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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(四年生)

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21 狂気のような憎悪

 ソーニョへの監視が甘かったわけではないだろうし、リトス王家の怠慢とも言い難い。

 ソーニョを嫌厭している相手でも『絆される』というのだから、ソーニョの魅了は相当厄介なもので、対処できる人間が限られてしまうのだ。

 ソーニョは王宮に一時的に拘束されていた時、厚顔無恥にも、第四王女殿下と二人きりで謝罪がしたいなどと言い出したそうだ。

 第三王女殿下は、遠回しな悪意で第四王女殿下を追い詰めたソーニョを許すつもりはなく、二度と第四王女殿下に近づかせるつもりはなかった。


 信用度ゼロのお前を第四王女殿下に近づかせるバカがどこにいる。

 謝罪するのに二人っきりになる必要などなかろう? 他の人がいる前でできない謝罪があるのか? そもそもお前は自分が悪いと思っていないんだろう? なら謝罪しなくても結構だ。あんま舐めんな。と言って追い払った。

 だけど、殊勝な態度のソーニョに絆される者たちが、謝罪ぐらいさせてあげればと言ってきたらしい。

 そこで第三王女殿下は、二人っきりには絶対させない。自分が同席するのなら謝罪はさせてやると上から目線で言い放ったそうだ。

 自分が優れていると自惚れているソーニョからすれば、そんな態度をされてまで謝罪したいなんて言い出さないだろうと第三王女殿下は踏んだのだ。

 案の定、ソーニョが言っていた謝罪というのは振りであって、そのように言っていれば周囲からは『何か誤解があったのでは?』と肩を持ってくれるという計算だったらしい。

 第三王女殿下の推測通り、ソーニョはまたしても謝罪を受け入れてくれない王族に非があると、遠回しに持っていこうとしたのだが、善意の親切な者が『第三王女殿下がご一緒なら謝罪を受けてもらえるんですからよかったですね?』と、後ろから撃ってきたそうだ。

 もう完全に墓穴掘りである。

 結局ソーニョは、第三王女殿下同席の謝罪をしたらしい。


「あれは謝罪ではありません。自業自得であるにもかかわらず、自分がこんな目に遭ったのは第四王女殿下のせいだとやつあたりをしたのです」


 こんなことになってとても残念だ。

 良かれと思ってやっていたことをこんな風に悪く取られるとは思わなかった。

 貴女も他の人と同じく、あの親の子供だからと、自分を馬鹿にしていたのか。

 貴女はそんなことはしないと信用していたのに、なんてひどい人なんだ。


 そのソーニョの言葉を聞いて、第四王女殿下は完全に心が壊れた。

 なまじソーニョに対しての恋心があって、長い間そのソーニョに悪感情を吹き込まれていていた第四王女殿下は、精神的に不安定な状態だった。

 精神不安定なところに好きな人からそんなことを言われてしまった第四王女殿下は、不思議の国の住人になってしまったそうだ。


「アレは自分が優しくすれば、女性はみんな自分に靡くと自惚れています。リトス王国でそういったことがあったから、このラーヴェ王国でもそれが通用すると思っているのです」

「第三王女殿下には効かなかったようですが、それでもそんな自惚れをするんですか?」

「します」

 いやにはっきりと言い切るな。

 まぁ、おそらくリトス王国では第四王女殿下だけではなく、他の令嬢も食い物にされていたのだろう。第三王女殿下なら、その辺のところもちゃんと調べ尽くしたんだろうな。

 だけどなー。

「そのような理由なら、なおのこと連れ帰れと言いたいですね」

 王子としての立場なら、ラーヴェ王国に変なもん入れるんじゃねー。んな面倒な人物はさっさと引き取れってことだよ。

 でもなー、逃げ出すって言うわけだし、無理なんだろうね。

「一つ、お聞きしたいのですが」

「何でしょうか?」

「息をさせておく必要あるんですか?」

 誰がとか、息をさせておくってどういう意味とか、訊かないでほしいんだけど、わかるかな。

 もうそこまで面倒で厄介な相手なら、さっさと最果ての門を潜ってもらった方が良いじゃん。

 そもそもソーニョが産まれてこないように手を打たなかったこと自体が悪いんだし、そのあとの管理もできないなら、責任を取るのも上の仕事でしょうが。

 不幸な事故はそこかしこに転がってるわけだし、それにソーニョが遭遇しないってわけでもないでしょう? むしろ遭遇しない方がおかしいじゃないの。

 僕の問いかけに、第三王女殿下は一瞬だけ表情をなくしたけれど、すぐに王族らしいロイヤルスマイルを浮かべて答えた。

「ありません」

 ならさっさとやれよと、喉までせりあがってきた言葉を、僕は声に出すことはしなかった。

「国王陛下はともかく、王妃殿下筆頭にみなそう思っています」

 思っているのにやらないのか。

「でも、それで終わらせたくないのです」

 そうきたか。

「あれだけのことを王族にしておいて、あっさりと最果ての門を潜らせるなんて、わたくしの気が済みません」

 第三王女殿下の言葉に、ずっと黙って話を聞いていたイジーがポツリと呟いた。

「それは王族の矜持としてではなく、私怨ではないのか?」

 イジー、君ってやつはこういう時にだけ、ズバッと核心を突くこと言っちゃうんだからー!!

「えぇ、そうです」

 第三王女殿下も隠す気はさらさらないようだ。

「王族なのだから私怨など持つな、などとは仰せにならないでください。王族とて人間です。感情はあります。人を憎むことだってありましょう? ましてやアレは王の血を引く者を貶めただけではなく、心を壊したのです。そんな相手になぜ安寧な眠りを与えねばならないのです? 永劫に……、苦しんで、悔しがらせて、打ちのめして、絶望させてやりたいのです。この世界が終わるまで、アレに不幸であり続けてほしいのです」

 狂気だな。

 何がそんなに第三王女殿下の憎悪を掻き立てているのか……。

 いや、とても大切な人を、愛している家族を、傷つけて壊したんだ。そりゃぁそんな簡単に許せるわけないか。



申しわけありません。諸事情により、しばらくの間、週一投稿になります。

エイプリールフールじゃないです。

次回更新は4/8になります

GAノベルから4月15日に発売します


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