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第3章ー3

 話が少なからず先走ったので、1942年5月の段階に話を戻すならば、日米連合軍は、まずは北から山西省、河南省、湖北省、湖南省、広西省、広東省、海南省を完全に制圧する予定だった。


 既に中国本土では、河北省、山東省、江蘇省、安徽省が、ほぼ日本軍の手によって制圧下に置かれ、いわゆる満州国の統治下に、共産中国の統治下から戻っているという現状にあった。

 そして、浙江省や河南省の一部も、日本軍が制圧済みではあった。

 だが、これでは中国本土の制圧というには、程遠いというのが現実である。


 それで、日米連合軍が、本格的に中国本土の東側を完全制圧、孤立させるための侵攻作戦を発動し、それによって、中国本土を制圧するための第1段階の侵攻作戦を行おうということになったのである。

 この侵攻作戦は、1942年秋までに終了させる予定になっていた。

 そして、1943年春までに陝西省、江西省、浙江省、福建省も、日米連合軍が徐々に制圧していく。


 最終的には、1943年春から残る四川省、寧夏省、甘粛省、貴州省、雲南省、青海省への侵攻作戦を、日米連合君が発動して制圧することで、共産中国政府を完全に崩壊させるというのが、日米の大戦略である。

 なお、それ以前にウイグルやチベットは、事実上の分離独立を果たしていることにもなっていた。


 そして、この侵攻作戦に投入されるのは、米軍24個師団、日本軍12個師団だった。

 だが、欧州戦線とは微妙に異なる部隊編制を、極東戦線では取らざるを得なかった。


「中国では、鉄道網が一部出来ているとはいえ、その鉄道網は貧弱極まりないです」

「更に道路網もどうにもならないからな」

 中国本土への本格的な侵攻作戦を検討する日本軍内部では、総司令官の岡村寧次大将と、参謀長の今村均中将が、そのような会話を交わして、補給部隊等をどうするか、頭を痛めざるを得なかった。

 自動車化、機械化は米軍のみならず、日本軍も進んでいる。

 そのために補給部隊等が、鉄道や自動車に頼らねばならなくなっている以上、それを前提に作戦を立てねばならないが。


「進撃先で確保した道路は軒並み舗装されていません。進軍のために、その道路の舗装を進めるべきでしょうが、その道路を簡易舗装で済ませては、それでは戦車の移動、運用に差支えが出ますし、重量物を積載したトラックの移動にも問題が出るでしょう。かと言って、本格的な舗装をしていては」

「部隊の進撃が遅々としたものにならざるを得ないか」

 今村中将の提言に、岡村大将は渋い顔をしながら、頭を痛めざるを得なかった。


 なお、似たような会話がマッカーサー将軍が率いる米軍内部でも行われている。


 この問題への対処のために、例えば、いわゆる米国製ハーフトラックであるM2/M3が、日本の鈴木重工等でライセンス生産されて、日本陸軍に提供されているが、さすがに大正時代以来、日本が営々と自動車産業を重点的に発展させてきたとはいえ、日本陸軍全体に行きわたる程の量の生産は困難で、一部の部隊に対してのみの提供となっているのが現実だった。

 そして、もう一つ、この侵攻作戦には不安要素があった。


「例の病気に対する対処法は、衛生部隊を通じて、部隊全体に周知させておるか」

「はい。これまでシベリア等で戦っていた者が多いので、例の病気を知らない者も多数いるでしょうから」

 岡村大将と今村中将は、再確認していた。


「通常の煮沸消毒等の一般的な予防法では防げない病気だからな。米軍は分かっているのだろうか」

「我が米軍の衛生観念は世界一だ、と担当の軍医たちは自信を示してはいましたが」

「何だか不安を覚えるのだが」

「全くです」

 その病気は日本住血吸虫症という名前だった。

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