の知り合いのブランド会社の専属モデル。でもそれも小学校の低学年まで。知り合いの社長さんに頼まれたから、モデルをさせていただけで、娘を芸能なんて低俗な職に就かせるなんて言語道断。メディアに出て人に娯楽を与えるのは下々のすること。そういう家でした」

 血統書付きのペットをプロのトリマーさんに磨いてもらって、有名なペットショーに出して賞を獲って、周囲にはショーで受賞した素晴らしいペットなんですよと自慢する飼い主。

 それが『彼女』の親だったと、オティーリエは言ってるのだ。

「彼らにとって、『彼女』は見せびらかすのにちょうどいいペットで、自分たちの子供は、優秀な兄の方だったんです」

 そこまではっきり言うってことは、そう思わせるような何かがあったんだろうな。


「さっきも言いましたが、兄妹差別や虐待があったわけではないんですよ」

 僕の顔を見て、疑われていると思ったのだろう。

 オティーリエは、再度差別や虐待はないと言い募る。

「でも、兄に比べれば、『彼女』の扱いは粗雑だったんだよね?」

「粗雑……というより、ひたすら関心がなかったのです。学校の成績でいい点を取っても悪い点を取っても何も言われず、学校でいじめがあったことも、友人がいないことも知らない。そんな親でした。だから、あんな……気持ち悪い相手が傍にいても、全く危機感を持ってくれなかった。むしろ『彼女』の世話を任せればいいと思っていたんです」

 気持ち悪い相手って、ジュスティスの前世のことかな?

「あの方の前世は『彼女』の幼馴染みと言いましたが、厳密に言うと家が隣同士というのではありません。両親の繋がりです。どういった繋がりなのかは詳しくは聞いていませんでしたが、友人であったか、もしくは仕事関係だったとおもいます」

 親同士に交流があったってことなんだろうな。

「引き合わされたのは、小学校に上がる前の話です。幼馴染……『彼』の親も一緒で、同じ歳だから仲良くしてやってくれと紹介され、両親からも仲良くしてあげなさいと言われました」

 ジュスティスの名前も、前世の幼馴染みの名前も、オティーリエは口にしたくないようだ。

 『彼女』の名前を明かさないのとは違う。

 心の底からの嫌悪からくるものだろう。その汚らわしい名を口にしたくないという確固たる意志を感じる。

「そこからですね。『彼』が『彼女』の傍に張り付くようになったのは。さっきも言いましたが『彼女』は親の繋がりで、ブランド会社のモデルをしていました。その送り迎えや付き人を同じ歳の『彼』にさせたのです」

「それって、おかしいよね?」

 いくら、専属の運転手付きの車で送り迎えだったとしても、付き人? 保護者枠? とにかく、それは大人にさせるべきでしょうよ。

 だって芸能関係とまでいかなくても、メディア系の仕事なんだから、周囲にいるのは大人だらけだし、それに……ちゃんとした大人が傍にいなければ、変なことを持ち掛けられることだってある。

 その辺りどうなってたんだ?



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