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私が私でいるために~教国は揺れて、教えは歪んで~前編

なぜだかしらんけど前後編です。

千文字くらい縛りしていたらそうなっていました。

いやはや、みんなすごく動き回るね。

sidechangeto教国、大司教の私室

そこにいたのはこの部屋の主である大司教その人だった。

「さあ勇者よ、私の手で踊り私にあの都市と金を持ってこさせるのだ」

金の亡者、地位の味を知ってしまった者。それがこの聖職者の本質だった。

「そうすれば、この教国に名ぐらいは刻んでやろう」

「ひどいねぇ、魔王が討てるんだから凱旋させるべきじゃないのかい?」

その部屋にどこからともなく現れた、青白い肌の男。

「そんな金の掛かる事を誰がするか、何より混血排斥運動ですら金が動くからやっていることなのだ」

「そんなに君は金が好きなのかい?」

「この地位になるのにどれほどの金を使ったと思っているのだ。中には金を受け取らん崇高な奴もいたがな。そんな奴はもうここにはいない。いるのはワシを大司教におさめる可愛げのない金の亡者だけだ」

「君もその一人だと思うけどね」

「ふん、当たり前だ金がなければ綺麗事なんぞにうつつを抜かしおってからに、金が手に入ればすぐ無くすことしか考えておらんものばかりではないか」

「そう、まあいいけどね。僕の要求さえ通れば」

「魔王の記述の改ざんだな。それをして何の意味がある」

「僕たちが大義名分を得る」

「そうか、こっちには何の影響も出さんでくれよ。やっとわしの地盤固めが終わってあとはばら撒くだけのところまで来たのだからな」

「それでリルファも殺したの?」

「ああ、あやつはワシを売国奴呼ばわりしおったからな。やつの協力者に術を仕掛けて殺させたはずなのだがな、まぁあの傷ならば生きてはいないだろう」

「じゃ、あんたが主犯、そこの魔族が煽り役ってところかしら」

「…さっきから誰だい?この部屋に勝手にいる子ねずみは」

ハッと気がついた大司教が振り向いた先には、窓べりに座り、こっちを見ている金髪の少女がいた。

「なにも…」

気がついた男は、片膝をつき臣下の礼を取る。

「お久しゅうございます。魔王様」

「…千年前にいた?」

「はいあの当時は子供でありましたが、今は立派にあなたの手足として働けます」

「そう、じゃあ魔王として命じる。それ以上の憎しみを抱いて行動するな」

「しかし、それではあなた様あまりにも不憫ではないのですか?」

「千年もすれば生きているものなどいないし、その血筋を恨んだところで何か、得るものがあるわけではないわ。…それに」

魔王は一旦口を閉じて、

「千年前、私は幸せだった。今も同じ、あの人がいて娘がいる。そして千年経ってもこれほどまで慕ってくれる者がいる。こんなに幸せなことはないわ」

「そうでしたか」

「…ハッ。何をのんきなことを魔王も魔族もこの国では殺されてしかるべきなのだ。誰かー!!誰かこんか?!」

大声を上げる大司教、しかし恐ろしいまでに物音一つ立たない。

いや足音が二つ聞こえた、しかもこちらに近づいてくる。

その音を味方だと確信した、大司教は青い顔を一転先程までのいやらしい顔に戻る。

「ふん、貴様達もこれまでのようだな…なっ!」

入ってきた二人を見て、彼の言葉が止まる。

入ってきたのは無論、この国の兵士ではない。勇者と学者である。

「よう久しぶりだな。大司教さんよ」

「何を言っているんだ。ここにいるのが千年前のその人のはずがないだろう。子孫だよ、本人と比べても何ら間違いではないくらいのな」

「性根までか?」

「間違いないだろう」

口を陸に上がった魚のように開閉を繰り返している大司教に向かって、

「さぁ、今の精算を始めようか」

「勇者さん」

「なんだ?」

「明日会いに行きましょう」

「見つけたのか?」

「答えも出ましたから」

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