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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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62.罰ゲームだ!

「そう身構えないでください。罰ゲームと言っても、軽くデコピンするだけですよ」


 松雪さんはそう言うけれど、笑顔の性質が悪戯っ子めいているから信用できないんだよなぁ。


「さあ比呂くん。目を閉じて私に額を差し出すのです」

「わ、わかったよ」


 松雪さんはノリノリだ。そんな彼女の雰囲気が伝わってか、唯花ちゃんの目の輝きが増したように見える。

 どうせただのデコピンだ。どんなに思いっきり強い力でやられたとしても、デコピンなんだからたかが知れている……デコピンなんか怖くないぞ!

 目をぎゅっとつぶって、前髪を上げて額を差し出す。


「……」


 早くやってくれればいいのに、松雪さんはしばらく黙っていて動く気配がなかった。

 もしかして僕を焦らしてデコピンの恐怖を増幅させようって魂胆か?


「いつまで待たせるの。は、早くやってよねっ」


 そうはいくかと松雪さんに声をかける。ちょっと声が震えたのは待たされすぎて声帯が鈍ったに違いない。


「そ、そうですね。では……」

「松雪先輩、指でするの? よかったら何か道具を持ってくるよ?」


 唯花ちゃん!? 道具って何!? デコピンに道具って必要なの!?


「これなんかどう? ちょっと硬すぎるかもしれないけど」


 城戸さん!? 松雪さんに何渡したの!? ちょっと硬すぎるって何が!?


「そうですね……。あ、これなんか丁度良さそうです」


 松雪さんまで何か選び始めたぞ……。

 目を閉じているせいでどんな道具かわからない。それがまた僕の恐怖を増幅させた。


「よし、決めました」


 たっぷり時間をかけてから、やっと松雪さんが近づいてくる気配を感じた。


「では比呂くん……ちょっとだけ痛いこと、しちゃいますね」

「~~っ!?」


 松雪さんが耳元で囁いてきた。

 彼女の吐息が耳に当たって、僕は思わず声にならない声を漏らした。

 なんだこれ? なんだかよくわからないけど、ゾクゾクってしたぞ!?

 視界を閉ざしているせいなのか、彼女の声がいつもと違って聞こえる……。


「比呂さん震えてるよ? あはっ、可愛いね♪」


 反対側から唯花ちゃんの吐息が感じられる。だから近いって……っ。

 耳に息が当たる度に、背筋に変な感覚が駆け巡る。

 もしかして、僕って耳が弱いのか?


「いてっ」


 などと自分の弱点について考えていたら、額に衝撃が走った。

 痛みに目を開ければ、ものさしを持っている松雪さんの姿。


「あははっ。比呂さん痛そうにしてる」


 唯花ちゃんは僕のリアクションが面白かったのか、ご満悦な様子である。


「そのものさしを使ってデコピンしたの?」

「はい。もう少ししならせて威力を上げた方がよかったですね」


 そういう反省はいらないんだよ。

 額がヒリヒリする……。くっ、覚えてろよ松雪さん。


「よし、次の試合を始めよう。みんなも早くキャラを選んで」


 次は松雪さんに罰ゲームを受けさせてやる! 僕はいつになく熱く燃えていた。


「やる気になりましたね比呂くん」

「比呂先輩、負けたばっかりなのに偉いね」


 みんながコントローラーを握って、操作するキャラを選んでいく。


「ねえ比呂さん」

「ん?」


 ゲーム開始前に、唯花ちゃんが囁くような声で話しかけてきた。目を開けているからか、今度はゾクゾクした感覚はなかった。


「松雪先輩に勝つために……協力してあげよっか?」


 次の試合は、松雪さんが最初に脱落した。


「そんな……」


 松雪さんには悪いけれど、これは当然の結果だった。

 ゲーム開始早々、唯花ちゃんが松雪さんに集中攻撃をしたのだ。この二人だけなら互角の戦いをするのはさっきの試合で証明済みだけど、今回はそこに僕も加わっている。

 さらにこれをチャンスと見たのかわからないが、城戸さんも松雪さんへの攻撃を始めてしまった。

 完全に数的有利となった僕たちが負ける理由などなかったのである。

 ……やっておいてなんだけど、これってもうリンチだよね。松雪さんに罰ゲームを受けさせたい気持ちが強すぎて唯花ちゃんの話に乗ってしまったけど、次からはこういうことをするのはやめておこう。


「あっ」

「ちょっ、お姉ちゃん何やって──あ」


 城戸さんの自爆に唯花ちゃんが巻き込まれてしまって、姉妹仲良く場外へと吹っ飛んでしまった。

 松雪さんとの戦いで残機を減らしていた二人は、これで脱落となった。


「僕が……一位?」


 棚から牡丹餅にもほどがある勝利。嬉しいかと問われれば、かなり微妙である。


「やったね比呂さんっ。これで松雪先輩に罰ゲームできるよ♪」

「う、うん。罰ゲームだ。罰ゲーム……できるんだ!」


 唯花ちゃんとハイタッチしながら思い出す。

 松雪さんに罰ゲームをする。そのために僕は女子小学生に魂を売ったのだ。


「お、お手柔らかにしてあげてね」


 優しい城戸さんはそう言うけれど、これは松雪さん自身が始めたことだ。容赦する気はない。


「さあ松雪さん。目を閉じて額を差し出すんだ」

「ひ、比呂くんの目がなんだか怖いです……」


 松雪さんは目を閉じて、前髪を上げた。

 ……普段前髪で隠れて気づかなかったけど、綺麗なおでこだなぁ。

 それに目をつぶって無防備にしている顔。まるでお人形さんみたいに整っていて、松雪綾乃という女の子の美貌に圧倒されてしまいそうになる。


「ん」


 催促しているみたいな吐息が聞こえてきた。

 いかんいかん、ちょっと見すぎていたかもしれない。さっさとデコピンをして、さっきのお返しをしてやらないと。


「比呂さん、道具は何を使うの?」


 唯花ちゃんが僕の前に並べるのは、さっき松雪さんが使ったものさしの他にも、鉛筆やボールペンや分度器やコンパスなどだった。

 どうやら唯花ちゃんの筆記用具を全部並べているようだ。……でも、さすがにコンパスは危ないからしまおうね。


「僕は道具に頼らないよ。デコピンは自分の指でしてこそだからね」

「比呂さん……カッコいい~」

「今のカッコいいこと言ってたの?」


 僕はゆっくりと松雪さんに近づく。


「……っ」


 よく見ると松雪さんの長いまつ毛が震えていた。なんだかんだで緊張しているのだろう。

 そんな彼女を眺めていると、僕にも悪戯心が芽生えてきた。

 あくまでこれはさっきのお返しだ。

 なので、やられたことをやり返しても許されるはずだ。うん。

 松雪さんに顔を近づける。

 女の子特有の良い匂いがして、少しドキドキする……。


「優しく、してあげるからね……」

「~~っ!?!?!?!?」


 松雪さんの耳元で囁いた瞬間、彼女の身体がビクンと大きく跳ねた。

 よほど驚いてくれたのだろう。僕は松雪さんのリアクションに満足しながらデコピンをお見舞いするのであった。



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