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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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59.彼女の味方でいたい

「実は私も……最近告白されるようになりまして」


 つい先日、松雪さんがそんなことを困ったように言っていたのを思い出す。

 学校で一番可愛い女子と評されている彼女だけど、高校ではあまり告白されたことがないらしい。

 けれど、それは松雪さん自身が告白されないように振る舞った結果なのだとか。


「私、恋というものがわからないんです……」


 松雪さんが僕に切り出してくれたこと。

 みんなとの違いに苦しんでいて、たくさん傷ついて、自分を責めていて……。

 誠実に接してきても、どうしようもなく「悪女」にされてしまう。


「実はね、松雪さんにその……大事な話があるんだ」


 目の前の男子は恥ずかしそうに、でも期待に満ちた目で松雪さんを見つめていた。


「……っ」


 松雪さんは顔を強張らせる。

 まるでこの後の展開がわかっているかのように、緊張で固まってしまっていた。

 そんな彼女の様子に気づかず、彼は前のめりになって口を開く。


「俺は松雪さんのことが──」

「僕が隣にいるのに、いきなり松雪さんに大事な話とやらを切り出すなんて、君は何を考えているの?」

「……は?」


 まさか本当に僕の存在に気づいていなかったのか。松雪さんに告白しようとしていたであろう男子が目を見開く。

 さすがに眼中になかったなんてことはないよね? きっと緊張しすぎて視野が狭くなっていたんだ、うん。

 告白を止められる形になったからだろう。彼は不機嫌そうに僕に目を向ける。


「……あのさ、君こそ空気読んでくれる?」

「空気は読むものじゃないだろ。君は変なことを言うね」


 ピシッと。彼のこめかみに青筋が立った。

 目の前の彼のことは、外見しか知らない。

 泉くんほどではないけど、顔が良い方で。泉くんほど背は高くないけど、それなりに身長があった。

 よくよく考えてみると、泉くんってレベルが高いんだよなぁ。もしイケメンランキングなんてものがあれば、きっと上位に食い込めるだけのポテンシャルを持っているのだろう。


「これから大事な用があるんだ。君には関係ないからどっか行っててもらえるか?」


 彼はこめかみに青筋を立てながらも、にこやかに僕を追い払おうとする。

 松雪さんの手前、怒鳴ったりできなかったのだろう。

 それでも「邪魔者は去れ!」というニュアンスをひしひしと感じられた。


「残念だけど、こっちも大事な用事の最中なんだ」

「は?」


 何か言われるよりも早く、松雪さんの手を握った。


「ほら、急ぐよ松雪さん」

「え? あ、ひ、比呂く……」


 松雪さんの困惑した声が尻すぼみになる。

 いや、急に走り出した僕について行こうと、それどころではなくなっているだけなのかもしれなかった。

 背中に男子の声が聞こえた気がしたけど、よく聞こえなかったので足を止めなかった。


「ひ、比呂くん……どうして……」


 人通りのある廊下に出たので手を放す。

 松雪さんは息を整えながら、僕のさっきの行動について尋ねてきた。


「僕は、松雪さんが悪女って呼ばれるのが納得いかない」

「え?」


 僕がボクシングを始めようと思ったのは、松雪さんが元カレに逆上されても守れるようになるためだ。

 だけど、そもそもそんな状況になってほしくないのだ。

 告白をされて、受けようが断ろうが恨まれて。周りからは嫉妬されて……。

 どうしたらいいのかわからなくて。答えも見つからなくて。

 だけど相談もできなくて。自分の心に溜めるだけ溜めて、苦しそうにしている彼女の表情なんか……僕は見たくないのだ。


「頼りにならないかもしれないけど、僕は絶対に松雪さんの味方だから。それだけは信じてほしい」

「……はい」


 昼休みの終了を告げるチャイムが鳴った。

 このまま松雪さんに告白しようとした男子から逃げきれそうで安堵する。

 あの男子が追いかけてきたらどうしよう。そんな風にビビっていたことは、松雪さんに知られずに済みそうだった。



  ◇ ◇ ◇



「松雪さんがまた告白をされるようになった理由か……」

「何か心当たりでもあるのですか比呂くん」


 放課後。帰り支度をしながら考え事をしていたら、松雪さんがトコトコと僕の席に来た。


「確かに、松雪さんは以前に比べて話しやすくなったなと思って」

「そんなに変わりましたか?」


 ものすごい変化かと言われれば、そうでもないように思える。

 元々松雪さんはクラスメイトに分け隔てなく話しかけるし、他のクラスだろうが男女関係なく顔が広い。

 松雪さんからすれば知り合いが多いだけで、友達はあまりいないと言うんだろうけど。


「うーん……話しやすくなったというか、一緒にいて心地良くなったのかな」


 そうだ。一緒にいて落ち着くんだ。

 どうでもいいことをしゃべったり、からかわれたりするのも楽しいけど、黙っていたとしても苦にならないというか。

 たぶん、そういう雰囲気になるのが知り合いと友達の境界線なのだろう。


「~~……っ」


 そんなことを伝えてみると、松雪さんは耳を赤くして俯いてしまった。

 ちょっと心配になって顔を覗き込もうとすると、手をぺちっと当てられて視界を奪われる。


「あの、前が見えないんだけど?」

「み、見なくていいんですっ」

「見えないと家に帰れないんだけど……」

「私が責任を持って比呂くんを送り届けますよっ」


 何をそんなに慌てているんだか。

 そんなことよりも松雪さんの悪女の噂対策をしなくては。何かいい案がないかと考えを巡らせていると、スマホの通知音が鳴った。


『今日の放課後、借りを返してもらえる?』


 城戸さんからのメッセージだった。返済の催促が早すぎるよ……。



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