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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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66.城戸紬は焦る

 比呂先輩と松雪先輩が帰ってから、あたしは唯花を怒っていた。


「唯花っ。唯花のバカ! もうっ、バカバカバカバカ!」

「あははー。お姉ちゃんバカしか言ってないよ。怒るのへたっぴだね」


 あたしがこんなにも怒っているのに、唯花はケラケラと笑うばかり。悔しい……。


「信じられないっ。比呂先輩にいきなり告白して、しかもキ、キ、キス……なんかするなんてっ」


 思い出すだけでこっちの顔が熱くなる。

 唯花は比呂先輩の頬にキスしたのだ。チュッと音がするくらい大胆に……っ!

 唯花があんなことをする子だったなんて思わなかった。妹の将来が心配になってしまう。


「だって、アタシはお姉ちゃんと違って毎日比呂さんと会えるわけじゃないんだよ。だったら少ないチャンスをモノにしていくしかないじゃない」


 唯花はニヤリと笑う。


「むしろお姉ちゃんは消極的すぎるんじゃないかな?」

「え、え?」

「お姉ちゃんの言う通り、やっぱり比呂さんってモテるんだね。綾乃先輩は最初、笑顔が固い人だなって思ったけどさ、あの人比呂さんの前だとありのままを見せているって感じなんだもん。あの緩み切った表情を見れば比呂さんが好きなんだなってわかるよ」

「え、え、ええええええぇぇぇぇぇぇーーっ!?」


 あたしは思わず大声を上げてしまった。

 ううん、薄々は感じていたけれど……あの松雪先輩が男子に好意を寄せているイメージが湧かなかった。

 男女関係なく、みんなに分け隔てなく好意があるんじゃないかってくらい親しげで……。

 だからこそ特定の人に特別な好意を向けるのができないのだろうと思い込んでいた。


「あれ、もしかしてお姉ちゃん気づかなかったの? 女子なのに鈍感だね」

「うっ……」


 グサッ。胸が鋭利なもので貫かれた感覚。

 会ったばかりの唯花が気づいて、普段から顔を合わせているあたしは想像もしていなかったなんて……。女子として終わっていると言われても仕方がないのかもしれない……。


「お、お姉ちゃん落ち込まないで。ごめんね、鈍感なんて言ったアタシが悪かったよ」


 唯花は小さな手で、うずくまったあたしの背中を摩る。

「よしよし」と言われながら摩られていると、ちょっと元気になった。


「お姉ちゃんもう大丈夫?」

「うん」

「それじゃあ作戦会議しよっか♪」


 唯花は太陽みたいな笑顔でそんなことを言い出した。


「作戦会議って……え?」

「お姉ちゃん。ポケッとしていたら良い男は取られちゃうんだよ? しかもライバルは綾乃先輩っていうものすごい美人さんなんだよ。恥ずかしがっている場合じゃないんだよ!」


 唯花の圧が強い……。身体はあたしの方が全然大きいのに、その迫力にたじろいでしまう。


「で、でも……」

「弱気にならないっ。もし何もしなくて比呂さんを取られたら絶対に後悔するんだからね!」


 唯花にバシッと背中を叩かれる。

 それは威力以上の痛みを感じた。


「お姉ちゃんもアタシに似て美人さんだから、きっと他の男の人と付き合おうと思えば簡単にできるよ。でもね、良い男の人はどんどん取られちゃうものなの。うかうかしていたら手遅れになっちゃうんだからね」

「……」

「お姉ちゃんは比呂さんのこと好きなんでしょ?」

「う、うん」


 妹の迫力に負けて頷いてしまった。い、今のなしっ。


「それならやれることはやっていかなきゃ。お姉ちゃんの人見知りを直すチャンスでもあるしね」

「べ、別に人見知りというわけじゃ……」

「へぇ……クラスのみんなに囲まれるようになって、何を話せばいいかわからないって泣き言を口にしていたお姉ちゃんが人見知りじゃないって?」

「そ、それはただのコミュ障だから……」


 自分で言ってて悲しくなる。


「男子に告白されるようになって、言い訳に思わず比呂さんを頼ってさ。綾乃先輩が本気出したらそんな言い訳なんかできなくなるよ」

「うぅ……」


 唯花の、たぶん事実になってしまうであろう言葉に悲しくなる。


「まっ、お姉ちゃんが本当にこのままでいいっていうならアタシは構わないよ。その分アタシが頑張るから」


 唯花はあたしに背を向けると、テレビを操作してネット接続した動画を流し始める。


「何見るの?」

「好きな男子を落とす方法」

「っ!?」


 あまりの直接的すぎるタイトルに、あたしは衝撃で固まってしまった。


「アタシの好きなMetuberが恋愛テクニックを教えてくれるんだよね。比呂さんを落とす参考にしようと思うんだ」

「ど、動画だけを真に受けるのは……感心しない、よ」

「全部を真に受けるわけじゃないよ。比呂さんの好みや、アタシに合ったやり方もあるからね」


 あたしの方を振り向く唯花は、妹とは思えないほど大人びていた。


「嘘か本当か、それがわからないからって情報自体を得ようとしないのは、アタシは怠けるための理由にしか思えないかな」

「……っ」


 二年後……。唯花はそう言っていたけれど、このまま指を咥えて見ているだけだったら、その時が来る前にあっという間に比呂先輩を取られてしまうかもしれない。


『アタシ比呂さんと結婚することになったよ! お姉ちゃんもこれで比呂さんと義理の家族になれたんだから満足だよね?』

「~~っ!!」


 想像の中で唯花に煽られて、あたしは頭がどうにかなってしまいそうだった。

 ぐわんぐわんする頭を押さえながら、自然と画面を見つめる。

 可愛らしい女性が恋愛テクニックなるものをわかりやすく教えてくれていた。


「あっ、お姉ちゃんも勉強する気になったの?」

「……うん」


 唯花の隣に座って動画を見つめる。

 負けたくない。そう思えるほどには、あたしの気持ちは本物のようだった。



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