自由交易都市に風は吹く~純粋なる風はそれ故に強く~
「なぁ、あいつどこ行ったか知らねぇか?」
「いや、こっちじゃ見かけてないけど」
「どこいったんだ?あいつのわがままもまぁ久しぶりだけどな」
「そういやぁ、あいつがあの子の話を聞いてめちゃくちゃ目を輝かせていたなぁ」
「まさか、その子のところに?」
「行ったかもしれん」
「レニと一緒に探してくる」
「頼む。俺じゃあ、あいつを止められんからな」
一応久しぶりの直接戦闘シーンです。
今は昼くらい。
私は今、服屋に来ております。ずぶ濡れの姿で。
なんでこんなことになったのか。それは、朝方まで遡ります。
「へくちっ」
朝方、新しい魔法を実験することにしたと言って一昨日来た練習場へ来た。
本の内容は暗記しているし、あとは魔法を発動させようとした時だった。
「なーにしてるのー。まーぜてー」
突然上空から聞こえた声に反応して、右に飛び退く。
すると先程までたっていた場所は大穴を開けており、その穴を開けたとおぼわしき少女が斧の上にたっていた。
「すごいねぇ、これよけられる人そんなにいないんだよ」
ピンクの髪の少女は天真爛漫な笑みを浮かべながら、それとは相反する殺気を向ける。
見るものが見ればこう称しただろう。
戦好きと。
危機感から弓を出し構える。
斧から降りた少女は、その刺さった斧を何の重さも感じていないかのような軽い仕草で持ち上げ、弾丸のような勢いで一直線に向かってくる。
弓を咄嗟に左に向け放つ、金属と魔力がぶつかったとき特有の甲高い音がした。
「あはは、すごいすごい、おネェちゃんは強い。認めてあげるけど」
声が動きながら聞こえてくる。
屋外で声が反響しないはずなのに正確な位置がつかめない。
「今なら、私の方が強い」
突如漏れ出た殺気に慌てて避ける。
転がるように避けると、まるで軽い細剣でも扱うかのように斧が私の首のあった位置を薙ぐ、しかし振るわれた音がその重さをものがったていた。
(強い、何か対策を考えないと)
攻撃を紙一重で避けながら、対策を考えていた。
思い浮かんだのは、かけに等しい手だった。
「天沼矛」
「おっと、当たんないよ」
難なくよけられる、でもそれでいいのだ。
「さぁ次はって、およ?」
彼女は地面の変化に気づいたようだ。
はっきり言えば悪手かもしれないが、くるぶしあたりまで沈む程のぬかるみなら音による反応ができる。
事実これまで直感だよりだった回避がさらに反撃まで加えられるようになったのだから。
何度もぬかるみを転げまわっているうちに服や髪が泥まみれになってしまいましたが。
避けようとするとですねぬかるみに足を取られてしまうのですよ。
全く汚れていないあちらさんがおかしいんですよ。しかも目に泥の一つでも入れてやろうと泥弾を顔めがけてぶっぱなしたら器用に返されるという始末。
体力のない私は息が上がっている。
次はよけられてもその次は?そんな考えが頭をよぎる。
あの子もそれに気がついているようで舌なめずりをしながら、大きく斧を振り上げた。
そのあとに来るであろう攻撃は、こなかった。
その直前熱波がこの辺り一帯に吹いた。
ぬかるんだ地面が一気に乾き天沼矛を放つ前に戻る。
「何をしているんですか?」
まるで電流を流されたカエルのように反応する少女。
「え、えっとてきじょ「それにしては全力でしたけど?」いやだから」
その後ろにいたのは、ワイバーンを従えた銀髪の凛々しい女騎士だった。
私の方は乾いた上で言えば見窄らしい格好になっているだろう。
もうなんというか服だめかもしれん。
真っ白で汚れ一つなかった。ワンピースのような服は、その面影すらなくなっていた。
良くて泥まみれ悪く言えば泥人形一歩手前のような状態であり、乾いたことでさらに目立つようになってしまった。
「お前は依頼をすっぽかしたと思ったら、何をしているんだ?」
さらにワイバーンから軽装の弓使いが降りてきた。
乾いた地面に降り立つと、こちらをじっと見てきた。
「服の汚れ取らないの?」
……あ、
「水よ」
全身ずぶ濡れになるもの一応綺麗な状態にはなった。
さてと乾かす魔法は…あれ?
『魔力切れ?』
「あー、やっぱりなってたかぁ。どっちにしても一時間くらい魔法は使えないよ。封印させてもらったし」
封印?
「君の抵抗が高すぎて、効果が出るまで時間がかかった上にこんなタイミングか。しかも時間もかなり短い本当に君は何者だ?」
さっきまでとは違う口調になったから驚くけど、そんなことを気にしている場合じゃないことに思い至った。
「へくちっ」
可愛らしい自分言うのもなんだが本当に可愛らしいくしゃみが出た。
そんな可愛らしいくしゃみとは裏腹にかなり寒気がしてきた。
「仕方ない。ちょっとついてきなさい」
そう言って騎士の人が私の手を取り、私はその手に引かれるままどこかへと連れられていった。
そうして現在へと至る。
うん今も魔法使えないんだよね、どうしよ。
とりあえず言われるがまま服屋に来て服脱いで、濡れた髪にタオルを拭きながら毛布をかけてもらってる。
憑依なのかはわからないが、とりあえず恥ずかしいという感情は出てこない。
ただ寒いということだけはわかる。
熱も出てきた洋で頭もぼーっとしてきた。
そして傾く視界。
暗くなってく世界。
その中で声が聞こえた。
助けてと言っていたような気がした。
それだけなら気のせいかもしれないけど、一緒に聞こえたんだ鎖の音が。
画面の中でしか聞いたことのなかった音が。
「ちょっと、大丈夫?!」
「じゃなさそうね。…すごい熱」
「宿の方に運んでくるわ」
「知ってるの?」
「企業秘密にして欲しいのだけど」
「私の口はオリハルコン並みよ」
「助かるわ…?」
「『あなたは誰?』…ねぇ」
「今のも聞かなかったことに」
「わかってるわ、その代わりこの子の体調が良くなったら、もう一度連れて来なさい」
「そんなことなら、数日後に」
色々とことが動きます




