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自由交易都市に風は吹く~春一番とともに~

とある酒場にて

「…で、こんなところで俺らに依頼したいことってのはなんだ。普通にギルドを通せる依頼じゃないってことか?」

「あぁ、そうだ。内容はこの紙に書いてある。」

王都でいろいろやらかしたからこっちに来たよ。

ということで、今自由交易都市のギルドにいます。

「でこれからしばらくの間、ここを拠点活動していくのよね」

一つのテーブルで食事をし終えたときリリアがみんなに尋ねた。

「うん、あまり無茶な依頼を受けるつもりはないけどね。生活費だってかかるだろうし、ましてや自由とは強者であるのなら何をしてもいいということになっているのかもわからないから、無難に都市で受けられる依頼を探していくわ」

そう言ってマイカは席を離れて、掲示板に貼られている依頼書を眺めに行った。

「じゃあ私は、ちょっと商店街の方に行ってるわ」

そう言ってニーナも席を離れていった。

「あなたはどうするんですか?私はこれから書店巡りをするつもりですが」

そう言って、リーダーも席を離れていった。

『どうするか、ねぇ…弓使ってみようか』

そう言って弓を持ちながら、受付の方へ行く。

「ようこそ自由交易都市ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

『あの、弓の練習がしたいんですけどどこか安全に練習できる場所はありませんか?』

「それなら、この裏の方に練習場があります。ここ最近はこちらを利用する人がいないので他の誰かに当たるとゆうことはないはずです」

お礼を言ってその場を離れる。




着いた場所はだだっ広い広場のような場所だった。

的は自由に設置していいようだが、金を取るようだ。

(それでも破損一体につき銅貨一枚は安いと思うんだけどな)

とはいえ、今のところ無駄な散財はしたくないので、

『黄狼、できる?』

影の中からひと吠えしたかと思うと、黒い人型がおよそ20メートルほど向こうに等間隔で5体現れた。

どうやら自動で動くらしく、右へ左へ動き回る。

説明書のようなものに書いてあった通りに弓を構え矢をイメージして弓を引く。

私の指先に矢を掴んでる感触があった。

見ると透明な矢がそこにはあった。これが魔力で作られた魔矢というものだろう。

説明書によれば矢に属性をつけるとその属性ごとに違った色になるらしい。

黒い人型の一体に狙いをつけて指を離すが、

『ッ!』

相手が動いていることを忘れていたため、矢はあらぬ方向へと飛んで行き地面に刺さって消えた。

(きちんと相手に当たるように誘導を付与したほうがいいかな?)

何発か射たところ当たったのは、十発中一発これでは弓なんぞ使ってられない。

その一発にしたって、右腕をちょっとかすめただけ、致命傷はおろか怪我による痛みを覚えることすらないだろう。カスリ傷?いつの間に?が関の山だ。

(とすると、付与すること前提かな。その場合は、数や状況で判断しないといけないか)

あれやこれやと悩みながら、さらに何発か、射ていると。

「嬢ちゃん面白いことやってんなぁ、ちょっと見ててもいいか?」

くすんだ色の鎧を着た壮年と思わしき男性だった。

その目に映っているのは、まるで小さな子供を見守るようなそんな優しい目をしていた。

『どんなひと?』

彼の着ている鎧に話しかける。

帰ってきた答えは、『面倒見のいいおじさん』だった。

これは私が聞かされた話の要約であり、こんな一文でまとめられるようなものではなかった。

その20分以上惚気話とも思える話を聞かされた私は、若干涙目になっていた。

「君にも声が聞こえるのかい?」

おじさんがこんなことを尋ねてきた。

『君にも?』

「ああそうだ。この鎧は特別製でね、意思を持っているんだ。知り合いもよくこの鎧に話しかけてそんな顔になったから、わかったんだ」

おじさんは、そのあと私と二三言話して、私の射術を見ていた。




これがこの自由交易都市で最強と噂のあるチーム【バシリスク】リーダーとの出会いだった。

これが幸福だったのか不幸だったのかの判断は、第三者に任せるとしよう。

「チーム【ツキアケ】?」

「そいつらの弱みを探ってきて欲しいんだとよ」

「何のために」

「さあな。じゃ、確かに伝えたぜ。受けるも受けないもお前さん次第だ」




「会ってみて、考えるのも手だな」

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