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リヒトに抱きかかえられた娘と彼の服をしっかりと掴みながら半ば引きずられるように子ども部屋にもどる双子を見送りながらニナはポツリと呟いた。
「ボスに似てこられましたね。拒否権なしだそうですよ」
どことなく楽しそうなニナの声にジオは大きな溜息を零す。
「笑いごとじゃねぇ。
叫ぶなって、なにが書いてあんだよ。コレ」
「さぁ?
でもリヒト様があんな顔をなさるくらいですから、覚悟はしておいた方がいいんじゃないですか?」
くすくす笑うニナに他人事だと思いやがってと思いながらジオはゆっくりと資料に目を通し始めた。
けれど、早々にピタリと目線を止めて、書かれている単語の意味をひとつひとつ理解しようと努める。
ん??これってそのままの意味でとればいいのか?
それとも何かの隠語?……な訳ないよなぁ?
資料に目を通し始めてすぐピタリと動きを止めてうんうん唸りだしたジオにニナは不思議そうに小首を傾げてこっそりとその内容を覗き見る。
「え、ちょ、これって、」
「覗いてんじゃねぇ!!と言いたいところだが、お前の目にもやっぱりそう見えるよなぁ?」
「これどういうことですか!?
まさか、ボス、本気でリヒト様とこのご令嬢をお見合いさせる気……?」
「……」
「否定してくださいよ!!嫌ですよ!私!
どこの馬の骨とも知らない小娘にやるくらいならまだちい姫様の方が……!!
いや、どっちもどっち……?」
真剣な顔で悩むニナにジオは呆れた視線を向ける。
どこの馬の骨とも知らない小娘じゃなくて、れっきとした伯爵家のご令嬢だ。
「お前がイヤつったってしょうがねぇだろう。
それより問題はリヒトの女関係だ。
今まで双子の暴走を恐れて誰ひとりその話題に触れてねぇんだからな」
「お、女関係?まさか、リヒト様に、こ、コイビトがいるとでも言いたいんですか!?」
「いてもおかしくねぇだろ。
リヒトだってもう19の男だぜ?
恋人が居なくても誤解されたら困るやつくらいいるんじゃねぇか?」
「……」
「ニナ?」
「……寝ます。ぐすん」
「待て待て待て!なにがどうしてそうなった!?
つかそんなにショック受けることか!?」
「煩いです。
私の中でリヒト様は可愛い可愛い弟のままなんです。
知らないところでどこかのメス猫にとられたかと思うと……!!
まるで失恋した気分です」
本気で悔しそうな顔をするニナにジオはヒクリと頬を引きつらせる。
お前はリヒトの母親か。
……そういや、似たようなもんだな。
つかその沈黙の後はなんだ。とられたかと思うとどうする気なんだ。
一瞬だけ刀に手を伸ばそうとしたのは俺の見間違いだよな?そうだと言ってくれ。
怖い。怖すぎる。
しかも失恋した気分って……本気で泣きそうな顔してんじゃねぇよ。
なんだこれ。ニナでこの取り乱しようって、姫はどうなんだ。
つかボスはどうやって姫を納得させたんだ?
言ってないってことはねぇだろうし。
……ないよな。姫に黙って話を進めてるなんてことないよな??
半泣きのニナに難しい顔で考えこむジオ。
その奇妙な光景はリヒトが戻ってくるまで続いた。




