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ざまぁフラグが立ってる王子様に転生した  作者:
王子様の学園生活(三年生)

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111 年始の嫌な行事対策会議

 学園祭が終わってあっという間に時間は過ぎて冬の長期休暇。

 冬の長期休暇で一番嫌なことは、年始のご挨拶会食だよ!!

 ロイヤルファミリーの行事だか、昔から伝わってる作法だか知らんけど! あーのおっさんの顔見て食事したくねーんだわ。

 あのイヤーな空気!! あれ王妃様もイジーも、居心地悪いと思うんだよ? だって国王陛下あからさまに僕のこと無視しやがってるからな。

 以前、王妃様と宰相閣下に相談したら、欠席ダメといわれてしまって嫌々付き合っているわけなのだが。

 も~、そろそろ何とかしなきゃいけねーと思うわけよ。

「どう思う?」

 王子宮を訪問して、執務室で書類にサインをしているイジーにそう訊ねると、イジーは答えに窮する。

「どう……」

「イジーだって、あのあからさまに僕を無視してる国王陛下のせいで、場の空気が悪くなってると思うでしょ? 気を使ってくれている王妃殿下が気の毒だと思うでしょ? 給仕してる使用人たちが可哀想だと思うでしょう?」

 僕はそう言ってイジーがサインする書類の束を手に取る。

「それはそうかもしれませんが」

 なんだこれは……、王宮内の設備備品の認可書類? なんでこんなのわざわざイジーにサインさせるんだよ。

 コレは王子殿下に回す書類じゃなくって宮中省で決裁させる書類だろう? きなくせーな。横領か?

「何してるんですか?」

 イジーの問いかけには答えず、僕は手にした書類を仕分けしながら話を続ける。

「そこで僕は考えた」

「兄上、待ってください」

「はい、なにかな?」

「そのお考えは、誰かを困らせるようなものですか?」

 あらやだ、イジーったら察しが良くなっちゃって。

「困るのは、意味のないしきたりを遵守している人たちね。さて、僕はここで二つの考えを持っているわけなのだけれど。どっち訊きたい?」

「両方訊きたいです」

「じゃぁ一つ、今年から年末年始はマルコシアスの人たちと過ごす」

 今からフルフトバールに行くのは無理だけど、タウンハウスでネーベルとクレフティゲ老と過ごすのもありだ。来年以降、長期休暇はこっちではなく直でフルフトバールに行く。

「もう一つは?」

「なぜ国王陛下は会食を強要しながら、僕を無視するのかというディスカッションを食事会でやる」

「ディスカッション?」

「議題に対して、参加者全員で意見し合って解決策を出すこと」

「両方とも父上に対しての嫌がらせになりますね」

 わ~、イジー成長したね? これが嫌がらせだってちゃんと気づいたよ。

「そしてこれは番外」

「番外?」

「僕がこんなことを企んでいると、イジーが宮中大臣と国王陛下に密告する」

「え? なんでですか? それだと阻止されるのでは?」

「まぁ、確かに今年は、外出許可は出せないって言って、僕をマルコシアス家のタウンハウスに行かせないようにするだろうね? でも来年以降は学園都市から直にフルフトバールに行ってしまえばいいだけの話だ。あと会食でのディスカッションは、どう阻止するの? いかな宮中大臣でも家族の語らいに口を挟めないでしょう? そして国王陛下は、僕に何を言うんだろうねぇ?」

 そう言って笑顔を見せると、イジーは何とも言い難い視線を向ける。

「兄上、今の笑い方ヘッダにそっくりです」

 あらまぁ、猫ちゃんみたいな笑い方してた?

「イジーから、密告を受けた国王陛下は何を考えて、どんな行動をとるだろう?」

 国王陛下が僕のことを無視するのってさぁ、たぶんあれよ。昔のトラウマ。

 僕が成人したら王子やめます宣言したときと、オティーリエとの婚約を勝手に決めようとしたときに遣り込められたから、同じようなことが起きるのが嫌なんだよね。たぶん。

 ずーっと自分に逆らってこないように、僕のこと上から押さえつけてたじゃん? 自分の威厳を見せつけて、そっけなくしてたのもさ、僕が国王陛下に縋ってくるようにさせたかったんだよ。

 縋るって言うか……。僕が褒めてほしいと思う相手、かな?

 でもさぁ、鞭ばっかりで飴もくれない奴に、誰が懐くかっていうの。

 いやほんと、そういった意味で、僕が何かをなして褒められたいって思うのはおじい様だったり、師匠のフェアヴァルターだし、困ったことが起きて頼りたい相談したいって思う大人は、やっぱりおじい様やクリーガー父様だよ。アレじゃねーんだわ。

 国王陛下もさぁ、もうここまで来たらわかってると思うんだよね?

 僕から尊敬されてないし、褒められたいと思われる存在にもなってない。自分が思い描いたような子供に育たなかった。

 だって自分の後を引き継ぐ王にしたかったのは、最愛の王妃様が産んだイジーで、いやいや側妃として受け入れた母上の子供である僕ではないんだもの。

 そして僕は国王陛下の望み通りに、『じゃぁ次の王様の権利はイジーに譲るね?』って言って、一件落着したわけじゃん?

 もうこれ以上は関わる必要もないじゃん。

 王家のしきたりだって、馬鹿正直にやる必要ないじゃん。『第一王子殿下は、具合が悪くて(仮病)年末から寝込んでいるので、宮中行事は欠席です』でいいじゃん。

 なのに、欠席ダメっていうのはさぁ……。

「見せつけたいんだよねー」

「何が、ですか?」

「自分と王妃殿下とイジーが、仲良しでーす。羨ましいだろう?って、僕に見せつけたいんだよ」

「気持ち悪い」

 言うねー! 包み隠さなくなってきてるぞー。

「その気持ち悪いの、イジーの父親だよ?」

「兄上の父親でもあります」

「いや、僕の場合は、種元。父親は……、何かと構ってくれた、クリーガー父様だな」

 クリーガー父様は、母上の護衛騎士だったけれど、屋内にいるときはアッテンテータがいたから、四六時中くっついてる意味はなかった。

 だから、あの頃、シルトとランツェではできないこと……。たとえば、僕を抱き上げて膝に座らせながら、シルトとランツェ相手にやるボードゲームに一緒に参加してくれたんだ。

 対戦で負けると『難しいですね若君。俺はこういうのは苦手です。若君が強くなって俺を動かしてください』って慰めてくれたし、勝てたら『さすがは若君です。これなら魔獣狩りもすぐにできるようになりますよ』って褒めてくれた。

 そーいう事をな、あのおっさんは僕にしてくれてねーから!

 だから僕が慕う父親はクリーガー父様なんだよ。



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