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2人旅の始まり

いつものように食事をしている時だった。


「君達は、『修道女殿』と『グラッドさん』と呼び合うつもりか?夫婦だろう?もう結婚して2ヶ月近くも経つ夫婦だ!しかもこれから長旅をするのに、それでは変だ。妻に『修道女殿』と話しかける夫なんていないぞ」

司教様はため息をついた。


「全く夫婦らしくないぞ。これで大丈夫か?」

私とグラッドさんはそう言われて顔を合わせたが、また照れて目を逸らす。


目が合うとグラッドさんが照れてしまって上手く会話が続かない。

私をおばさんだと思って接してくれればいいのに……。


「今、それを練習している暇はない。もう出発だ」

司教様から言われて私達は覚悟を決めた。


グラッドさんはここで働いている人に一人一人挨拶をして、それから武器屋のおじさんに別れの挨拶をした。

鍛治仕事などずっと手伝っていたから、師弟の別れのようだ。

私も皆さんに挨拶をした。


「ワシらも、2人がいて楽しかった。そうだ、夫婦だと聞いたから急遽用意した」


さじさんはそう言って、テーブルの上に指輪を2つと皮の袋を置いた。


「これって……」

グラッドさんがびっくりしておじさんを見た。


「夫婦なのに指輪がないのは変だろ?だから、昨日その話を聞いて急いで作ったんだよ。それと、この皮の袋の中身は、昨日、グラッドがバザールで売った革製品の代金だ。お前は売上をそのままくれたが多すぎるわ!だからお前に給料がわりにやる」


昨日、ルーマン国の人が革製品を高値で買ってくれたお金を全て「売上です」とおじさんに渡していたのを私も見た。

それを給料だと言うなら多すぎるわ。

多分、おじさんなりのグラッドさんへの餞別なのだろう。

そう言えないあたりが、師弟関係を語っているようだ。


私は2人の関係を微笑ましく見ながら指輪を手にとった。

真鍮製のようだ。 

そっと嵌めてみる。


「まあ!サイズがぴったり!どうやってこんなぴったりに作ったんですか?」


「ワシらはオーダーメイドで武器を作っとるから、手を見れば大抵サイズがわかる」

武器屋のおじさんはぶっきらぼうにそう言った。


「ありがとうございます」

夫婦なのに指輪がない事など、頭から抜け落ちていた。

流石、この国の第二都市ゴア市の中で名の知れた武器屋さんなだけある。観察眼が鋭い。


「そろそろ出発しないと!」

司教様が声をかけてくれた。

私達は司教様の方を向いた。


「司教様。必ず生きて目的の地を踏みます」

真っ直ぐ司教様を見て言った。


「ああ、期待している」

私の言葉に司教様は笑顔で答える。


『ここまでありがとうございました。貴方のような方がいた事は忘れません。私の師です。この恩は必ず返します』

グラッドさんがバクストン語で言うと、司祭様は屈託なく笑った。


『気にするな。私から見たら、君はまだ少年だ。成長しろよ。それから、コニーを大切にしてくれ』

そういうと手を振ってくれた。


司教様はもうついてきてはくれなかった。



何かあってもこの人なら信頼できると思って、王都のトワニー教会に、夜訪ねたのは、もう数ヶ月前。

そして、辺境伯領まで司教様と共にやってきた。

修道女になってからは、寄付で成り立つ食事と衣服。

大変な時期もあったけど、侯爵令嬢でいるより幸せだった。

そしてたくさん笑った。


いつか恩返しができますように。

神様、どうか司教様にご加護を。

そう祈るしかできなかった。



出国のために、ゲートに向かうことになった。

2人で歩くが、目が合うと恥ずかしくて話せないし、グラッドさんはいつも通り歩くのが早い。


「ねぇ、グラッドさん。妊婦を気遣ってもらわないと、新婚には見えないわ」

グラッドさんは立ち止まると、私の方に戻ってきた。

「確かに、私1人で歩いていては変だな」


そう言って私に合わせてゆっくり歩いてくれた。

上り坂などは、腰に手を当てて登りやすいようにエスコートしてくれる。


なんだかそれっぽいわ。


第一関門は出入国審査。

ファレル伯爵に書いてもらった『ファレル商会の会頭に会いに行く』という書類と、身分証として結婚証明書を準備した。


出国ゲートに近づくと様子がおかしい。

修道女か、又はストロベリーブロンドの女を探している。


出国ゲートまでの道には、ピンクの髪の女性の似顔絵が沢山あり、『宝石泥棒』と書いてある。

しかし、濃いメイクで顔の判別がつかない絵だ。

あれが私の似顔絵?

抗議したくなるレベルだけどグッと我慢する。


でも、今わかっている事は明らかに私を探している……。

私は、グラッドさんの手を握っているが、自然と力が入る。


鞄の二重底が見つかりませんように。

お腹の宝石が見つかりませんように。


グラッドさんは不安げな私の様子に気がついたのだろう。

私の目を見て、まだ照れが残る様子で微笑んでくれる。


どんな言語にも反応しちゃダメ。

自分に言い聞かせる。


私達の番になった。


目の前に中年の文官が立っている。

あまり仕事熱心には見えないが、人は見かけではない。

油断させて、私達の真相を暴くかもしれないと思うと緊張で手の汗がじっとりとしてくる。


私は顔がこわばる。


グラッドさんがにっこり笑って結婚証明書と、ファレル伯爵の書類を確認した。

「2ヶ月前の結婚か」

そう言って、チラッとお腹を見た。

「関係ないな」

そういうと、形式的に鞄を開けさせられた。


「行っていいぞ」

そう言われたが、ドキドキしながら、ゲートをくぐる。


やった。

これでとりあえず、バーリエル国から出国できた。


私達はファレル伯爵のお手紙をファレル商会の会頭に渡さないといけない。

それから、港を目指して船に乗らないと。


「まず、ファレル商会を目指しましょう」

私が言うと、グラッドさんは頷いた。


ぞくぞくとバーリエル国から出国した商人達が私達を追い抜いていく。


「これだけ商人が多いと、きっと宿屋もすぐにいっぱいになるから、無理せずに行きましょう」

グラッドさんがそう言ってくれるので私はにっこり笑った。


数ヶ月間、修道女として雪掻きをしたり、雪の中領地を回っていたんだもの。

私だった結構歩けるはずだと思っていたけど、どうも違う。

お腹が重たい。


3人で旅をしていた時は、司教様がなんだかんだと、馬車に乗せてもらえる交渉をしてくれた。

それに、乗せるほうとしても、聖職者3人だから快く乗せてくれた。


だから、この思いコルセットをつけて長時間歩いた事がない。

ましてや、鞄を持ってなんて……。


「鞄は私が持ちますよ」

そう言ってグラッドさんが私の鞄まで持ってくれた。


私達はあまり急がずに歩いて、まだ日が高いうちに早めに宿屋に入った。

宿屋は空いていた。

みんな、もっと先に行っているからだろう。



ここで初めて気がついたが、夫婦だから部屋は一つで、ベッドも一つ!


私はどうすればいいかわからずに、立ち尽くしていた。

この部屋でどうやって眠ればいいのかしら?一つのベッドで?

馬小屋で寝泊まりしながら3人で旅をしていた時と同じだと思えばいい。

でも、3枚しかないドレスの一枚をナイトウエア代わりにする?

嫌、どこかで洗濯できるとは限らない。


そんな時、おかみさんの好意で、妊婦の私にと湯浴みのお湯が運ばれてきた。


お湯を見て狼狽した。

グラッドさんをチラッと見ると、赤くなっている。

グラッドさんの前で服を脱がないといけない……。


「湯浴みをするなら私はここのパブでエールでも飲んで待っていようか?」

グラッドさんが、真っ赤な顔で目を逸らして言った。


「それは変じゃないかしら?妊娠中の奥さんをほったらかしてエールを飲むなんて」

本当は居なくなってほしい。

見られたくはないけど、でも、夫婦である事を疑われるのはもっとまずい。


「確かに変だな。でもどうする?」


「じゃあ、私が湯浴みをしている間、目隠しをしていてください。同じようにグラッドさんが湯浴みをしている間、私が目隠しをします」

私の提案にグラッドさんは顔を顰めた。


「確かにそれしかないか。ではレディファーストだ。君が先に」

そう言ってくれて、シーツで目隠しをしてくれた。


私は服を脱ぎ、重いコルセットを下ろした。

この内側に金貨を縫い付けてある上に、ネックレスが2本と、イヤリングが2セット入っている。


今までの移動はほとんど馬車だったけど、一日中徒歩は初めてだったので結構疲れた。

本当はゆっくり湯に浸かりたいけど、グラッドさんの前で裸なのは恥ずかしい。

いくら目隠しをして背を向けてもらっているとはいえ、やっぱり恥ずかしくて無理。

私はサッと湯浴みをして、それからコルセットを締め直し、服を着た。


「終わりました。では、グラッドさんの番です。目隠しを取ってください」

そう言うと、グラッドさんはゆっくり目隠しをとった。


『……拷問だった……水のちゃぷんちゃぷんという音が……』

そうバクストン語で呟いて、真っ赤になっている。

そして私の方は見ずに、湯浴みの桶の方に行った。


「じゃあ目隠しをします」

私はそう言うと、シーツで目隠しをした。

たしかに、お湯の音は恥ずかしさを掻き立てる。

あまりの恥ずかしさに私は耳も押さえた。


グラッドさんは湯浴みを終えると、私の肩を叩いてくれた。

目隠しを取って振り返ると、そこには濡れた髪のグラッドさんが立っていた。


メガネをしていないので、アメジストのような瞳がキラキラと光る。

濡れた髪も素敵に見える……。

って何考えてるのか。


私は首を横に振った。


グラッドさんの予想は当たっていて、先へ先へと向かった商人達は結局皆が同じ宿に到着したようだ。そして、泊まることが出来ずに溢れた人が、こちらの宿に部屋がないか探しに来ていた。


「早く宿屋に入ってよかったですね」

そう言ってディナーを食べた。


そして部屋に入って、さっき蓋をした問題と向き合わねばならなくなった。

それは。

ベッドが一つで、ナイトガウンなどは持ってきていない事。

荷物を最小限にするためだ。


「私は修道女ですから、床や軒下で寝ても眠れます。ですからグラッドさんがベッドに……」

と言うと、グラッドさんは困った顔をしている。


「ここからどれだけ歩かないといけないかわからないから、2人ともちゃんとベッドで寝よう。疲れを残さないように」

グラッドさんの言う事は最もだ。

仕方ない事だし、これから長旅を続けるのだからと自分に言い聞かせた。


「ただ……寝る時は下着だ。あまり服を持ってきていないから……」

グラッドさんも恥ずかしそうに言った。


「では、暗くしてから服を脱いで、左右からベッドに入りましょう。そして真ん中には堤防代わりとして、鞄を置きましょう」

「そうだな。そうしよう」

グラッドさんはすごい勢いで納得してくれた。


「私は右側に寝ます」

「わかった。俺は左に」


明かりを消してもらい、ドレスを脱いでそっとベッドに入った。

なかなか寝付けないのではと心配したけど、疲れて、ぐっすり眠ってしまった。


次の日、グラッドさんより先に起きて身支度を整える。


私がベッドから出る時、見ないようにしていたのにグラッドさんの寝姿が目に入った。

掛け布団がちゃんと掛かっていなくて、グラッドさんの上半身と逞しい腕が見えた。

服を着ていると細く見えるのに、筋肉質で逞しくて、寝ている顔も綺麗。

ドキドキしてしまう。

見ちゃダメだと思っているのに、ドレスを着ていると、視界に入ってしまう。


兄や弟が寝ているのと同じ。

侯爵家にいた時に、部屋のソファーに寝っ転がってそのまま寝てしまっている兄や弟を見つける事がたまにあった。

それと同じ。  

兄もかなり鍛えて逞しかった。だから、グラッドさんと兄はなんら変わりないわ。

そう自分に言い聞かせて、深呼吸をする。


「先に起きてたんですか……」


そう言ってグラッドさんも起きてきた。身支度を終えて、宿屋のチェックアウトをする準備を整えると、朝ご飯を食べるために食堂に行った。



食堂では。何か揉め事が起きていた。

1人の商人が商品が無くなったと騒いでいるのだ。

無くなったのは、エメラルドのネックレス。

皆、迷惑そうにしている。

ここに泊まっているのは、大半が商人だ。

だから、皆、適当にあしらっていた。

にもかかわらず、ずっと犯人探しをしているようだ。


「そういえば、この夫婦は、夜のディナーを食べると酒も飲まずにすぐに部屋に行ってしまった。お前たちが泥棒なんじゃないのか?」

商人の男がグラッドさんに詰め寄ってきた。


「鞄の中を確認させてもらおうじゃないか」

やばい。二重底なのがバレてしまう。

そうしたら益々疑われる。どうしよう。


すると、女将さんが怒り出した。


「黙って聞いていれば!この夫婦はアンタ達より早く宿屋にやってきたんだ。そして身重の奥さんを気遣って過ごしているじゃないか。それの何がおかしいんだ?」


おかみさんの怒りに、疑われた商人達が便乗する。


「そうだ。それにこのダンナが、奥さんを気遣ってゆっくり歩いていたのを皆が追い越したじゃないか」

1人が庇ってくれた。


結局、みんなの怒りが収まらず、騒ぎ出した商人の鞄を確認する事になった。鞄のどこかに入っているのではないかと。

しかし、商品が一つも入っていない。


「狂言だったのか!」

おかみさんが発狂して、男は捕まった。


ホッと胸を撫で下ろす。

こんなところで捕まったり疑われたらもうおしまいだ。



私達は無事に宿から出て、歩き出した。

やっぱりお腹が重い……。


湾曲した道を歩いている時だった。

カーブを曲がった瞬間、目の前に馬車が停まっていた。

明るい時間にもかかわらず、前方の馬車が盗賊に襲われている。


「貴女はここに隠れていて!」

そう言うと、グラッドさんは、短剣を出して盗賊に向かっていく。

すごい速さで盗賊に切り掛かる。

馬車には護衛の騎士達がいるが、それよりもグラッドさんの動きの方が早い。


盗賊を撃退し終わると、馬車から若い女性が降りてきた。

皺一つない、綺麗なレモン色のドレスを纏い、艶々の真っ赤な髪を綺麗に巻き、エメラルドのようなグリーンの瞳を輝かせてグラッドさんを見ている。


「なんてステキな方なの!」


しかし、グラッドさんはお嬢様に気がつく事なく、周りの騎士達に軽い挨拶をした。するとお礼を渡されたようだ。

それを受け取りこちらに歩き出した。


「ねえ、私はアンジェリカ。貴方は?」

グラッドさんは馬車の方を振り返り、女性を見た。


「妻が待っていますので」

そう言うと、私のところまで戻ってきた。

「もう盗賊はいないから行こう」

そう言って鞄を持つと、私と共に歩き出した。


目の前の女性は、私をじっと見ている。

「お嬢様、ここに馬車がいては通行の妨げですよ」

と御者が言うが、一向に馬車を出す指示を与えない。


同じ年くらいの女性は、綺麗にメイクをして、何も持った事がないであろう奇麗な手で、小さなハンドバックを持っている。


それに比べて私は、薄いメイクに、ヨレヨレの辺境伯領でもらった古着。

そして、手はボロボロだ。

恥ずかしくなんかない。私は元は修道女だから。


私は馬車の影に隠れていただけだったので、一向に動く気配のない馬車をすぐに追い越してしまった。


「ちょっと待ちなさいよ」

私達を呼び止めた。


その女性を見ると、私を馬鹿にした目で見ている。


「貴方、それ妊娠してないでしょう?もしも妊娠していても、この男の子供じゃないわね?」


私は背中から嫌な汗が出てきた。

なんでわかったの?

でも不用意な発言は墓穴を掘るから無言でいる。


「この人、メガネで顔を隠しているけど、相当な美形よ。背も高く、剣の腕も確かで、こんなにいい男がアンタみたいな女を相手にするはずないでしょ?アンタはこんないい男から愛されるはずないのよ」

そう言ってからグラッドさんを見た。


「どうせ、酔った勢いで、一晩過ごして、すぐに妊娠したって言われたんでしょ?この女と子供への手切れ金はアタシが払うから、アンタはアタシの物になりなさい」


自分勝手な言い分。

呆れて何も言えない。


そう思ったのはグラッドさんも同じだったようだ。

「金持ちの道楽に付き合っている暇はない」

そう言って相手にもしない。


「お嬢様、妊婦さんに対して流石にそれは言ってはいけない事ですよ」

騎士に嗜められるが、このお嬢様は引く気がないようだ。


「だって、どうしてもあの人が欲しいのよ!貴方達よりあの人1人の方が強いんだもの。しかもメガネを取ったらきっとすごい美形なのよ。だってあの唇の形!なんてステキなのかしら」

お嬢様は諦めきれない様子だが、後ろから馬車が来たので仕方なく移動した。


私達の横をお嬢様の馬車が追い越していく。


「面倒なのに絡まれた」

グラッドさんはそう呟いたので、私はフフフと笑った。


「それもこれも、ウチの旦那様がかっこいいせいね」

そう言うとグラッドさんは苦笑いをした。


それからもゆっくり進んだ。

これでは私が足を引っ張っているので、なぜこんなに歩くのが遅いのか、次の宿屋で話す事にした。

自分の出自までは離さないが、何を持っているのか話す事にした。


次の宿屋に到着をした。

なんとか一部屋確保できた。


部屋に入ってから、人が周りにいない事を確認した。

「ねえ。話があるの。人に聞かれてはまずいから、小さな声で話すわ。今、見せたいものがあるから目隠しをして」

私のお願いにグラッドさんは訝しげに目隠しをする。


その間に服を脱ぎ、コルセットを外すと、とりあえずまた服を着た。


「目隠しを外していいわ」

グラッドさんは目隠しを外した瞬間に目に飛び込んできたコルセットを見て狼狽する。

「こっ……これって下着じゃないか」


「……そうなんだけど……」

そう言いながら、嫌がるグラッドさんにコルセットを持ってもらう。

金貨がかなり入っていて、重みのあるコルセットを手渡されたグラッドさんは驚いた。

「なぜこんなに重い?」

大きな声だったので、思わずグラッドさんの口に手を当ててしまった。


「実は金貨が縫い付けてあるの」

耳元で伝えた。

「こんなに重いから歩くのが遅くてごめんなさい。盗賊や追い剥ぎにあっても、これならなんとかなるのでは、と司教様が言ったの」

そう伝えると、グラッドさんは納得した。

「確かにこれなら誤魔化せる。このまま、我慢してくれるならありがたい。それから今後を考えないと」


もう一度目隠しをしてもらい、コルセットをつけて、いつもの妊婦の格好に戻ってから古い地図を出した。


「ここを目指しているの。この港から船が出ているはずよ。記憶が正しければ1ヶ月に1回のみ。この国に長く居ればいるほど危険だから、早く船に乗りたいわ」


「わかった。次の街に入ったら、乗合馬車に乗ろう。標識を見る限り、もうすぐ街だ」


ディナーを終え、ベッドに入る事にした。

また灯りを消すと、右と左で寝る事にしたが、昨日よりベッドが狭い。

私は緊張して眠りについた。


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