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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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35 いいところ全部持っていかれて可哀想

 アンジェリカに連れられて、急いでイジーたちのもとに駆け付けたら、そこは人だかりになっていた。

 まぁね、ほら、イジーは王子だから、いるだけで注目される。

 そして公女に図々しくイチャモンつけてくる男爵令嬢のことは、もうすでに有名になっている。

 まるで娯楽のように、また始まったと見世物になっているのだ。

「通してくれる?」

 壁になってる生徒に声をかけると、僕に気づいた生徒が顔色を変えてさっとその場を開ける。

 中心にいたのはイジーとオティーリエ、ヘレーネとそれからギーア男爵令嬢にソーニョだ。

 イジーはオティーリエとヘレーネを庇うように、ソーニョの前に立ちまっすぐ見つめている。

「邪魔しないでくれるかな?」

「邪魔? なにが?」

「なにがって、オティーリエ嬢を救護室に連れて行くのをさ」

「……俺が連れて行く。アインホルン公女はお前を見て悲鳴を上げてこんな風になった。どう見てもお前に対して怯えてる。原因はお前だ。立ち去れ」

「っ! そんなのっ」

「そんなのじゃない。原因のお前がいるから怯えてる。俺の言葉が通じないのか?」

 イジーは真っ直ぐソーニョを見つめ、淡々とした口調で言い放つ。

 お、王妃様そっくりの威圧感~!! 僕の弟カッコイイ! じゃないよ。

 イジーが言うようにオティーリエはガタガタと震えてその場にしゃがみこんでおり、ヘレーネがそのオティーリエを支えながら何事か声をかけていた。


「オティーリエ様、お気を確かに」

「い、いや。ど、どうして。なんで。なんで、いるの?」

「オティーリエ様……」

 頭を抱えてガタガタ震えているオティーリエは、ヘレーネの声を聞くどころか、周りのことが見えていない、自分の中に籠ってしまっているように見える。

 トラウマ? PTSDっぽい反応だな。


「あらあらあら、まぁまぁまぁ」


 僕の横をヘッダが通り、オティーリエの前に立った。そして、両手でオティーリエの顔をつかんで上を向かせる。

「なんて醜い泣き顔なんでしょう。ラーヴェ王国一の美姫と謳われている方とは思えない、情けなくてみっともないお顔でしてよ?」

 ヘッダちゃーん!! PTSD発症させてる相手になに言ってるのー?!

 だけど僕の心配とは逆に、オティーリエはヘッダの声を聴いて、虚ろだった瞳に光を宿す。

「あ……」

「アインホルン公女ともあろう者が、人前で、たやすく、弱々しいお姿をお見せになるの?」

「ヘ、ド、ヴィック、さ……ま」

「これが令嬢の見本とまで言われた姫君なんて、とても思えませんわねぇ?」

「ヘドヴィック様……」

「えぇ、貴女の友人で教育係でライバルでもある、ヘドヴィック・シューネ・ハント゠エアフォルクでしてよ?」

 いつものように人を食ったような物言いでありながら、言い聞かせているような感じなんだけど、んー、これは苛立っているようにも聞こえる。

 いや、どうなのかな?

 自分以外の人間の手によって、あっけなく令嬢の仮面をとったオティーリエに対しての苛立ちも入ってるんだろうけれど、それ以外にも怒ってるみたいだなぁ。

「ねぇ、オリー様? 貴女は他の誰でもなく、このわたくしに、こんな情けないお姿を見せて、恥ずかしくはありませんこと? 悔しくはありませんこと?」

「だ、だって……。だって、あ、あ、あの、あの男がっ、いるのよっ。わ、わたし、あいつに……っ」

「オリー様」

 また不安定になりそうなオティーリエの顔をぐっと持ち上げる。

「誰のお話をしていらっしゃるの?」

「だ、れ……」

「貴女のお名前は?」

「わ、わたし……」

「違いますでしょう? 公女たる者そのような安っぽい言葉で、ご自分を表現なさらないでくださいませ。淑女なら、ご自分のことは『わたくし』ですわ。さぁ、ご自分のお名前を仰って?」

「オ、オティー……リエ……、ゼルマ・アインホルン」

「そう、貴女はオティーリエ・ゼルマ・アインホルン公女。ラーヴェ王国アインホルン公爵家のご令嬢ですわ。それ以外の何者でもありませんでしょう?」

 ヘッダの言葉にオティーリエが息を呑み、そして一度唇を引き締めた後、また口を開いた。

「申しわけありません。みっともない姿をお見せました」

「本当ですわねぇ」

 そう言ってヘッダはオティーリエの顔から両手を離す。

「このような情けないお姿を二度とわたくしにお見せしないでいただきたいわぁ」

 野次馬の生徒だけじゃなく、イジーもエウラリア様もみんながヘッダとオティーリエのやり取りに注目している中、一人だけそこから立ち去ろうとしている奴がいた。


「こらこら、逃げるんじゃないよ」

 ソーニョの腕を掴んで、逃走を阻止する。

 ヘッダに美味しいところ盗られて、勝ち目がないと思ったのかな?

 引き際の良さは称賛するけれど、この絶好の機会を逃すほど僕は甘くないからね。

「初めましてだねぇ? ジュスティス・レオナルド・ソーニョ・カプラ大公令息」

 みんなの視線が、オティーリエとヘッダに集中しているのをいいことに、その隙を狙って逃げようとしたソーニョの腕をつかむ。

「ちょうどよかった。君に用があったんだよ。このまま一緒に学長室に行こうね?」

 ぜってー逃がしてやらねー!!

 おめーのせいでヤキモキさせられてるんだからな!

「リューゲン様ぁ!」

 まだいたのかぁ。

 正直お呼びじゃないんだけどなぁ。

「あら? 貴女もジュスティスと一緒に留学していらしたの? 相変わらず仲がよろしいこと」

 エウラリア様の発言に、甘ったるい声で呼びかけてきたギーア男爵令嬢が、ヤベッ!って感じで顔を引きつらせる。

「よ、用事思い出しちゃったぁ~!」

 誰も聞いてないことを叫んで逃げ出していった。

「エウラリア様。今の話、後で詳しく聞いてもいいですか?」

「今の話?」

「あの逃げた人のことです」

 貴女も一緒にって……。仲がいいって……!

 それって、ソーニョとギーア男爵令嬢は繋がってたってことだよね?

 僕の立場としては面白くないけれど、面白くなってきたぞぉ!!



次回更新は7/15


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