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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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60.初めての中は緊張を隠せないよね

「比呂先輩……あたしの家に、来て……もらってもいい?」

「うん、いいよ。今日は用事もないからね」


 城戸さんのお誘いに、僕は快く頷いた。

 早速借りを返してくれというものだからちょっと身構えていたけれど、家に行くくらいお安い御用である。

 むしろ購買のパンでもおごろうかと考えていただけに、タダで借りを返せるなんて僕にとってはラッキーでしかない。


「比呂くん……警戒心がなさすぎですよ」


 なぜか松雪さんが頭を抱えながらそんなことを呟く。

 それ、僕じゃなくて城戸さんに言うセリフでは?


「突然ごめんね。唯花がどうしても比呂先輩に会いたいって言うから」

「ああ、妹さんの頼みだったんだね」


 城戸さんは妹の唯花ちゃんと仲直りできたのだった。

 なので一人暮らしをしていたアパートを引き払い、また同じ家に住んでいる。

 姉妹の空白の時間を埋められる手伝いができるのなら、先輩として喜んで身体くらい空けてやろうってもんだ。

 それにしても、唯花ちゃんが僕に会いたいとは……。


「城戸さんは家で唯花ちゃんと僕の話をしているんだね」

「えっ……と。ぶ、文化祭で唯花が世話になったお兄さんだからって……」


 文化祭をきっかけに、城戸さんは唯花ちゃんと仲直りできた。

 それまで一緒の時間を過ごせなかったのだ。お互いにとって共通の話題になるからこそ、文化祭の話をよくしているのだろう。


「それじゃあ早速城戸さんの家に行こうか。もちろん松雪さんも一緒だよ」

「え、私も一緒でいいのですか?」


 松雪さんが遠慮気味にそんなことを言う。


「女子の家に男子が行くなんていけないことだって、前に言っていたでしょ。ついて来てくれないと僕が困るよ」

「わ……っ!?」


 逃がさないように松雪さんの手を握る。

 僕一人で行ったとしても、当たり前だがハレンチな行いをするはずがない。

 だけど、それを口で言ったところで信じてもらえるかはまた別の話だ。

 城戸さんの信頼を得られていないとは思っていないけど、松雪さんが一緒に来るか来ないかで、安心感が全然違うはずだ。


「……」


 そう思って城戸さんの顔を見ると、安心感とは無縁なじとーっとした目をしていた。

 彼女の目線は、僕と松雪さんの繋がれている手に注がれているようだった。


「……」


 しばらく観察して、ああと納得する。


「城戸さんも手を繋ごっか」

「ふぇ?」


 空いている手を差し出してみれば、城戸さんが目を見開いた。

 僕たち三人は仲良しだ。

 それは僕の独りよがりな勘違いではない。松雪さんが嫉妬したみたいに、一緒じゃないと落ち着かないのだろう。

 文化祭で助け合ったことで、絆のようなものが芽生えたのだ。僕はそう信じている。


「う、うん……比呂先輩が、い、いいなら……」


 城戸さんはおずおずと僕の手を握った。


「比呂くんはまったく下心がなくこんなことをしていますからね……恐ろしい人です」

「うん……比呂先輩恐ろしい……」

「えっ!? 僕何か怖がらせることしちゃったの?」


 松雪さんも城戸さんも、顔を逸らすだけで教えてくれなかった。

 ただ、どちらも耳を真っ赤にしていたので、言いにくいことであるのは確かなのだろう。

 反省。よくわかんないけど、とりあえず反省しておこう。



  ◇ ◇ ◇



 三人で手を繋いで歩くのは、行き交う人に迷惑をかけるので途中で離れた。


「着いた」


 以前まで城戸さんが住んでいたアパートとは逆方向。

 それでも学校から徒歩で来れる場所に、城戸さんの家があった。


「こ、ここに住んでるの?」

「うん」


 城戸さんはあっさりと頷く。

 目の前にそびえたつのは、何階建てかぱっと見では数えられないほど高い建物……。

 タワーマンションと呼ばれるそこは、僕には縁のない建物だった。

 ちょっと古そうなアパートだったとはいえ、城戸さんを一人暮らしさせられるだけの経済力があったのだ。

 これくらいは想定しておくべきだったかもしれない。


「比呂くん? 何固まっているのですか?」

「ぼ、僕は緊張なんてしていないよっ」

「……」


 しまった。初めてタワマンの中に入るのかと身構えすぎて変なことを口走ってしまった。

 あ、松雪さんが優しく見守る目になった。


「緊張しなくてもいいのですよ。私がついていてあげますからね」

「こ、子供扱いしないでよ……」


 からかわれているのはわかっているけど、緊張しているのは本当だから言い返す言葉に力がなくなってしまう。

 全部タワマンが悪いのだ。僕を見下ろすこいつが全部悪いのだ。


「比呂先輩、松雪先輩。こっちだよ」


 城戸さんがタワマンの中に入ろうとしていたので、僕は慌てて追いかけた。


「うわぁ……」


 エントランスは広くて明るくて、ちょっと圧倒されてしまう。

 外からでも中からでも僕を圧倒するとは……。さすがはタワマン、侮れない。


「ふふっ。比呂くんを見ていると飽きませんね」

「それどういう意味?」


 松雪さんは笑うだけで教えてはくれなかった。くそう、またからかわれている気がする。


「まあ、緊張しているのは比呂くんだけではないようですけれど……」


 城戸さんとはぐれないように、彼女の背中をじっと見つめながらついて行く。

 エレベーターに乗って十八階へ。上昇していくにつれて、僕の緊張も上がっていくように感じられた。


「こ、ここだよ。ここがあたしの……家」


 そして、ついに城戸さんの家の前に辿り着いた。

 彼女がカギを開けてドアを開くと、中からドタドタと足音が近づいてきた。


「会いたかったよ比呂さんっ♡」

「うわっ!?」


 城戸さんによく似た女の子、彼女の妹の唯花ちゃんが僕の胸に飛び込んできた。

 突然のタックルだったけど、相手は小学生。僕程度の力でも抱き留められた。


「わぁ。アタシをこんなにも力強く受け止めてくれるなんて、比呂さんたくましい~♡」


 甘えたい年頃なのだろう。

 唯花ちゃんは僕の胸ですりすりと頬ずりしていた。小動物に懐かれている気分だ。


「……」

「比呂さんの良い匂い~……はっ!?」


 僕に甘えていた唯花ちゃんが、急に声を上げて固まる。

 その視線の先には、あっけに取られたといった様子の松雪さん。


「ひ……」

「唯花ちゃん?」

「比呂さんが知らない女を連れて来たぁーーっ!?」


 早くもはしゃいでばかりの妹の姿に、城戸さんは恥ずかしそうに両手で顔を覆うのであった。



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