82話: だが断る。私が最も好きなことのひとつは、勘違いツンデレ美少女の告白に「NO」と断ってやることだ
サブタイなげぇ
「かけてくれる?」
結局、横手に連れられ俺は生徒会室に来た。
西日が廊下側の窓から差し込む中、並べられたパイプ椅子にそれぞれ腰を掛ける。
「それで、話ってなんだよ」
「少し……相談があるの」
「相談? なんで俺に?」
「いいから、聞いて」
随分と改まった様子の横手。
日中もやけにおとなしかったし、何かあったのだろうか。
真面目に悩んでいる様子だし、仕方ない。少しだけ聞いてみよう。
「私ね、高校生になってすぐのころ、他校の男子と付き合ってたことがあるの」
「ふ~ん……は?」
「でもすぐに浮気されて別れたの」
「ちょっと待て整理タイム」
「男子に生理はこないでしょ!」
「少し落ち着け伊達メガネ」
展開が速すぎて頭がついていけない。
軽いジャブくらいからきてほしいのに、いきなりロメロスペシャル食らった気分だ。
「はあ……、それで一回浮気食らったから、高校生の恋愛は無意味なんて結論に至ったのか?」
「親友も浮気されたの」
「Oh……」
確かにまあ、それなら不信になっても仕方ない……か?
偶然似たような事例が重なっただけな気もするが、本人にはショックなことだったんだろう。
「それから私は、高校生の恋愛なんて子供の遊びで、何の意味もないって信じるようになった。男子高校生なんて、恋愛を遊びくらいにしか思っていないんだって」
「だからあんな校則を?」
「まあ、ちょうどいい機会だったから」
どっちが子供だよ……っという指摘は、無責任なんだろうか。
俺は浮気された辛さを知らないんだから。
「だからって、誰もかれも浮気をするわけじゃないだろ」
「高校生カップルが結婚する確率って、すごく低いの。離婚率まで考えたら、本当に無意味……」
そこで横手は一瞬沈黙し、再度口をひらいた。
「ついこの間まで、そう思ってたわ」
「え……」
横手から予想外の言葉が飛び出し、思わず驚きの声を漏らしてしまう。
「どういうことだ?」
「今日の一日で、いろいろ……分からなくなったの。軍人さんたちの気ままな行動を見て、大人って何か分からなくなった。あなたの行動を見て、子供って何か分からなくなった。細井くんと宮本さんをみて……うらやましいと、思ったの」
そう静かに語る横手の姿は、まぎれもなく乙女に見えた。
「それで?」
「あなたに、聞いてみたいの。大人になることって、高校生の恋愛って、なんだと思う?」
_人人人人人人人人人_
> 道徳の授業!? <
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「いや、知らんけど!? 俺まだ17だぞ!」
「お願い、あなたの考えを聞きたいの」
「ええ……」
そんなこと言われたって、困る。
困る……が、自分なりに答えを出さないと、横手は納得してくれないだろう。
それに、今ここでおざなりに向き合うのは、間違っている気がした。
顎に手をあてて、少し考える。
そして考えがまとまったところで横手に向き直り、口を開いた。
「やっぱり、わからん」
「え……」
「横手の言う子供っていうのがバカやることだっていうなら、俺はいつまでも子供のままでいたいと思う。もちろん浮気はだめだぞ。でも本気の恋愛してる奴だっている。たとえ別れたって、その恋が無駄になるってことはないはずだ」
新社会人もれなく恋愛初心者なんて、世も末だろう。
それに失敗したって、それはそれで経験だと思う。
俺は別れないけどな。
「そもそも俺の周りには、バカなことばっかりする成人がわんさかいる」
「そう……みたいね」
「俺はそんな奴らとはしゃいでる時間が好きだ。でも俺はあいつらを、大人じゃないとは思わない。きっと責任とか経験積み重ねたら、いつの間にか大人にはなるんだろうな。でも少なくとも俺は、いつまでもバカやっていたい。その方が……楽しいじゃねえか」
大人の明確な定義なんて知らない。恋愛の意味なんていらない。
「ただ俺は、人生楽しんだもん勝ちだって思う。だから横手も、あんまり窮屈に生きなくていいと思うぞ」
「何それ……全然答えになってないじゃない」
そう言いつつも、横手の表情は先ほどは以前比べ、随分と柔らかくなっていた。
どこか吹っ切れたような、そんな感じがする。
「あ~あ、全然わからなかった。だからコックスくん」
「なんだよ」
「私とつきあって」
ん? 流れ変わったな?
「ほら、あなたトラブルメーカーでしょ? だから誰かがしっかり見張っておかないと……恋人って関係なら、どうどうとそれができるわ。その役を私がやってあげる! 私もいろいろ……学べる気がするし。まあその間、恋愛禁止は棚上げにしてあげる。どう? いい話でしょ?」
「横手……」
「まあ私も、いきなりの恋愛禁止は焦りすぎたかもと反省はしているの。だから少し、歩み寄ってみようかと思ったの」
そう言って、嬉しそうに語る横手。
なんだ、随分と様子が変わったな。
本来の彼女は、本来明るい性格なのかもしれない。
うん、こっちの方がずっといい。
「だが断る」
「え、どうして!?」
「言ってやりたいことは山ほどあるが、とにかく俺はツンデレが嫌いだ!!」
「そんな……」
逆にあんな言い方で、なんでOKもらえると思ったんだ!?
歩み寄るだと? 暴れ馬にロープでつなぐの間違いだろ!
「なによツンデレって! 結局男子は、大した理由もなく女の子をないがしろにするのね!」
「あと俺彼女いるから」
「先に言ってよおおぉ!」
頭を抱えてショックを隠し切れない横手。
確かに言い方はきつかったかもしれないが、これでも俺、結構頭にきている。
「いいか! 大人だ子供だ言ってるお前が、一番自分勝手な行動してるんだよ!」
「わかったわ。初志貫徹、恋愛禁止を強引にでも推し進めてあげるわよ!」
「そうはさせん! 総司!」
ガララッ!
「一部始終聞かせてもらった。もう言質はとってるんだよ!」
「なっ! なに!? プライバシーの侵害よ!」
「他人の告白監視してた奴に言われたくねえな」
「くっ!」
壁に耳あり、総司に目あり。
悪いがこっちだって、譲れないものがあるんだよ!
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このシーンを描くために横手が生まれた




