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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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28.文化祭の出し物

 文化祭にはいい思い出がない。


 今までクラスに馴染めてこられなかった僕が、みんなと強制的に団結させられる行事。

 急にそういう空気感に放り込まれてもどうすればいいかわからない。別に仲良くなったわけでもないので、仕事だけ振られて終わりだ。

 しかも文化祭に至っては、放課後も学校に残って準備に勤しまなければならない。拘束時間が長いばかりで、みんなの輪の中に入れない僕は、一人で黙々と作業するだけだった。

 美月が同じクラスだった時は少しマシだったけど……。でも彼女には他に友達がいて、やっぱり僕は輪に入れず無心で時間が過ぎ去るのを待っていたものだ。


「早く終われよ」


 そんなことばかり願っていた気がする。

 我ながらなんという根暗思考なのだろうか。文化祭で活躍したい、なんて考えたこともなかった。

 だけど、今回は文化祭をいかにやり過ごせるかを考えるのではない。

 城戸さんをいかに文化祭で人気者にできるか。そのためなら、僕は文化祭に心血を注ぐ覚悟である。


「えーと……二年A組の出し物ですけど、どうしますかー?」


 クラス委員長の声が教室に空しく響く。

 僕のクラスは意欲を持って行事に臨むような、そんな盛り上がりのあるクラスではない。

 他のクラスはすでに出し物を決めて準備に取り掛かっているところもあるというのに、なんとも消極的なものである。まあ僕が言えたことではないけど。


「じゃあメイドカフェでいいよ。せっかく松雪さんがいるんだから、クラスの強みってやつを前面に押し出していこうぜ」


 陽キャ男子の軽い発言で、男女で賛否が分かれる。

「それいいな!」と盛り上がる男子たち。

「私たちを引き立て役にする気?」と怒る女子たち。

 普通に意見を出してくれればいいものを、松雪さんを主役みたいに言うから女子からの反感を買うんだよ。


「それなら男女逆転すればどうですか? 男子がメイド服を着るのです。とっても可愛いと思いますよ」

「それいいね」


 松雪さんが代案を出すと、今度は女子が賛成の声を上げた。


「いやいやいやっ、それはあり得ないでしょー!」

「俺らのメイド姿とか誰も喜ばねえって」

「ですよねー」

「言った本人が肯定するんかーい!」


 教室中が笑いに包まれる。

 松雪さんは代案を出したというより、男女のギスギスしかけた空気を入れ換えたのだろう。

 きっとそうなのだ。だから松雪さんが期待のこもった目を僕に向けているのは、絶対に気のせいだ。僕のメイド姿こそ、笑いすら取れなくて誰も得をしないんだから。

 さて、仕切り直しだ。そんな空気が教室に広がる。

 できれば当日は、あまりクラスの出し物に参加しなくてもいいようなものにしてほしい。

 まだ城戸さんを活躍させるという作戦をちゃんと練られたわけじゃないけど、彼女をサポートできる態勢にはしておきたい。

 僕はすっと手を挙げる。


「あ、えっと……そ、そこの君っ」

「……」


 クラス委員長に名前を憶えられていなかった……。

 まあいい。これくらいは想定内だ。

 席を立つと、クラスメイトの視線が僕に集中した。


「……」


 人に注目されるのは緊張する。

 変な汗をかいたり、声がちゃんと出なかったりする。何が恥ずかしいのか顔が赤くなったりもする。

 それらが改善されたわけじゃないけど、人任せにするばかりではなく、自分から望む結果になるようにと動いてみたいと思った。


「脱出ゲームとか、どうかな?」


 静まり返る教室。

 これが松雪さんなら、すぐに反応があるんだろうけど……。僕だとこんなものである。

 この空気に耐えられない。そう思った時、ちらほらと声が上がってきた。


「脱出ゲームってどんなの?」

「へぇ、面白そうじゃん」

「準備が面倒くさくないか?」


 クラスメイトの声は様々だ。賛否どちらにも偏ってはいない感じ。


「いいですね脱出ゲーム! 私はやりたいです!」


 ここで大きな声を上げてくれたのは松雪さんだった。


「俺もやりたいと思ってた」

「いいよね脱出ゲーム」

「謎解き要素があると面白くなりそう」


 彼女の影響力もあり、クラスの意見が一気に賛成へと傾いていく。

 さすがは松雪さん。これが人気者の力ってやつなのだろう。


「えーと……じゃあ出し物は脱出ゲームでいいですか?」

「「「はーい」」」


 賛成多数。僕の案が通ってしまった……。

 なんだか変な感じだ。

 初めて意見が通った。というか初めてみんなの前で意見を出した。

 目的があったから行動したわけで。それも松雪さんが協力してくれなかったら却下されていた可能性もあったわけで。

 でも……文化祭、頑張らないといけないなと思った。



  ◇ ◇ ◇



 昼休み。城戸さんのクラスはどんな出し物をするのか聞いてみた。


「あたしのクラスはメイドカフェだって言ってた」

「……」


 ……被らなくてよかった。

 それにしても城戸さんのメイド姿か……。

 肩が触れ合う距離にいる城戸さんを、横目で盗み見る。

 銀髪でスタイルのいい長身女子。こんなモデルさんみたいな美少女がメイド服なんか着てしまったら、一体どんな破壊力を生み出すのだろうか?


「……」


 み、見たい~~っ。べ、別にやましい気持ちはないんだけど、メイドの城戸さんを見たくて仕方がなかった。

 あれだよ。城戸さんは可愛い格好をしているだけで人気者になれそうだし、その研究のためにも一目見ておかなければならないしさ。


「先輩に見せてあげるね」

「何を?」

「あたしのメイド姿。似合うって自信あるから」

「自分で言うのかよ」


 城戸さんはフフンと上機嫌に笑った。

 自分の過去を吐き出して、たくさん泣いたからだろうか。城戸さんの印象が少しだけ変わった気がする。


「……」


 パンを食べながら、思ってしまう。

 たぶん、城戸さんのメイド姿を想像したからだろう。

 松雪さんのメイド姿を見てみたかったなぁ、と。ちょっと残念に思ってしまった。



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