兎にも角にも王都!6
大変お待たせしてしまい申し訳ありません。
書く暇がなかったことも含めこのような日の空いた投稿となりました。
翌朝目を覚ますと。
でかくて黒い狼の顔が視界いっぱいに広がっていた。
私が起きたことを悟ると黄狼は、私の顔を舐めてきた。
とても嬉しそうに何度も何度も…とりあえず手を上げて止めさせる。
その時ドアの向こうから、誰かがノックしてきた。
「起きましたか?」
と言ってリリアがドアを開ける。
視界に映るのは私とその上に乗る狼。
昨日からの緊張状態がまだ続いているリリアからすれば、敵の刺客かと考えたのも無理はなく。
「ッ!」
バッと戦闘態勢を整える。黄狼も同じだ。わたしの上で身を低くしながら飛びかかろうと、構えている。
膠着状態に陥った中私が一声かける。『ストップ、この子は敵じゃないだからおとなしくしてなさい黄狼』
右手で黄狼の頭を抑えながら、私は黄狼に伝える。
黄狼は鼻を私にこすりつけるとクゥーンと鳴き、ベットから降りて私の影の中へ入っていった。
「今のは?」
『あとで全部説明するからちょっと待ってて』
混乱するリリアをよそに私は着替え始めた。
朝食が終わった後、昨日あったことを全員に話し、これからどうすべきか話し合うことにした。
「…だいじょうぶだったんですか?いえ、それ以前に笛を取られたんですよね。どうするんですか?」
リリアが尋ねる、無論、対策はこうじていたのでこう伝える。
『問題ない』
と伝えて魔笛を掲げる。皆が目を見開いてその魔笛をじっくりと見る。
「一つ質問です。なんでそこにそれがあるんですか?」
『わかりやすく言えば、盗られたのはまがい物、盗聴しやすくするための壊されることを前提とした囮』
皆の疑問の目がこちらを向く、盗聴が目的なのに、壊されることが前提とは、どういうことだと言わんばかりである。
『あのまがい物は、私の魔力で作られている。壊されることで結界に馴染み、結界の限定的な無効化を可能にする。つまり結界の対象に私の魔力も含めることで私との間に擬似的なラインをつなぎ、私の耳に物の声を届けてくれる。物には記憶し伝えることもしてくれるから、私にとっては結界さえ一度何とかすれば何度新しい結界を張られても、そこに染み込んだ私の魔力を私が解除しない限りずっと盗聴可能なの』
と伝え終わったあとみんなを見ると、何やらみんなの見る目が恐怖の大魔王にあった時のように見える。
蛇足だが私のとっての恐怖の大魔王は、リリアの怒り顔であることは言わない。
「それはつまり、私たちの内緒話も筒抜けということですか?」
『ううん、いつもはそんなことはしない。と云うよりそんなことを肉体を持ったものがいちいちしていたら、精神が持たないし何よりそこまで全部聞けるだけのキャパシティはない。あるとしたらとっくの昔に狂った狂人かそのためだけに作られた人形だけ』
だけど今回だけは別と付け加えて伝える。
『ハーメルンの名前を勇者が付けたのなら、その効果がどんなものか想像できるから万が一にも使われるわけにはいけない。使える手段はとことん使わせてもらう』
私は決意を固め、その意思を示した。
朝食も終わり、それぞれが今できることをやることにした。
私は盗聴、王妃の方に渡ったようだがうまく壊してくれたようだ。
ヒステリーを起こした方は怖いね。
他のみんなは、フェアリーギフトの方へと行った。
みんなが調べるのはハーメルンの製作所の場所とあとは私の頼まれごと。
頼まれごとの方はただの買い物である。
弓と槍というただのなんの魔力も付与されていない、すぐ壊れてしまうような代物である。
しかし最悪の事態回避のためには、やれることはやっておくべきだ。それが私のやり方である。
一日目
どうやらあの笛は遠慮なく壊されたらしい。
豪快に叩きつけてくれたものだから、すぐ王宮中に馴染んでいった。
気がついた近衛兵が片付けや結界の張り直しなどを命じた。
でも遅い。これで大丈夫なんていうぬるい考えの人間じゃないみたいだけど、それをどこでどうやって手に入れたのか、それを彼女は話さないだろう。
王は言うのだろうが、どこにいるのかなぜそこにいるのかきちんと説明もせずただ、駄々をこねる子供のように同じことを繰り返す王は大きくなった子供のように感じた。
二日目
どうやらあの生き残りの隠密は、そのままフェーギフトへと向かったらしい。
地下の方では、大規模な儀式場が作られているようだ。
急ピッチで進められているらしい、作業員の一人が愚痴っていた。
上の方でも動きがあった。せわしなく翁や亜人という謎の人物名と、装飾品の献上という話が多く聞こえていた。おそらくこの装飾品が魔笛なんだろう。
ただどこにいるのかそれだけは言わない。
夜も更けてきた頃、王はつぶやいた「もうすぐこの世界が俺のものになる」と
三日目
あの笛は完成間近のようだ。翁の単語のあとに献上までもうすぐですという言葉が続いたから時間がなくなってきた。
いまだに翁の正確な居場所は分からない。
いくつかは探っているが全て空振りだ。
最悪ぶっつけ本番になるかもしれない。
王と王妃は別々の部屋で笑っていた。
二人の子供たちは、小さな声で結界を使い話し合っていた。
四日目
どうやら大詰めのようだ。
明日全てが決まる。私も外へ出よう。一番調べづらい森の中に向かうことにした。
皆にも伝え、私は一目散に黄狼に乗り、一日をかけ闇夜をかけてゆく。
翁が何者なのかしらないけど、嫌な予感がするからだ。
新月の晩に私は駆ける。最悪な状況を考えながら。
王都編もいよいよ次でラストです。
とにかく続けるつもりです。
その後の自由交易都市編まで続けようか少し悩んでいます。
感想いただけたらうれしいです。




