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僕が先に好きだったけど、脳破壊されて訳あり美少女たちと仲良くなったので幼馴染のことはもういいです  作者: みずがめ


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27.秘密の作戦会議

 夜。僕はとある公園を訪れていた。


「待っていましたよ比呂くん」


 全身黒ずくめスタイルの松雪さんが僕を待ち構えていた。特徴の綺麗な長い黒髪がまとめられて帽子に隠れているからか、かなり印象が違って見える。


「例のブツは?」


 その言い方だと変な取引しているみたいに聞こえちゃうからっ。


「甘いチョコレート類を買ってみたよ」

「素晴らしい。さすがは比呂くんですね。さあ、こちらのベンチに座ってください」

「どうも」


 どこが「さすが」なのかはわからなかったけど、とりあえず促されるままベンチに腰を下ろした。

 月に一度。松雪さんは親に内緒でお菓子を食べる日があるらしい。

 今日がその日ということで、こうして以前彼女とお菓子を食べた公園で待ち合わせしたというわけだ。わざわざ呼び出されたのは謎ではあるけれど。


「私はポテトチップスです♪」

「だと思ったからチョコにしたんだ」


 互いにお菓子を持ち寄って、パーティーがしたいとの要望だ。

 それにしては夜の公園という場所と時間帯のチョイスがどうかと思うが……。いくら親に秘密にしたいからって、女子なんだから危機感を持ってほしい。


「紬さんの件は……そっとしておくのがベストだと思いますよ」


 松雪さんはポテチの袋を開けながら、神妙な声で言った。

 城戸さんが自分の過去を明かしてくれた。

 あれから僕たちは彼女が泣き止むまで傍にいた。話の内容が重たいだけに、帰りは無言になってしまった。

 松雪さんも慎重に考えていたのだろう。僕も、妹さんとの仲については時間が解決してくれるのを待つしかないと思う。


「でも、なんで学校に父親を半殺しにしたって噂が流れているんだろ? 同じ中学の人がいるとしても、城戸さんは誰にも話していないみたいだったのに」

「人の口に戸は立てられませんからね。同じ中学であれば、親のネットワークで子供に伝わったこともあるでしょうから。父親を半殺しにした、などというところだけ切り抜かれているのが、まともな情報を得たわけではない証でしょう」


 よく知りもしないのに……っ。怒りが込み上げてきて、ギリッと歯を食いしばってしまう。


「城戸さんは妹さんとの関係を改善したいから離れているってのに、あんな噂があったら心を整理することすらできやしないよ」

「……噂なんて勝手なものですからね。始まりは面白半分だったり、嫉妬だったりと様々あるのでしょうが。一度流れた噂を止めるのは難しいですよ」

「そんなの無責任だろっ」


 人の気持ちも知らないで、そんな酷いことができるものなのか?


「落ち着いてください比呂くん。はい、あーん♪」

「むぐっ!?」


 松雪さんに何かを口に突っ込まれる。

 口に広がる甘さから、僕が買ってきた一口サイズのチョコレートだと気づいた。いつの間に封を開けていたんだよ。


「怒っても状況が変わるわけではないですよ。冷静に、一つずつ整理していきましょう」

「……うん」

「よし。まずは乾杯しましょう」

「乾杯って……」


 松雪さんは城戸さんからあんな話を聞いたってのに、どうしてテンション高くいられるのだろうか。


「何かを成し遂げる前は、酒を酌み交わして戦意を高めるものなのですよ」

「んー?」


 松雪さんは何に影響を受けているのだろうか? 僕たちは未成年だから酒を飲めるわけでもないし。

 とりあえず買っていたコーラのペットボトルを掲げると、松雪さんが自分のペットボトルをぶつけてきた。


「強いって」

「これは比呂くんの気持ちの強さです」


 松雪さんはそう言って、蓋を開けて飲み物を喉に流し込んだ。

 いい飲みっぷりだ。僕もコーラをぐいっと喉に流し込む。

 炭酸が喉で弾けて、少し頭がすっとした気がした。


「整理しましょう。紬さんの家庭の問題は仕方がないとして、比呂くんは学校に流れている噂の方をどうにかしたいのですよね?」

「うん」


 松雪さんはうんと頷く。


「噂を消すこと自体は難しいと思います。それは空を掴むのと同じようなものですから」

「だったらどうすれば?」

「悪い噂に負けないくらいの紬さんの魅力が、全校生徒に伝わればいいのですよ」


 松雪さんはチョコを口に放り込みながら笑った。


「十一月は文化祭がありますよね?」

「そういえば」


 文化祭だの体育祭だの、僕にとっては苦行の時間でしかなかったから忘れていた。


「その文化祭で大活躍をして、紬さんが人気者になればいいのですよ!」

「えぇ……」


 そんなに上手くいくものなのだろうか? 人気者になればいいって、ちょっと子供っぽい考えな気もする。


「人気者になるということは大事ですよ。少なくともそんな相手に悪いことを言いづらくはなりますからね。誰だって、自分が責められる側になるのは嫌ですから」


 松雪さんの言葉には実感が伴っていた。ていうか魂がこもっていた。

 彼女なりの経験があるのかもしれない。それに僕にいい考えがあるわけでもない。


「わかった……。城戸さんが活躍できるように、僕たちはサポートすればいいんだね」

「はい。名付けて、紬さんプロデュース大作戦です!」

「えぇ……」


 なんだか作戦名だけで成功率が下がりそう……。

 松雪さんはチョコとポテチを交互に食べながら、甘さとしょっぱさのハーモニーを楽しむ。

 ニッコニコの笑顔で上機嫌だ。お菓子が美味しいのもあるけど、自分の作戦によほど自信があるのだろう。


「まあ、こんなことをしなくても……比呂くんのおかげで、紬さんは大分救われたと思いますよ」

「え?」


 松雪さんはふふっと笑う。帽子のつばに隠れて、彼女の目元が見えなかった。


「比呂くんに抱きしめてもらえて、紬さんは安心したようでしたから。私は話を聞いてどうすればいいのかわからなかったのに……比呂くんは本当にすごいですよ」

「いや、僕もどうすればいいのかわからなかったよ。ただ、自分は絶対に味方だって、それだけは伝えなきゃって思っただけで……」


 そうだ。大したことができたわけじゃない。

 全部を助けられないかもしれないけど、城戸さんを邪魔する噂だけでも気にならなくて済むようにしたい。そのために、松雪さんが立てた作戦を練っていかなければならなかった。


「どんな時でも、味方でいてもらえたならどんなに嬉しいのでしょうね……」

「え、何か言った?」

「いいえ何も。ほらほら、比呂くんもたくさん食べてください。いっぱいお菓子を食べないといい考えも浮かびませんよ」

「そんなおかしな話があるのか」

「……ダジャレですか?」


 ポテチのしょっぱさを、チョコの甘さで溶かし、混ざり合ったものをコーラで流し込む。

 僕は贅沢をしながら、城戸さんのためにと頭を働かせたのであった。



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