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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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79.僕は目を逸らす

 期末試験が終わり、松雪さんの誕生日の予定も確保できた。

 これから準備が大変だけど、あとはやり切るのみである。


「……っ」


 ……そのはずなんだけど、最近松雪さんの様子がおかしい。

 僕と目を合わせると、すぐに顔を逸らしてしまうのだ。そのせいで昼休みも一緒に過ごせないし、もしかして避けられているのか?

 なんでだ? 何かした覚えがないぞ。でも松雪さんの様子を見れば、まるで僕が原因みたいだった。

 陽キャの松雪さんに避けられると、陰キャの僕には手の打ちようがない。

 クリスマスイブまでには、この状況を改善しておかなければ。せっかく彼女の誕生日をお祝いしようとしているのに、気まずいなんて言っていられない。


「ひ、比呂先輩……一緒にお昼食べよ」


 松雪さんとは対照的に、城戸さんが話しかけてくるようになった。

 試験期間中は互いの勉強があるからと遠慮していたけど、それも終わったのでこうしていつも通りに戻ったというわけだ。

 ……しかし緊張する。

 城戸さんはもしかしたら僕のことを好きかもしれないのだ。いつも通りと心の中で言い聞かせてはいるんだけど、どうしても意識してしまう。

 だからって恥ずかしがってばかりはいられない。

 実は勘違いでした、というのもよくあるパターンだ。……いや、経験からじゃなくて漫画でありがちな展開ってだけなんだけども。


「うん。食堂でいいよね?」


 いつも通りを意識して返事する。城戸さんはこくりと頷いた。

 さすがに十二月の屋上は寒い。最近の僕たちは、暖かい空間を提供してくれる食堂を利用することが多くなっていた。

 城戸さんも大分人の目に慣れてきたようで、注目されてもあまり気にした様子はない。

 以前までとは向けられる視線の種類が変わったというのもありそうだけど。文化祭までは恐れられていたものだけど、今は可愛い女子として注目されているんだもんね。

 僕はカレーライス、城戸さんはきつねうどんを持って、空いている席に向かい合って座る。

 しばらく黙々と食事する。僕と城戸さんの二人だけだと、こういった静かな時間になりがちだ。


「クラスの人たちとは仲良くしてるの?」


 まるで父親みたいなことを聞いてしまった……。


「うん。試験勉強もみんなとしたよ」

「そっか。それは良かった」


 城戸さんは無表情ながらも、柔らかい雰囲気をかもし出す。

 友達ができたことで気を張る必要がなくなったのだろう。前よりも明るくなったように感じる。


「比呂先輩も……試験勉強は友達と、した?」

「ま、まあ……そんなところかな」


 他のクラスというのもあってか、まだ「友達」というフレーズに慣れない。

 だけど、大迫くんたちとの関係は、胸を張って「友達」と言える関係のはずだ。


「……」

「……」


 無言の時間が流れる。

 いつもなら城戸さんと二人きりなら、沈黙が続いたってなんとも思わないのに……。今回ばかりは気まずさのようなものに襲われていた。

 あれ、なんだこれ?

 城戸さんも僕と似たような気持ちなのか、うどんをちゅるちゅるとすすりながら、せわしなく瞬きを繰り返していた。

 いつも通りを意識してはいるけど、緊張を隠し切れない。そんな感じ。


「あの、比呂先輩……」

「うん」

「クリスマスイブって……予定はある?」


 城戸さんはおずおずといった様子で、そんなことを尋ねてきた。


「……」


 予定がある。そう言うのは簡単だ。

 でも、隼人さんからは「綾乃と二人きりで、比呂くんがエスコートしてあげるんだよ」と言われている。

 松雪さんの誕生日のお祝い。お金の面で隼人さんを頼ることになっていたりする。それを考えると、勝手に計画を変更するわけにはいかなかった。

 これなら隼人さんに「他の人も誘っていいですか?」と聞いておけばよかった。ぼっち気質が抜けていなかったせいか、こうして聞かれるまで誰かと一緒に松雪さんをお祝いするという考えがなかった。

 ……いや違う。考えないようにしていたんだ。


「……予定はあるよ。クリスマスイブは松雪さんの誕生日だから、彼女をデートに誘ったんだ」

「え……」


 城戸さんが僅かに目を見開く。


「誕生日のお祝いだって、まだ松雪さんには教えていないんだ。ここだけの話だよ?」

「う、うん……」


 城戸さんがこっくりと頷く。いつもよりも動きがゆっくりに感じた。


「だからクリスマスイブはもう埋まっているんだ。もしかして用事があった?」

「う、ううんっ。クリスマスイブにうちでパーティをしようかと思っていたから……そ、それだけっ」


 城戸さんは丼を持ってうどんのお汁を飲み始めた。

 丼のせいで、彼女の顔が見えない。


「……」


 僕は、城戸さんのことをどう思っているんだろう?

 陰キャ友達で、可愛い後輩で、なんとか手助けしたかった女の子。

 そういう認識で、それ以上を考えてこなかった。

 この関係を気に入っている。壊したくはない。

 でも、もし城戸さんの気持ちが本当に恋だったとすれば……。


「どちらにしても、このままではいられなくなるよなぁ……」

「ぷはぁ。ん、何か言った?」

「なんでもないよ」


 僕は目を逸らす。

 恋心と真っ直ぐ向き合える恋愛強者のすごさを、改めて思い知る恋愛弱者の僕なのであった。



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