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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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77.お兄さんに見込まれた男

「それでプレゼントをどうしようかって考えてて──」

「ちょっ、ちょちょっ、待ってください!」


 マイペースに話を続けようとする隼人さんを慌てて止める。

 えっと……急な情報に頭が回らない。


「松雪さんの誕生日が今月の二十四日なんですか」

「そうそう。綾乃の誕生日は十二月二十四日。あれ、もしかして知らなかった?」


 そんな知らない方がおかしいみたいな言い方されても……。

 でも、そっか……松雪さんの誕生日って十二月二十四日なんだ……。

 情報を頭の中で整理していく。そうすると次に疑問が生まれた。


「あの、なんでその話を僕にするんですか?」


 僕と隼人さんはたった一度しか会ったことがない。

 しかも夜の公園で、松雪さんのお兄さんにもかかわらず不審者扱いをしてしまったのだ。どう考えても良い印象を持たれているとは思えない。

 隼人さんはじーっと僕の顔を見つめる。この人、感情が読めないから黙って見つめられると緊張するな。


「比呂くん、君は最近綾乃を避けているようだね」

「えっ、い、いや……」


 いきなり友達のお兄さんに、学校での僕の行動を言い当てられて、内心で動揺してしまう。

 ていうかなんで知ってるの? もしかして隼人さんってエスパー?


「隠しても無駄だよ。兄は妹のことをなんでも知っているものだから」


 一人っ子の僕でもわかる。そんな兄はいない。

 まあ松雪さんが、最近の僕の様子がおかしいとかなんとか話したのだろう。彼女の性格的に「避けてる」までは言わなかったと思うけど、それは隼人さんが察したというところか。


「だから比呂くんにとって良いきっかけになるかなと思って提案しに来たんだ。俺は綾乃の誕生日を祝ってもらえてハッピー。比呂くんは綾乃と気まずくなくなってハッピー。素敵でしょ?」

「は、はあ……」


 声色に起伏がないからハッピー感がないですよ、とは言えなかった。年上のお兄さんにそんなツッコミできる度胸は僕にはない。


「……それに、綾乃はちゃんと誕生日を祝ってもらえたことがないから」

「え?」


 そんなことないだろうと思った。

 だって家族で祝うだろうし、彼女には友達だっている。ちゃんとお祝いされたことがないなんて、それこそないだろう。


「クリスマスイブと被るから。親ですら綾乃の誕生日なのかクリスマスイブなのかわからなくなっているっぽいし」


 さすがにそんな親いないって……とは思うけど、隼人さんの口ぶりからは冗談めいた色を感じなくて。


「……そうなんですか」


 気の利いた言葉を思いつかず、意味のない返事をするだけだった。

 ふと、松雪さんの無邪気な笑顔が頭に浮かんだ。

 いつも笑顔で、誰とでも仲良くなれて。

 でも、本当は自分を守るだけで精一杯で。実は悪ガキみたいな女の子で……。

 家での彼女がどんな風なのかはわからない。

 隼人さんは妹想いのお兄さんに思える。もしかしたら家庭で嫌なことがあるのかもしれないけれど、全部が悪いわけでもないはずだ。

 ただ、松雪さんが「寂しい」と感じているのなら、そんな気持ちは吹っ飛ばしてあげたい。


「子供の頃に親がケーキを買ってきてはくれたんだけど、誕生日プレートのない、普通のクリスマスケーキだったんだよね」

「誕生日プレート……」


 誕生日プレートって「○○ちゃんおめでとう!」って書いているやつ。特別感があって僕は好きだ。

 クリスマスケーキも特別ではある。だけど、それで自分の誕生日の特別感がなくなってしまうのだとすれば……。


「綾乃ってあまり文句を言わないからさ。とくに怒りもしなかったし、わざわざ自分の誕生日だよって指摘もしなかったんだよ」

「……」

「そうしたら次からは綾乃の誕生日はただのクリスマスイブになったわけ」


 状況は、わからなくもない。

 誕生日のケーキとクリスマスケーキ。それを同じ日に食べるなんてできないだろう。

 だったら一つでいいじゃない。親の気持ちとしてわからなくはないけれど、当の本人はどう思うのか……。

 僕だったら、嫌だなと思う。


「綾乃って本当は甘い物が好きなのに、小さい頃からお菓子を食べちゃダメとか言われて禁止されているんだよね」


 そういえば。だからわざわざ夜の公園でこっそりお菓子を食べていたんだ。


「だから綾乃にとってのケーキは特別だったんだよ。なのにあんな風に扱われてさ……。些細なことかもしれないけど、ずっと引きずっているんじゃないかな」

「食べ物の恨みは恐ろしいですからね」

「そういうこと」


 隼人さんがくすっと笑った気がした。ほんの些細な変化だったからわかりづらかったけど。


「中学生くらいになるとケーキすら買ってもらえなくなったし。親から誕生日をちゃんとお祝いされたのって、結局一度もなかったんじゃないかな」

「でも、隼人さんはお祝いしてあげていたんでしょう?」

「俺のお祝いの仕方だと不服みたいでね。そこで比呂くんに声をかけたというわけ」


 なんとなく、わかる気がする。

 松雪さんの親は、言い方は悪いけどちゃんとは娘のことを見ていないのかもしれない。

 普段の松雪さんならともかく、夜の公園でお菓子を食べている彼女を知っているからこそ確信できる。

 松雪さんは誕生日を祝われたいに決まっている。自分の記念日を、特別に扱ってほしいと思う人だ。


「わかりました。僕もお祝いしたいですし、良ければケーキを用意しますよ」

「それは助かる。やっぱり比呂くんは俺の見込んだ男だ」


 僕はいつ隼人さんに見込まれたんだろうか……。会ったのはこれで二回目ですよね?

 なんてことを話していると、注文していたカツ丼が届いた。


「俺のおごりだとしっかり噛みしめるんだよ」

「そういうこと言われると、逆に食べづらくなりますからね?」


 でも遠慮なくいただいた。身体を大きくするためにも、食は大切なのだ。


「せっかくだから、比呂くんには綾乃のことをいっぱい教えてあげるよ」

「勝手に話して、松雪さんが怒りませんか?」

「お兄ちゃんだから大丈夫」


 根拠なさすぎなんですけど……。

 それでも松雪さんの誕生日プレゼントの参考になればと、隼人さんの言葉に耳を傾けるのであった。



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― 新着の感想 ―
 お兄さん、認めてくれていますね。しっかりした人だ。   なのに! この親は何故……
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