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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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45 聖女の素性 そのいち

 ジュスティスのグダグダした転寮がようやく落ち着いて、僕の気がかりというか、情報収集したいことが一つのこっていた。

 ジュスティスがイジーとバチバチしてた時に、エウラリア様のお言葉の確認ですよ。

 確認というか、疑問というか、無視できない話を聞いちゃったからね。


 オティーリエも関係してることだけど、いまだメンタル回復していないオティーリエを引っ張り出すのもどうかと思ったので、改めて、僕だけでエウラリア様の話を聞くことにした。

 と言ってもネーベルも一緒だし、エウラリア様は側近の女生徒と、護衛の男子生徒も一緒なんだけどね。

 本当はね、誤解をされないように、ヒルトも同席してもらいたいなぁーっと思ったんだけど、ヒルトはイヴの傍から離れない様子だったから、声をかけなかった。

 何も言わないと不安にさせるから、あとでネーベルから伝えてもらおうと思う。

 そんなわけで、放課後、いつものようにいつものごとく、空き教室をリザーブして、またもや、エウラリア様とお話しすることにしたのだ。


「先日、ジュスティスの一件でお話しになった、ラーヴェ王国のギーア男爵令嬢のことなのですが」

 僕の言葉に、エウラリア様の表情が僅かに曇った。

「ああ、彼女……。ここではオクタヴィア・ギーアと名乗っているのですね。あの時はトーア学長との話し合いもありましたし、あまり詳しく話せませんでしたが……」

 エウラリア様は、何かを思い出すかのように目を伏せた。

「彼女は、カプラ大公家で雇われていたのです。アルベルト様もカプラ大公家の実情はご存じのことでしょう。大公家にかかる費用はリトス王国の国庫から賄っています。大公家で働いているほとんどの使用人は、王宮から派遣しているのです」

 だろうな。

 人の手配もできないんでしょう? あの大公夫妻は。


「リトス王家も潤沢な資金があるわけではありません。ですので、屋敷の重要な家政に携わる仕事や、大公夫妻やアレの身の回りの世話をする者たちは王宮から、それ以外の細々とした雑用は、市井からの雇い入れをしています。その雇い入れの中に、支援の一環として孤児院からの受け入れもしているのです」

「と言っても、孤児院にいる孤児に働かせるわけではないのでしょう?」

 教育の面は国によって違うから、ラーヴェ王国(うち)と一緒にはできないだろうけれど、ある程度の常識を身に付けているか、貴族に仕えることに適している性格か、それを調べてからなんだろう。

 それから、年齢。

 さすがに学園に通うに満たない年齢の子供を、使用人だとしても大公家に置くことはできないよね。

「もちろんです。孤児院を出る年齢に達した子供に、ある程度の面談や試験を受けてもらってからになります」

 貴族の家で下働きができそうな子供をあらかじめ見繕って、それとなく基礎的なことを教えつつ、孤児院を出る年齢に達したら、試験を受けさせて雇用させたのか。

 雑務を担う下働きは、当主家族の前に姿を出さないのが基本だから、見えない場所で働かせるなら孤児でも構わないんだろう。

 だけど何か引っかかるなぁ。

 黙り込んでしまった僕に、エウラリア様はこちらを伺うように、視線を向けてくる。

「何か、おかしいところでもありますか?」

「うん……。孤児だったんだよね?」

 名前を出してないけれど、オクタヴィア・ギーア男爵令嬢のことだ。

「はい」

「孤児が王族の血を引く人間の傍に配置されるって、ありえないと思ってね」


 差別的な発想じゃないんだよ。

 王侯貴族の社会では、これが当たり前なんだ。

 もちろん中には平民と近しい貴族だっているよ? フルフトバール(うち)だってそうだもの。

 でも基本的に伯爵以上の爵位を持っている貴族、特に王族の傍に平民を置くってことはよっぽどのことじゃなければあり得ない。


「言われてみれば……」

 僕の疑問にエウラリア様も今更ながらに違和感を持ったようだ。

「いつ頃からいたんだろう?」

「そうですね、リトスの孤児院では孤児は十二歳で外に出されますので」

 そこは国によって違うんだよね。

 ラーヴェ王国は十五歳だ。

「おそらくは十二歳より後でしょう。王族に連なる家に使用人として入るのですから、準備もありますし」

 いくら登用の試験を受けさせて合格したといっても、それですぐに採用ってわけにはいかないか。

「アレが……」

 ポツリとエウラリア様が言葉を零す。

「アレがわたくしと第四王女殿下とともに、王宮での教育を受けることになった時には、すでに侍女としてアレの傍にいました」

「侍女? メイドではなく?」

「はい、侍女として、傍にいました」

「ちょっと待って、それっておかしいですよ」


 侍女っていうのはね、貴族のお嬢さんじゃなければなれないもんなんだよ。

「どこかに養子に入ってたとか、そういうことですか?」

「いえ……。申し訳ありません。使用人に関しては、あまり気を止めてなく。私が彼女を気にかけるようになったのは、アレが周囲の令嬢を巻き込んで、第四王女殿下を貶めるようなことを仕出かしてからです」

 それまではジュスティスのお付きの侍女と言われて、どこかの貴族の令嬢なのだろうと、エウラリア様は思っていたようだ。

 その後、ジュスティスに恋慕する令嬢たちが、第四王女殿下をやっかみ、突っかかるようになってきた。

 もちろんそんな風に誘導していたのはジュスティスではあるが、そこに手を貸していたのがジュスティスの侍女であったという事である。

 そこでエウラリア様は、改めて侍女の素性を探り、それが王宮から懇意にしている貴族に声掛け派遣された人材ではなく、市井の……孤児院からの登用であることを知ったそうだ。




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