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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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35.先輩は仕方がない

 城戸さんの仕事が終わったので、ミスコンの時間まで自由にぶらつくことになった。


「メイド服は着替えなくてもいいの?」

「せっかく矢沢先輩が作ってくれたから。周りにアピールしたい」


 城戸さんは「フンッ!」と言って胸を張る。たぶんメイド服を強調させているつもりなのだろうけど、迫力のありすぎるおっぱいが一番強調されていた。

 文化祭だけあって、他の人も様々な衣装で歩いているのを見かける。クラスの出し物の宣伝も兼ねているのだろうし、実際に彼女のメイド姿は注目を浴びていた。


「松雪先輩は?」

「友達と回っているんじゃないかな。クラスの仕事が終わったらすぐにどこかへ行ったみたいだから」


 松雪さんは人気者だけあって、友達が多いのだ。僕たちには想像できないような付き合いというものがあるのだろう。

 お祭りともなれば引っ張りだこになるのだろう。僕にはわからないような青春を楽しんでいるに違いない。


「じゃあ、矢沢先輩はあたしに付き合ってくれるの?」

「まあ、そうだね」


 むしろ城戸さんがいなければ、僕はトイレにこもって時間を潰すしかなくなる。つまり去年と同じ文化祭ってことだ。

 今回は準備からちゃんと関わっていたこともあってか、そうやって時間を潰すのは抵抗があった。

 できるだけのことをして文化祭を迎えたのだ。できれば当日も楽しみたい。


「城戸さんはどこか行きたいところはある?」

「ある。いっぱいある。先輩と回りたいところ、たくさん考えてたから」


 ちょっと興奮気味の城戸さん。

 よほど文化祭を楽しみにしていたのだろう。彼女にとっては高校で初めての文化祭だもんね。中学までとは違った賑やかさに、興奮が増しているのかもしれなかった。


「それなら城戸さんが行きたいところを、片っ端から行ってみようか」

「うんっ」


 子供のようにはしゃいでいるのか、城戸さんは僕の手を取って走り出した。


「わっ、ちょっ!?」


 急に引っ張られたので、体勢を崩さないようにするのが大変だった。

「待って」と声をかけようとも思ったんだけど、嬉しそうにしている城戸さんを見ていたら、止めるのも野暮だろうと口を閉じた。

 今日は楽しい文化祭。多少ハメを外しているくらい、大目に見てもらおう。



  ◇ ◇ ◇



「そこのお二人さん。お化け屋敷に寄って行かないか?」


 城戸さんとクラスの出し物や部活の屋台などを回っている途中で、チャラそうな男子に呼び止められた。

 客引きに引っかかってしまったか。こういうのって断りづらいんだよなぁ。


「って、城戸か? メイド服が目立ってたから思わず呼び止めちゃったよ」

佐野(さの)先輩……」


 あれ、城戸さんの知り合いだったのか?

 教室を見れば「二年D組」とあった。学年が違うのに、城戸さんにも僕と松雪さん以外の知り合いがいたんだ……。


「そういやメイドカフェをやるって言ってたっけ? へぇ、似合ってんじゃん」

「どうも」


 自然体で女子に褒め言葉を!? こ、これがリア充男子の実力なのか……っ!

 というかこのチャラ男子。よく見ればこの間教室に来て松雪さんとしゃべっていた人だ。

 僕とは真逆の陽キャなのだろう。人気者の松雪さんだけではなく、僕と同じ陰キャのはずの城戸さんにまで気軽に接しているのがその証拠……。本物の陽キャは相手が誰だろうと場を明るく照らしてしまうらしいからな。


「……」


 なんだろう。変な感じだ。胸がもやもやする……。


「もうちょっとしたらミスコンの参加者が集まらないといけない時間だろ? そろそろ体育館に行った方がいいんじゃないのか」

「むぅ……。もう少しだけ先輩と遊びたかったのに」


 なんか、仲良さそうな雰囲気。

 二人の親しそうなやり取りを眺めていると、疎外感のようなものに襲われる。僕、ここにいていいのか?

 なんて考えていると、チャラ男子が僕の方を向いた。いかにも「自分に自信があるぜ!」みたいな目を向けられると、なんだか萎縮してしまう。


「君が矢沢くん? 松雪から聞いてるよ。俺は佐野(さの)将隆(まさたか)ってんだ。よろしくな」

「あ、ああ……よろしく」


 流れるように握手される。これがリア充の距離の詰め方か!?

 ていうか松雪さんに聞いてるって何を? 急に戸惑うことばかりで、ちょっとしたパニックだよ。


「何やってんのマサー?」

「もしかしてナンパしてんの? いけないんだー。カノジョに報告してやろう」

「ぎ、銀髪美少女メイドだと……っ!? 最高すぎる……神はここにいたのか……!」


 佐野くんの友達なのだろう。彼と似たタイプのチャラそうな男子たちがこっちに向かって歩いてきた。

 うっ……。こ、これはダメだ。陽キャ集団に囲まれると、陰キャは行き場を失ってしまうっ。


「そ、そろそろ城戸さんを体育館に送り届けないとだからっ。じゃ、じゃあね」

「お、おう? 頑張って来いよー」


 僕は城戸さんの手を取って、陽キャ集団から脱出した。

 今度は僕が小走りで城戸さんを引っ張る。


「や、矢沢先輩っ」

「あ、ごめんっ」


 せっかく城戸さんが親しい先輩と話していたのに、僕が勝手なことをして中断させてしまった。


「ミスコンのこともあるから……それで、その、急がなきゃって焦っちゃって……」


 我ながら言い訳がましい……。

 何をやっているんだ僕はっ。今のは城戸さんのためではなかった。

 僕の都合でしかなかったのに、城戸さんを付き合わせてしまった。


「……違う」

「先輩?」


 誤魔化したり躊躇ったり、そんなことをして後悔するのはもうたくさんだ。

 僕の必要のないプライドで、関係がこじれてしまうのはもう嫌だったのだ。


「ごめん城戸さん。城戸さんが他の男子としゃべっているのが嫌だったから、自分勝手に逃げちゃったんだ。せっかく城戸さんが仲良しの先輩と話していたのに……本当にごめん」


 友達が少ないものだから、取られるのが嫌だという気持ちが表に出たのだろう。

 こんなの子供の独占欲だ。心の中で松雪さんのことを子供っぽいとか思っていたけど、これじゃあ人のことは言えないな。


「~~っ!」


 恥ずかしい気持ちに耐えながら顔を上げれば、城戸さんの顔が真っ赤になっていた。


「先輩ったら……もうっ。し、仕方ないんだから……」


 仕方ない奴でごめん。

 後輩に呆れられる先輩って一体……。

 自分が少しはマシな奴になれていたと思っていたのに、どうやらまだまだのようだった。



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