自由交易都市に風は吹く~そして自由交易都市に風は吹く~
「なんだ?」
「あっちで……が……らしい」
「正気か?!あれはただの拉致だぞ?」
「ああ、ただ裏は取れてねぇ。ただ奴さんの掲げる理念に反した場所だからなここは」
「勘弁してほしいな」
「全くだ」
必死こいて謝りながら、ニーナが何で泣いていたのか懇切丁寧に説明した。
「あなたが、どんなに昔のことを謝罪したってそれはあなたの罪。他人に押し付けていいものじゃない。それに、あなたがどう思っていてもやっと会えた肉親からの第一声から今に至るまで謝罪しかしていない。それを聞かされた側はどんな気持ちになるのか分かっているのですか、そもそも話も聞かずに謝罪なんて、そんな誠意のないことをしていいと思っているのですか?許されると思っているのですか?あなたは本当に学者なんですか?もう少しフィールドワークでもして、本じゃわからないことも考えるべきです」
というようなことをくどくど述べていると、
肩を軽く叩かれた。
「もうそれくらいにしておいてあげようよ」
見れば、いつの間にやら牢から出てきていたニーナがそこにいた。
「…まあいいでしょう。今度は謝罪じゃなくきちんと肉親の会話をしてくださいね」
そのまま二人のそばを離れ、金髪の人のもとへ向かいます。
「すいません」
「気にしないでいいわ。…お互いに名乗ってなかったわね。私は美月アリス元魔王よ。あっちで娘にヘコヘコしてるのは元勇者の佐藤宏太だ。あそこで世界を超えた再会をやっているのが、本谷健太って言ってもわからないか。まぁ名前負けよね」
「私の名前はリップル・ファート、一応憑依者っていうのかな。あっちのマイカのとなりで放心しているのがリリア・アルヒミア駆け出しの錬金術師って言ったところね」
ほかの二人については何も言わない。
アリスもほかの二人については聞かない。
そこに穏やかな時間が流れる。
やがてお互いの自己紹介が済んだあと、
「それで、コイツはどうすんの?」
と言ってマイカから指を刺される。
「どうしましょうかねぇ。一人で置いておくわけにもいかないし、ましてや外に出すにしても判決を覆すのは色々とめんどくさいし。…とりあえず、カチコミましょうか」
「だぁぁ、待て待てぇ!何勝手に決めてんだよ?!ここには無双できるやつばっかじゃねぇんだぞ!」
「そんなことわわかってるわ、だから義妹ちゃんをあなたたちに託します」
私の方を向いて彼女は言った。
「…危ないことはさせないでくださいね、義姉さま」
なぜだか知らないが火花が飛び散っているよ。
そのあと魔王様が、元老院の方々と話をつけてきたらしい
そうして私は、やっと陽の光を浴びることができた。
その日を一身に受けていると秋の匂いの風が私に吹いた。
この自由交易都市に新しい風が吹いた。
それは私の待つ未来を祝福するものなのかはわからない。
ただその風は、今つかの間の安らぎを得た私に確かに吹いている。
sidechangeto???
長かったやっとこれで私たちの悲願が叶う。
さあ私の呼びかけに答えてくれたまえ、
「勇者よ!!」
彼の放つは、凶弾か否か。
かくて歪んだ願いは、悲劇の幕開けにふさわしい高笑いを響かせた。
「申し訳ありません、こちらのミスです」
「そんな謝罪はいらないわ。それでこんなことしなければならいほどあなたたちが焦る、相手は何」
「国です。それも、三大国家の一つ。混血廃絶をかかげ、今も多くの同胞がのたれじぬ国です」
「教国ね。確かにここは彼らにしてみれば、いわば逆聖地ってやつね」
「それともう一つ」
「何?」
「リルファ様は教国で巫女をしておりました。」
「本当?」
「事実です。ですが、冬に入って間もない頃から足取りがつかめていません」
「そう」
「ですからおそらく」
「わかってるわ。私が直接乗り込みます」
「ご武運を」
「こちらこそ感謝を」
次の章もまた自由公益都市編です。
ただタイトルは変わります。




