1ー10話 初PvPは反撃で瞬殺
よく考えると響君と結華さんはまだログイン初日なんですよね。
「え?え?え?」
あまりの事態に混乱する。目の前のいかにも巫女みたいな装備した森人族の女性が朱里?
「お兄ちゃんWFO始めるって言ってたけど。PN禍月だったんだね。って言うことはフルールさんは………そういうことね。お兄ちゃん、コッチでは私は天兎だよ」
「お、おう。それでどうしてしゅ、天兎はここに?」
「禍月さんとフルールさんってどういうプレイヤーかなって興味があったのと、[ファヴニル]が荒れていたからね」
「天兎ちゃん、荒れていたってのは?」
「WFOの攻略最前線スレ Part46見ればわかるよ」
天兎に言われてメニューから掲示板、スレッドを開く。へぇ、フムフム、なるほど。スレッド専用の管理AIまでいるのか。
「おい………テメェらッ‼︎俺を無視してんじゃねぇぞコラ‼︎天兎も邪魔すんじゃねえ!トップクランである[ファヴニル]に潰されてぇのか⁉︎あぁ⁉︎」
「何勘違いしているのか知らないけどトップクランは[爽風旅団]だから。本当ムカつく」
「たかが野良ヒーラーの癖にでしゃばんじゃねえぞ‼︎」
「ならさ、デュエルしましょう。負けたらどんな命令でも聞くという条件で。まさか受けないなんてないよね。腰抜けさん」
天兎ガッツリ煽るなぁ。3年前はもっと甘えんぼだったのに。グリザスってヤツこめかみピクピクさせてるし、相当怒ってるな。
「いいだろう天兎。お前がヒーラーだからと言って容赦しねえからな」
「あ、天兎」
「何?お兄ちゃん」
「条件に初期装備のみ使用可って付けて俺がやるよ」
「本当にやるの?(うわーグリザス可哀想、マジでご愁傷様)」
初心者だから心配してくれているのかな(実際は相手を哀れに思っている)。でも多分大丈夫だろう。
「あぁ。あれだけ大言壮語しているんだ。初心者相手なら初期装備でも勝てるだろ?」
「当たり前だ‼︎さっさとしやがれ」
キレてるグリザスがウィンドウを寄越す。
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決闘 1on1 デスマッチ 初期装備のみ使用可
参加者:禍月 vs グリザス
勝利条件:敵HP全損 制限時間:無し
賭博対象:勝者の命令を敗者はどんなことでも1つ
聞き、実行する。(尚、実行できない場
合は、全財産が相手に移動します)
決闘を始めますか? YES / NO
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躊躇うことなくYES を選ぶ。すると、シュンッと音がして、リフォロスさんに似た女性が現れた。
「私は決闘管理AIのウェリスです。この決闘は正式な決闘として私が立会人となります。不正を働けば即敗北ですので注意してください」
ウェリスさんが言い終わった途端、1分のカウントダウンが表示され、決闘用バリアが展開される。
普通街の中ではHPが減らないのだが、決闘用バリア内では無効らしい。
相手は短剣を構える。狼の獣人族だし、[獣化]して、速攻で決めるタイプかな。こっちも刀の柄に手をかけ抜刀アーツの発動のために構える。
今の俺は装備による補正なしでもSTR:600、AGI:535ある。グリドラプトルよりは強くないハズなので負ける気はしない。
カウント5、4、3、2、1、0……
「それでは、デスマッチデュエル開始!」
ウェリスさんの合図でデュエルが開始する。それと同時にグリザスが獣化して駆けて来る。
目の動きから狙いは首(普通なら目の動きで狙いを看破できない)。短剣の刃に光を帯びていることから急所に一撃入れて終わらせようと考えているのだろう(普通はそこまで考えを読めない)。
予想通りだ。なら、俺の対応は変える必要ないな。
ーー[刀]スキル範囲反撃抜刀アーツ・《水鏡》ーー
グリザスが突っ込んで来るところを狙って抜刀しながら円状に斬り裂く[刀]スキルLv.80で覚える反撃アーツを使う。
《水鏡》はグリザスのガラ空きの胴にクリーンヒットし、吹っ飛ばした。それだけでグリザスのHPは全損する。種族ボーナスで上がりやすいからとHPやVITを上げていなかったのだろう。
勝敗の雌雄は一瞬で決まった。
「勝者、プレイヤー・禍月」
朱里ちゃんは天兎でした。
裏設定:
その6
天兎は未だにどこにも属さない野良プレイヤーで、攻撃もできるトップヒーラーです。現状一番中級ジョブに近いです。
アーツが全然出ないじゃないかと思っている方もいるかもしれないので次は一部アーツ集でお届けします。




