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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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75.広がる交流

 期末試験が近づいているというのに、僕は相変わらずトレーニングに励んでいた。

 慣れない運動で筋肉痛ばかりだ。

 大迫くんとのロードワークが追加されただけでも、正直かなりしんどい。

 それでも日に日に鍛えられている実感が確かにあって、それがまた楽しくて続けたいという気持ちを強くしていた。


「あの、比呂く──」


 学校の休み時間に大迫くんのいる教室に行くことが多くなった。

 ジムではトレーニングに集中しているから、充分に話せる時間がないのだ。せっかく同じ学校なのだしと、僕は積極的に彼に質問をしに行った。


「比呂先ぱ──」


 それは昼休みも同様だった。

 大迫くんと話すことは、何もトレーニングに限ったことじゃない。

 ていうか期末試験が近いのだ。僕は大迫くんと一緒に試験勉強をする時間が増えていた。


「こりゃまた珍しい組み合わせだよな」

「あっ、佐野くん」


 大迫くんと佐野くんは同じクラスだった。さらに言えば杉藤さんもである。


「最近大迫くんと仲良くさせてもらっているんだ」

「そうなんだ。良かったわね健太郎」

「う、うん……」


 杉藤さんが自分のことのように喜んでいる。大迫くんもなんだか照れている様子だ。

 って、うん? 健太郎……?

 杉藤さんは松雪さんのように、みんなの名前を呼ぶ人ではないはずだ。

 それはつまり……それだけ親しい仲だということじゃないのか?


「も、もしかして大迫くんと杉藤さんって付き合っているんじゃ……っ」

「「「それはない」」」


 大迫くんと杉藤さんどころか、佐野くんにまで否定されてしまった。


「おいおい冗談きついぜ矢沢くん。うっかり拳骨しちゃうところだったよ?」


 しかも佐野くん、とっても怒っていらっしゃる? え、ど、どうすれば……っ!?


「マサくん?」


 慌てる僕を見かねてか、杉藤さんが低い声を出す。たしなめてくれているんだろうけど、情けないことに僕の方がビクッと震えてしまう。


「ただのきつい冗談だよ。だからそんなに可愛い顔しないでよ千夏ちゃん。もっと惚れちゃうだろ」

「か、可愛いだなんて……も、もうっ」


 あれ? 何この甘酸っぱい空気は?

 僕が二人の顔を何度も見比べていると、佐野くんがフフンと鼻を鳴らす。


「この際だから言っておくが、千夏ちゃんと付き合っているのは俺だぞ。超ラブラブカップルの俺たちが、他の奴に目移りする暇なんかないからな」


 佐野くんは「ねー千夏ちゃん♡」と杉藤さんに同意を求める。

 これも冗談なのか? そう思って杉藤さんの方を見てみるけれど、顔を赤くしている様子を見るに、演技ではないように思えた。


「う、うん……。そういうことだから、か、勘違いしないでよね?」

「わ、わかったよ。ごめん……」


 そ、そうだったのか。だから以前、佐野くんが馴れ馴れしく肩を抱いても杉藤さんは怒らなかったんだ。

 よく考えればすぐに気づきそうなものだったのに、経験不足な僕は二人の関係にまったく思い至らなかった。

 杉藤さんのような真面目で気の強そうな女子が、佐野くんみたいな軽そうな男子と付き合うわけがない。僕は無意識のうちに、そんな失礼な先入観を抱いていたのかもしれない。

 僕って奴は……っ。まだまだトレーニングが足りないようだ。

 だけど、それならそれで気になることがある。


「じゃ、じゃあなんで大迫くんのことを『健太郎』って?」

「ああ。千夏は僕の幼馴染だからだよ」

「え……?」


 幼馴染の女子が、別の男の彼女に……。その状況、どっかで聞いたことがあるんですけど。……いや、僕のことなんですけどね。

 しかし様子をうかがってみれば、佐野くんの隣で笑みを浮かべている杉藤さんを眺めている大迫くんは、優しげに微笑んでいた。

 さすがは大迫くんだ。僕は美月に彼氏ができただけで動揺して脳がどうにかなってしまいそうだったのに、彼からはまったくそんな様子を感じない。

 それどころか大迫くんの微笑みは、幼馴染の幸せを祝福しているようでもあった。

 なんという器の持ち主なのだろうか。あまりにも大きすぎて、自分の小ささが強調されているようで居た堪れなくなる。

 見習わなければっ。もっと大迫くんのような立派な男になれるように!


「つーか矢沢くん。そこの問題の答え間違ってんぞ」

「健太郎も。そこ間違えているわよ」

「「……」」


 なんだろうこの敗北感は……。カップルに間違いを指摘されると、なぜか余計に落ち込むんですけど。

 これもまた僕の器の小ささか……。

 僕はまだまだ小さい人間だ。だけど、ずっとそのままじゃない。このままでいたくない。


「佐野くんと杉藤さんは勉強が得意と見込んでお願いがあります。二人には迷惑だろうけど、良ければ勉強を教えてもらいたい……です」


 僕は佐野くんと杉藤さんに頭を下げる。

 トレーニングする時間を削らずに期末試験を乗り切るためにも、できることはしたいと思ったのだ。

 佐野くんと杉藤さんはお互いの顔を見合わせる。それからわかり合ったかのように同時に頷いた。


「よし、いいだろう。矢沢くんのお願いだしな」

「人に教えるのは自分の勉強になるともいうわ。全然迷惑な話じゃないわよ」


 佐野くんと杉藤さんは快く僕のお願いを受けてくれた。違うタイプの二人かと思っていたけれど、人の好さはよく似ていた。

 ダメもとでも言ってみるもんだな。口にするのは、僕が思っている以上に大切なことなのかもしれない。


「何やってんのマサ?」

「お、なんか勉強会っぽくね?」

「お、俺も次の試験ヤバイかも……勉強教えてくれよマサ!」


 さらに佐野くんの友達も加わり、なぜか大所帯で試験勉強をするようになった。

 そうやってトレーニングと試験勉強をする日々が続いた。他のクラスの人と仲良くできるなんて、僕にとっては刺激的な生活だ。

 身体と頭を使いまくっていたからだろうか。


「やあ比呂くん。これからちょっと時間をもらえないかな?」


 突然の松雪さんのお兄さんの出現に、僕はフリーズしそうになってしまったのだった。



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