拓也先輩と約束
如月悠 故22歳
名門大学に通う天才美少女
短所は、すぐ調子にのってしまう事
…いまは、反省してます。
――昼休み、教室
「何だか廊下が騒がしくない?」
「そう、気のせいでしょ。それより、今日の、ぶー太のお菓子も最高に美味しいよ」
「アンタは、ホント食い物の話ばかり」
「悠ちゃんらしくて、いいじゃん」
ぶー太のお菓子を食べるながら雑談する。
いつもの平和な風景がそこにはあった。
「それよりぶー太、この前新しく出来たケーキ屋、すごい、評判良いみたいだよ?」
瞬間、ぶー太の普段はっきりしない眼が鋭くなった、気がした。
「流石、悠ちゃん。情報が早い。じつは、僕も気になっていたんだ」
「へぇー、何がそんなに人気なの?」
「「モンブラン!」」
美穂は呆れている。
だが、私たちのお菓子への飽くなき探究は、誰にも止められない。
「これは、是非ともチェックせねばなりませんね、ぶー太殿」
「そうですねー、是非とも現物を拝みたいものですね、悠殿」
「モンブランは遥の大好物だし、今度は三人で行こうか?」
最近は私とぶー太に加えて、姉の遥の三人で行く事もあった。
美穂は相変わらず不参加。寛大な彼女様に本当に感謝しています。
だから、今回も三人で行くつもりだったのだが…
「そうだね。じゃあ、日にちだけど―」
「へぇー、モンブランか。それは、俺が参加してもいいのかな?」
割り込んで来た声、私たちが振り向くと、そこには拓也先輩がいた。
クラスメイトも彼の登場に驚き、様子をじっとうかがっている。
廊下の騒ぎの原因は、彼のせいによるのだが、この時の私はそんな事を考えている余裕はなくなっていた。
彼は素晴らしいスマイルで、爆弾発言をするのだった―
「どうも、悠ちゃんに惚れてる、二階堂拓也です」
どうしてこうなった。いや、分かってる。分かってるよ!
と、とにかく、この場を何とか切り抜けねば…
クラス中が騒然となる。何かを呟くお嬢様達の声
聞こえずとも、その内容は見当がつく
美穂とぶー太は驚き、私をただじっと見ている。
そんな二人の表情は初めて見た
だが、そんなこと今はどうでもいい、
「ちょっと先輩、なんてこと言うんですか!!!」
私はキラキラ王子へと向かって大声で叫ぶ。
親衛隊と思しき皆さんは、般若の形相で私を見ている
ヤバい、このままではヤバい。私の平穏な学園生活が…
「あれ、違った?」
素敵な王子スマイルで私を見ている。
彼は楽しそうだ。
「あの時のセリフも言おうか?『君の事は―」
慌てて拓也先輩の口を手で抑える。
強烈な視線をひしひしと感じるが、こればかりは不可抗力である。
彼は楽しそうだ。それはそれは、楽しそうだ。
「本当に反省してるんで!マジで、勘弁してください!!!」
頭を机へへばりつけ、私は目の前の男に必死に許しを請った
しばしの沈黙の後、
「ごめん、ごめん。ただの冗談だよ」
王子は憎たらしい笑顔で、そう言うのであった。
騒ぎも一段落すると、拓也先輩は私達のグループへと混ざってきてる。
彼のせいで注目を集めてはいるが、さっきのピンチに比べたら全然マシであり、気にもならない。
美穂とぶー太も同じ気持ちのようだ。いや、ぶー太は若干落ち着かないようだが。
「二人は知り合いだったんですね、驚きました」
「うん。色々あって、今は友達だよ」
「…そうですね」
この人は中々の性格
今後、からかうのは、義弟と二階堂弟だけにしておこう。
ビバ、弟ペア
こっちをちら、ちらとうかがう義弟こと裕介。
そんな通常運転の彼に、疲れた私の心は癒された。
はいはい、君の分はちゃんと後で貰っておくよー
「それで拓也先輩、突然どうしたんですか?」
「悠ちゃん達が、いつも珍しいモノを食べてるって噂で聞いてね。是非とも俺も食べてみたいなーて、思ったわけさ」
「だ、そうですよ。ぶー太」
「は、は、は、はい。先輩に食べていただけるなら光栄です。ぜひ、どうぞ!」
緊張しすぎた、ぶー太。恭しく差し出すお菓子を、先輩はその場で手に取る。
「ありがとう。……へぇ、これは本当に美味しいね」
「あ、ありがとうございます!!!!!」
よかったな、ぶー太。
「ところで、さっき話してた噂のケーキ屋さん?俺も是非一緒に行きたいんだけど、どうかな?」
クラスの女子が羨ましそうに私達を見ていた。親衛隊は…私は確認するのをやめた。
美穂が少し距離をとった気がするのは気のせいだろうか
先輩と出かけると後々面倒な事になりそうだが、どうするべきか。
だが、私が結論を出すより先に、ぶー太が裏切る。
「二階堂先輩、ぜひとも、一緒に行きましょう!」
「はは、ありがとう。悠ちゃんも、いいかな?」
「よろしく、お願いします」
まあ、いいか。
よく考えたら、遥と拓也先輩とのイベントにもなるのだし。
これは、何気にナイスアシスト?
爽やか(疑問形)男子であるが、イケメンだし、一応は私のお勧め。
遥、頑張って。
ブブブ
空気を読まずになるのは、私の携帯
メッセージを知らせるバイブ音である
『如月裕介』調べたんだが、その店モンブランだけじゃなく、苺のショートケーキも人気みたいだ。
・・・・・。
とりあえず、返信するか。
『如月悠』情報ありがとよ
ブブブ
『如月裕介』^^
私は携帯をしまう。
「メッセージ、誰から?」
「犬のポチからです」
どうやら理解出来なかったようだが、問題ない。
拓也先輩に、姉が参加する事を伝えると快く了承してくれた。
そして、当日の待ち合わせ場所と時間を決める。
「じゃあ今度の休み、よろしく」
悩殺スマイルを使って、拓也先輩は教室を去って行った。
美穂が「キラキラしすぎて、私には眩し過ぎだわ…」と私にこっそり教えてくれた。
右に同じである。




