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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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58.友情の証

 僕は友達がいなかったなりに、友達との接し方というものを観察してきた。

 親しい友人ほど気軽にボディタッチするものらしい。

 肩を組んだり、思いっきり背中を叩いたり、頭をわしゃわしゃと撫でたり。

 そんな風にして笑い合っている人たちを見ていると、仲が良くて羨ましいなと思ったものである。


「んっ……」


 泣きそうになっている松雪さんに、笑顔を取り戻してほしい。

 そんな考えから彼女の頭を撫でてみた。


「……」


 見ているから知っていたつもりだったのに、僕の想像を遥かに超えるほど髪の毛がサラサラしている……。

 あまりの手触りの良さに、夢中になって彼女の頭を撫で続けてしまった。

 頭ちっちゃいなぁだとか、形が良いなぁだとか、余計な考えに囚われそうになる。


「ふ……あ……」


 夢中で撫で続けていると、松雪さんが吐息を零す。

 松雪さんの表情はくすぐったそうでありながらも穏やかで、やはり頭を撫でるというのは効果的だったのだと確信する。

 僕が見たことのあるのはもっと乱暴な撫で方だった気がするけれど、経験がないのだからこれでも精一杯だ。

 慣れてないからか顔が熱くなってきた。

 そろそろいいかな? 松雪さんも気持ち良さそうな顔をしているから機嫌を直してくれたのだろうし。


「あ……」


 頭を撫でていた手を離すと、松雪さんは切なげな声を漏らした。

 呆けた顔をしていたけれど、その表情がみるみると驚きに変わっていく。


「ふあ……え、あ、ひやぁっ!?」


 そして、ついにはのけ反って悲鳴を上げる松雪さん。


「危ないっ」


 松雪さんがのけ反った拍子に倒れそうになったので、咄嗟に肩を抱いて止める。


「~~っ!」


 僕も焦ったけど、松雪さんも大分慌てたのだろう。顔が真っ赤になってあわあわしていた。

 弁当をひっくり返さずに済んでよかった。姿勢を正して気を取り直す。


「あのさ、僕……ボクシングジムに通い始めたんだ」

「え?」


 友達に寂しいと思わせてしまう秘密なら、ない方がいい。


「もしも松雪さんが元カレに逆上されたらと思うと、今の僕じゃ守り切れないから。だから、少しでも強くなって安心してもらいたかったんだ」

「私の……ために?」


 秘密を明かすのは、弱さをさらしているようで恥ずかしい……。

 でも松雪さんだって、話しづらいはずの過去を教えてくれたのだ。

 友達として、彼女とは対等でありたいと思った。


「もっとわかりやすい結果が出てから話すつもりだったんだ。今言ったところで僕は何も変わっていないし、嘘っぽくなると思って……。それに、たくましくなった僕を見てもらって、松雪さんに驚いてほしかったんだ」


 口にしてみれば、秘密なんて言っても僕の見栄でしかなかった。


「本当は城戸さんにも秘密にするつもりだったんだけど、不幸な事故というか……彼女にはバレちゃってね。昨日は自分も体験してみたいって言うから案内しただけなんだよ」


 言い切ってから、一息つく。

 全部話してみればこんなものである。

 こんなことくらいで、松雪さんを仲間外れのような扱いをしてしまった。

 僕は本気で反省しなければならない。

 自分がされて嫌なことを人にしてしまう。それは無自覚であろうとも、最低な行為だろうから。


「そう、ですか……」


 松雪さんがぽつりと呟く。

 あまりにも大したことのない理由だったから、呆れてしまったのかもしれない。


「ごめん松雪さん。変な意地を張って寂しい思いをさせた。今度何か埋め合わせをするよ」

「……」


 松雪さんの大きな目が、僕をじっと見つめる。

 泣きそうになっていたからか、その目は潤んでいて。色気のようなものを感じてドキドキしてしまった。

 筋肉よ、今は反応しないでくれ。男らしくなっているのは嬉しいけど、今は真面目な話をしているんだ。


「まったく……比呂くんは仕方のない人ですね」


 松雪さんが笑ってくれる。

 その拍子に目に溜まっていた涙が零れた。真珠のように綺麗な粒で、彼女の笑顔をより引き立てた。

 涙を拭いてもらおうとポケットに手を突っ込むが、ハンカチは尻に敷いているのだったと思い出す。


「松雪さんだって。こんなにも子供っぽい嫉妬心を見せられるとは思わなかったよ」

「わっ……!?」


 仕方がないので、指で松雪さんの涙を拭った。

 しばらく固まっていた彼女は、再起動したかと思えば僕の肩を思いっきり叩いた。


「ひひひ、比呂くんは……もうっ。もうもうもうもーーっ!」

「もーもーって、牛かな?」


 勢いに任せてか、何度も肩をバシバシと叩かれる。

 でも、それが友情のボディタッチだとわかっているから。ちょっと痛みを覚えながらも嬉しかった。


「さあ食べましょう! すぐに食べましょう! 早くしないと昼休みが終わってしまいますよ!」

「そうだね。いただきまーす」


 松雪さんの手作り弁当は美味しかった。

 それを伝えると彼女はまた固まってしまって。動き出したかと思えば、自分の分のおかずまで僕に食べさせようとしてきた。


「口を開けてください。ほら、もっと食べないと大きくなれませんよ」

「ちょっ、まだ口に入ってるんだってばっ──むぐっ」


 松雪さんにからかわれる。

 それが彼女が元気な証拠に思えて、なんだかんだで安心している自分がいた。



  ◇ ◇ ◇



 昼休みが終わる前に、僕たちは教室に戻ろうと階段を下りていた。


「松雪さんっ」


 その途中で、出くわした男子に声をかけられる。


「はい? あなたは……」

「丁度松雪さんを探してたんだ。す、少しだけ……時間をもらえないか?」


 恥ずかしそうに頭をかく男子の態度に、僕はピンときた。

 もしかしてこの人、今から松雪さんに告白する気か?

 いやいやいや、僕が隣にいるんですけど?

 僕の心のツッコミが届くはずもなく。彼の目には松雪さんの姿しか映っていないようだった。



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