生徒会に入ります3
新たに任命された私達4名は、生徒会室へと呼び出される。
「どうしてこうなった……」
そう呟くのは、裕介
「一人だけ楽しようなんて、お姉さんは許しません。ぷんぷん」
「…逆に清々しいよ、お前」
グチグチとうるさいので、裕介の耳元でこそっと呟く
(帰ったら、ぶー太のお菓子が待っておるぞい?)
「!」
(非売品、my格付けA+)
「!!!!!」
単純なやつめ。
「よーし、さっさと用事を済ませるぞ!」
男の子は、元気が一番である。
そんな二人の様子を眺めていた2人がいる。
「……如月妹、恐ろしい女だ」
「私よりも全然仲良しだからね、あの二人」
心が一つになった4人は、生徒会室へと向かった。
――生徒会室
生徒会室には、既に他のメンバー全員が集まっていた。
1つだけ、キランと輝きを放つ席。…私、専用だった。
「来たか…。まずは生徒会長として、お前らを歓迎する」
偉そうなこの男は、堀田邦明、最後の攻略キャラである。
不遜な態度で、暴君とも呼ばれる男。当然、美形。
その横には、拓也先輩、そしてライバルである天王寺日花里がそれぞれいた。
日花里は、私の横に立つ遥だけをじっと見ている様子。
その表情は、どう見ても友好的なものではない。
やれやれ
初っ端かなこの態度とは、いかがなものか。
生徒会長に促され、まずは簡単に自己紹介をする。
「1年生の如月裕介です。よろしくお願いします」
「1年生の如月悠です。よろしくお願いします」
「に、2年生の…如月遥といいます。その、どうぞよろしくお願いします」
「はい、2年生の二階堂竹夫です。兄の名を汚さぬよう、誠心誠意、頑張ります!皆様どうぞよろしくお願いいたします!!!」
「竹夫、頑張れよ」
「は、はい!」
張り切ってるなー、二階堂弟は。
お兄ちゃんに声をかけられ、うっかり泣きそうになってる。
義弟を見ると、案の定、ひいていた。
(裕介もアレ、やってみてよ?)
(無理無理絶対無理)
義弟に視線を送ると、全力で首を横に振る。面白いのに。
私達に続いて、今度は他の生徒会役員が、順番に自己紹介をしていく。
そして、残りは3名となる、
「3年の天王寺日花里です、よろしく」
無愛想に答えるのは、ライバル女こと日花里
「副会長で3年生の二階堂拓也。よろしくな」
素敵です、拓也先輩!
「生徒会長で3年生の堀田邦明だ。これから1年間、よろしく頼む」
最後は堀田邦明こと、ストーカー似の男
その傲慢な言い方といい、自信満々の態度といい…
私はげんなりした。
ああ見えて、ギャップ萌えとかあるのだろうか?
雨の中、捨てられた子犬に傘を貸す生徒会長。その瞳は慈愛に満ちている。
なんと、素晴らしい!
…こいつなら、邪魔なら蹴り飛ばそうだ。
「ところで、裕介。今まで散々無視してきた男が、今回はどうした?」
「姉に無理やり入れさせられたんですよ。じゃなきゃ、誰が入るか。めんどくせぇー」
「そうか。お前にも、苦手なものがあるのだな」
生徒会長は愉快そうに笑みを浮かべた。
それから、生徒会の活動についての説明を受ける。
大事な役目は、学校生活で揉め事が起きた場合の仲裁だそうだ。大半の生徒が上流階級、一教師では手におえないからだ。そのため、生徒会に入るのに家柄は絶対条件。まあ、如月家には関係ない話であるが。後は、学校行事の時とかにも活動するようだ。
つまり、裕介の言う雑用係である。アバウト過ぎだろ、あいつ。
ただし、その分の特典もある。1つは生徒会フロアと呼ばれる校舎の一角が使用可能になる事。そこは、生徒会の人間しか入る事が出来ない。そこには、様々な施設があるようだ。他にも細かい特典があるのだが…
つまり、偉ぶれるである。
あと、忘れてならない特典の1つに、学食無料がある。
お金には困ってませんが、無料ですよ?気分が全然違います。
「よかったね、悠ちゃん」
「よかったね、悠」
「よかったな、悠」
「…これ以上、太る気か」
皆から言われたほどだ。
だが、他人から指摘されると、あまり嬉しくないのは何故だろう。
生徒会様様である。
「質問がある者はいるか?」
「はい、失礼ながら、数点お聞きしたい事がございます。まず、1点目ですが―」
本当に真面目だな、この眼鏡。
裕介なんて全身から帰りたいオーラ出してるのに
竹夫の質問にも、すらすらと答える生徒会長。
ストーカー男と違うのは、その自信に見合った実力も兼ね備えているところか。
「他に、質問があるものはいるか?」
「邦明、1つだけよろしいかしら?」
「日花里か。いいぞ、言ってみろ」
許可を得た日花里は、鋭い視線を遥、ただ一人へと向ける、
「遥さん、ここがどういう場所か分かっているのかしら?ここは、選ばれし人間のみが集まる生徒会よ」
「は、はい……」
「遥さん、あなた、確かこの前の試験で…79位だったそうね?」
「はい…」
遥の声は、緊張していてかなり小さくなっていた。
視線も少し俯き加減になっている。
それを聞くと、日花里は大きくため息をついた。
「はぁー、困るわ。ここは、あなたのような愚かな人間がいる場所ではないのよ」
「天王寺先輩、流石にその言い方は彼女に失礼では?」
遥を庇ったのは、二階堂弟。
その瞳からは静かな怒りがうかがえる。
やるじゃないか、眼鏡弟!
「あなたには聞いてないわ!部外者は黙ってなさい!!!」
「は、はぃ!」
日花里の恐ろしい剣幕に、竹夫はビビって縮こまる。
…もう少し頑張れよ、ヘタレ
しかし、私は慌てない。
なぜなら、このイベントを知っているから!
『ライバルと主人公の対決イベント』ムービーでも、お馴染みである。
日花里「如月家とはいっても元庶民の女、その平凡な生まれまでは誤魔化せないようね」
オーホッホホホ、高笑いする彼女
生徒会長「耳触りだ。日花里、黙れ」
ここで、彼が止めに入るのだ。
だから、私も安心していた。
それが、いけなかった―
「如月家とはいっても元庶民の女、その平凡な―」
ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅううう
油断のしすぎで、腹の音が部屋全体へと鳴り響く。
微かにこぼれる笑い声。肩を震わせている、生徒会面々
……恥ずかしい、穴があったら入りたい。
そして、裕介。お前は笑い過ぎ。
一人、決めセリフを取られた日花里だけが、怒りで全身震えていた。
「そこのあなた!!!如月悠さんと言ったかしら?姉が姉なら妹も妹ね。どーせあなたも、その醜い姿にお似合いの、愚かな成績なのでしょうね」
オーホッホホホ、高笑いする彼女。
「そこの豚は、学年1位だぞ」
会話の間に入ってきたのは、生徒会長。
日花里の高笑いはピタリとやみ、驚きの表情で私を見る、
「この…この豚が1位ですって……そんなの、あり得ないわ!!!」
「こらこら、二人とも。悠ちゃんに失礼だぞ」
豚は、もうこの際許そう。ただ、拓也先輩、大好きです!
どうやら、この日花里って女は、私の素晴らしい成績を知らなかったらしい。
眼中にもなかったってやつか
だが、憶測で語るとは。笑止千万
「賢い日花里先輩の成績、ぜひ教えてください」
ニッコリ
拓也先輩顔負けの笑顔で、私は尋ねた。
「豚ッ!!!いい気に、なるんじゃないわよ!」
彼女はもの凄い形相で私を睨み付け、そのまま生徒会室を出て行った。
完 全 勝 利 !
姉の生徒会長キュン、イベントをカットしてしまったが、
まあいいだろう。私は拓也先輩押しなのだ。
「ありがと、悠」
遥の好感度は上がったし、結果オーライである。
「……これが世に聞く、女同士の戦いか」
とは、ヘタレ。面倒なので放置しておく。
「ぶ…ぶ、豚だって。ぷっ…ぷ」
裕介は何だか楽しそうだ。
そんな彼に、一言述べた。
「裕介、なしな」
「え…」
笑っていた彼だが、意味を理解したのか、顔が段々と真っ青になる。
反省しても遅い、だれが豚じゃ。
「あ……あ……」
「なしな」
「……A+」
崩れ落ち、落ち込む裕介を放置する。
その後、すぐに会議は終了し、私たちは生徒会室を後にした。
家に帰っても元気がない裕介。見ていて非常に面白い。
だが、流石の私も可哀想だし渡してあげた。
「悠お姉様ーーー!!!」
と、ウザいくらい感謝された。
義弟って、こんなキャラだったっけ?
人が去った生徒会室
残っているのは拓也と邦明の二人だけであった。
「ね、面白い子でしょ?」
拓也の問に、邦明は答えない。
だが、その表情から拓也は、邦明が興味を示したのを確信していた―。




