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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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34.文化祭開始ィッ!

 文化祭は二日間にわたって行われる。

 一日目は学校内だけで行われ、二日目は一般公開されるのだ。

 僕たちが目的にしているミスコンは、二日目の閉会式に集計結果が発表される。

 今日と明日、一回ずつミスコン参加者のアピールタイムが設けられている。優勝するためにも、城戸さんには頑張ってもらわなければならなかった。


「段取りの最終チェックをしておこう。気になっていることがあったら今のうちに言ってほしい。ゲームに使う小物は問題ない?」


 まずは自分のクラスの出し物をちゃんとしておかなければ。こっちで問題があったら、城戸さんのことどころじゃなくなるからね。

 当日を迎える前に何度も練習したこともあってか、とくにみんなから不安を感じられなかった。

 トラブルは不確定なものだからなんとも言えないけど、とにかく後はやってみてその場で対応していくしかない。


「比呂くんはすっかりクラスのリーダーが板につきましたね」

「リーダーって……茶化さないでよ松雪さん」


 発案者だからみんなに指示を出したりはしていたけど、別にリーダーになったつもりはない。実質的にまとめ役をしていたのは松雪さんの方だ。


「茶化してなんかいないですよ。みんな比呂くんのことを認めたからこそ、こうやって指示通りに動いているのですから」


 文化祭開始直前。みんな最後のチェック作業に入っていた。

 誰一人としてサボろうという人はいない。このクラスが一致団結をしているなんて、初めてかもしれなかった。


「それは松雪さんの力があったからだよ。僕一人だったら話を聞いてもらえたかも怪しかった」

「私にはクラスのみんなを同じ方向に向かせるだけの力はないですよ。謙遜する必要はありません。比呂くんの頑張りは、みんなに伝わっていますから」

「……なんか、そう持ち上げられると何か裏がありそうで怖いよ」

「ソンナコトナイデスヨー」

「急に棒読みにならないでよっ!」


 松雪さんの言動は、僕をリラックスさせたいのか緊張させたいのかわからなくなるな。

 そんなことをやっているうちに、文化祭開始の放送が聞こえてきた。

 クラスや部活の出し物に参加する人。自由時間を楽しむ人。早くも校内がガヤガヤとした賑やかな雰囲気に包まれる。

 初日の午前中、僕はクラスの出し物に参加する。

 トラブルが起これば他の時間でも呼び出されるかもしれないけど、顔を出すのはその時間帯だけでいい。二日目に関しては、予定通りなら完全フリーである。


「午後から体育館のステージでミスコン参加者の紹介があるんだっけ?」

「そうですよ。この二日間のアピールで決まりますから、ここでガツンッと紬さんの印象を残してやりたいものですね」


 松雪さんはそう言うけど、票を入れたい人は本番前に大体決まっているものだろう。

 城戸さんの悪い噂はかなり緩和されているらしいけど、それがどこまで投票に繋がるか……。わからないからこそ、一般来場者からの投票が含まれていく二日目が大事に思えた。


「気負いすぎても仕方がないですよ。比呂くんも紬さんのことばかりではなく、文化祭を楽しんでくださいね」

「あ、うん」


 文化祭を楽しむ……。

 陰キャにとって文化祭が楽しいイベントかと問われれば、かなり微妙としか言えない。

 友達がたくさんいれば楽しいのだろうけど。親しい人が少ない僕のような奴は、自由時間があってもどこに行けばいいのかわからなくなってしまう。


「……」

「比呂くん?」

「なんでもないよ。城戸さんのことをやるにしても、まずはこの午前中の仕事をしてからだね」


 一応、美月には僕がクラスにいる時間帯をメッセージで伝えてある。……返信はなかったけど。

 リアル脱出ゲーム。どこぞのイベントのCMを見た美月が「やってみたい!」と言っていたのを覚えている。

 だから、泉くんと一緒にでも楽しんでもらえたらと……。そう考えていたのに、喧嘩なんかしてしまったら来てもらえないかもしれない。

 顔を合わせづらいのなら、せめて僕がいない時間にでも遊んでくれたらと思うんだけど……。まだ怒っていたら来ないかなぁ。


「おっ、脱出ゲームってここか」

「動画で見たことはあったけどさ、実際にやってみたかったんだよねー」

「協力プレイする感じ? 男女が密室に放り込まれるみたいな認識ってことでいいんすか?」


 脱出ゲームに興味を持っていた人が多かったのだろう。早くも人がどんどん集まってきた。

 初日の午前中は時間帯的に一番楽かと思っていたけど、そうでもなかったと、僕は慌ただしく動いていたのであった。



  ◇ ◇ ◇



 午前中の仕事を終えて、訪れたのは城戸さんのクラスだった。


「城戸さんは上手くやれてるのかな?」


 かなり心配だ。気持ちはさながら子供の授業参観に行く親の気分。

 城戸さんのクラスの出し物はメイドカフェだ。

 メイド服を着るということは、城戸さんは給仕係ってことだよな。……本当に大丈夫かな?

 城戸さんが所属する一年F組の教室を、こっそりと覗いてみた。


「おお……」


 可愛らしく飾り付けされた教室で、可愛らしいメイドさんが笑顔を振りまいていた。

 その中でも、銀髪長身美少女が目立っていた。他のメイドさんと違って、笑顔ではないんだけども。

 というか、他の女子はミニスカートのメイド服ばっかりだな。

 城戸さんに任されたから勝手にロングスカートにしちゃったけど、もしかして失敗したか? 彼女だけやけに注目されているし。


「あれが噂の城戸って女子か? メイド服すげえ似合ってんじゃん」

「つーかあのメイド服、レベル高ぇぞ……。あれを作った奴、なんて繊細な仕事しているんだ」

「銀髪クール系美少女メイド……。僕が理想としていたメイドさんはここにいたんだ……。ここに来て本当によかった……」


 客の男子連中がひそひそと何か話している。「美少女だけどメイド服が似合わねえ」みたいなこと言われていたらどうしよう……。

 責任を感じていると、城戸さんと目が合った。

 その瞬間、表情が乏しいながらも明らかに雰囲気が変わった。ほんの少しだけ口元を綻ばせた城戸さんが、真っ直ぐ僕の方へと駆け寄ってくる。


「城戸さんが走った!?」

「城戸さんが笑った!?」

「あのやる気のなかった城戸さんが……自らお客様を出迎えに行った、だと?」


 なぜか城戸さんが僕の目の前に来るだけで、他のメイドさんがざわついていた気がする。


「来てくれたの?」

「まあ、ちゃんと仕事できているかなーって、様子を見にね」

「もちろん。矢沢先輩が作ってくれたメイド服にかけて、ちゃんとご奉仕するよ」


 城戸さんは両手でスカートを摘まむと、「見てて」と言った。

 そして、普段では見せないような穏やかな笑みで、優雅に深く礼をして見せてくれる。


「お帰りなさいませご主人様。お風呂にする? お食事にする? それとも……あ・た・し♡」

「待て。メイドさんじゃない台詞を混ぜちゃダメだろ」

「今のは矢沢先輩専用だからセーフ」


 城戸さんは謎の理論を持ち出した。ちょっと意味がわからない。

 ……いや、わかったぞ。つまり、僕ならからかいやすいってことか。陰キャは陰キャしかからかうことができないからな。

 冗談を言って僕をうろたえさせようとしていたんだろうけど。ふっ、甘いな。僕は後輩に簡単に振り回されるような男子じゃないんだよ。


「僕専用って……適当なこと言って遊ぶんじゃない」

「おお……っ」


 城戸さんの頭に軽くチョップする。僕の方が身長低いけど、これくらいは届くんだよ。


「「「あの城戸さんに気安く触った!?」」」


 教室がざわりと揺れて、僕は思わずびっくりした。

 もしかして、メイドさんへのお触りは禁止でしたか?

 禁止事項に触れたことで、怖い人が出てきやしないかとビクビクしてしまう。先輩なのに、後輩にビビってる僕って一体……。



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