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運命の悪魔に見初められたんだが、あまりに純で可愛すぎる件について  作者: しるどら(47AgDragon)
第一章

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025:ダンジョン入口

えー長らくおまたせしましたが、ぼちぼち再開していきます!


 ……さて。

 幸か不幸かショートカットも出来たんで、さっさとダンジョンに戻るとする。

 このまま放っておけば、領主が俺を追っかけてくるはずなんで。


 明確な理由はいくつかある。


 まず「部外者である俺を、わざわざダンジョン調査のスペシャリストとして雇うような状況に追い込まれてる」ってことはつまり、なんか理由があって時短を望んでる。

 次に、俺が必要なキーアイテムの一部を持ってるかもと思わせた状態であること。

 そして、相手が洞窟の出口やギルドに見張りを置くような、ねちっこく周到な性格。


 この辺を総合すると、まあ十中八九、領主本人が来るだろう。本人が変な対応してるせいでこうなってんだし、時間がないならもう自分でやったほうが早いに決まってる。

 どうせ金持ちワンマン領主だから「自分が動くと、他のことが止まるってのが許せねえから、今まで足踏みしてた」とかそんなとこじゃねえかな。

 その割に管理や準備が適当なんで、情報が足りずにゴタゴタしてるって感じか。


 どっちにしろ俺がやることは決まってる。ゴルガッシュのダンジョンに籠城決め込むだけだ。

 目論見が外れてもその時はその時だ。容赦なく、あぶり出しガッチンコ戦法でもパーッと使えばいい。


 ちなみに、あぶるのはユアンナ、ガッチンコは言うまでもなくゴルガッシュである。

 いかがわしい秘密をゲットしつつ、その一方でゴルガッシュ先生に脅すなり一発殴ってもらう戦法だ。

 他力本願ばんざい。


「ふむ……エイヤは、またなにか考えているのか?」


 思案にくれて口数が減った俺を見て、ヴィーデが問いかけてくる。


「ん、ああ……まあな?」


 ……そうだよ!


 いくら俺でもこう、なりゆきでも「人外美少女をお姫様抱っこして夜空のランデブー」とか意識させられれば、しばらく気になるっての!

 そういうのまぎらわすには別のことを真面目に考えるしかないってやつですよ!

 とはいえ、当の本人にとても言えないので、はぐらかしてごまかす。


 まあ、ウチのお嬢様はすごく楽しそうだったんでいいんですけどね?


「ヴィーデにはダンジョンの奥に隠れてもらって俺が表向き対応する。お前さんなら仕組みをイマイチわからなくても、必要な罠は起動できるだろ?」


「……あいかわらず、すごいこと考えるなキミは」


 ヴィーデに感心されたように驚かれた。

 そんなもんか? 彼女なら因果関係は理解できるんだから、仕掛けに対応するなんて朝飯前だろ。なるようになるさ。


「そうでもねえよ。相方のスキルとダンジョンの仕掛けとかに頼り切った、出たとこまかせだぜ?」


「ボクをそんな、タダの作業員として使う人は初めて見たよ……」


「でも、そういうのやってみたいだろ? もともとちょっとした成功とか失敗とか、そんなものがないんだし、お前さんはもっと実感が必要なんだよ」


「うん……うん!」


 まったく、目をキラキラさせて全身で喜びを表しながらうなずきやがって。

 1000年も封印されてた世界を揺るがしそうな魔神様のくせに、マジ可愛いったらありゃしねえっての。さっきのことがあるから変に意識しちまうじゃねえか。


 でも実際、お前さんみたいなのは自分がなにをやってるのか知るべきなんだよ。

 ひとつひとつ、丁寧に。

 おそらく、ヴィーデにしてみりゃ、こんな「作業をする」なんて言うのはいままでありえないんだろう。成功したければ、思いつきでポンと成功するんだ、こいつは。

 なぜって、勝手にそうなるからってだけの理由でだ。

 だいたい、出来ることってのは大体、なんとなくで出来ちまうもんだけどさ。


 でもな、世の中ってのは全部「こうやって誰かが実際に動くこと」で回ってんだよ。


 運命なんてもんを動かすなら、ちゃんとそれを自覚した上でやるべきだと思うんだ。

 でないと、いつしか誰かが勝手にやってくれることになっちまうからな。

 お前さんの動かす運命ってのは、全部、誰かやなにかが関わってるんで、それを無自覚にいじり倒すのもどうかと思うんですよ。

 今後、俺も関わることだし。


 そしてヴィーデ本人もだ。

 こいつにはまだ「自分が当事者だ」って自覚がない。

 あるのは漠然とした、ふわっとした感じのヤツだ。だから、ひとつずつ丁寧に知っていかなきゃだ。

 少なくとも、俺はそう思ってる。


 ……つきあってやるって約束しちまったからな。


「まあ、なるようになるだろ」


 先が見えないコトは、見ようとしすぎないのが人生のコツだと思ってる。



***



 そんなわけで、すっかり夜更けにダンジョン入口まで来たんだけども。


「……入れねえな、これ」


 予想通りと言えば予想通りだが、そこはもう素敵なまでに領主の部下らしき連中に警備されていた。どう考えてもダンジョン警備や探索ってレベルじゃねえぞ。

 お出迎えセットの荷馬車どころか、簡易的な天蓋付きのキャンプまで揃ってやがる。

 うん、領主様直々のお出ましともなれば当然ですよな。これで確定だ。


 俺らは、夜の闇に紛れてそれを隠れて見ているだけである、切ない。


「でも、入るんだろう?」


 ヴィーデがこれっぽっちも心配してないどころか嬉しそうに聞いてくる。

 わくわくしてしかたないって感じだ。

 お前さん、絶対、わかってて楽しんでるだろう。


「もちろん、入るに決まってるさ」


 って感じで、俺も安請け合いするけども。


 こいつら強いかもしれんが、ぶっちゃけ実戦や乱戦に慣れてない普通の衛兵だ。

 世間に言わせりゃそういうのがまともなんだろう。


 マトモだから、世間に求められた通り、やることをちゃんとやる……つまり、決められた指示に従って決められた対応しかできない。

 普通に強く、普通に優秀で、普通に立派で……孤独を知らない。自分で組み立てない。

 俺らみたいな、どん底で誰の助けもなく、自分でやるしかないってのを知らない。


 だからこうやって、連中の馬車、つまりは領主様お出迎え用の豪華セットである積み荷に火を付けてやる。当然、離れた場所からだ。

 うん、とてもよく燃える。やー、金持ちの私物を燃やすのは気持ちいいね!


 突然の火の手に、大慌てでみんな右往左往してやがる。

 こいつら、街の衛兵だろ? 森での対応がまるでなっちゃいねえ。長丁場の見張り、ご苦労さんってやつだ。

 おかげで、こんな程度でも仕掛けられると対応が後手後手になる。


『っ……敵襲だ! 所定の位置につけ! まずは火を消せ!』


 早速、部隊長らしきやつが反応する。人のいい隊長だ、部下にも指示がわかりやすい。

 敵である俺にもわかりやすい。


 だいたい、火を消すって言うけど、もともと便利屋系の魔法使いも回復役もいない部隊だろ。でなきゃ、あんなに腐った強引なダンジョン攻略するかよ。

 燃やされた時点で諦めるのが正解で、最初から火消しに人数割く余裕なんかないんだよ。


 森なんてのは街と違って、明かりなんてなにもないんだ。

 でかい明かりをつくってやれば、影なんていくらでも濃くなる。

 暗いところに慣れた目で見る明かりは、すげえ明るいだろ?


 そんで、少しでも火なんか見たあとには……こんなに堂々と影を歩かれても気づかないんだよ。


「さすがエイヤだねえ、ただ明かりがあるっていうだけなのに」


 ヴィーデが感心したようにささやく。


 まあ、さっきまでの少人数警備のほうが、見つかってもおかしくないからな。

 衛兵としてなら、彼らは優秀だ。警戒してればやはり強い。

 なのに、ばたばたして慌ただしいせいで、もはや木の葉の擦れる音にすら気づかない。


 その間に、邪魔な衛兵さんには2人ほどお眠りいただく。

 適当に火消しなんか行かせるから、せっかくの定位置がまるで機能してない。

 こういうのは人数が揃わないと、相互カバーも出来なくて意味がないんだ。


 そして、積み荷から予定通りの爆炎と炸裂音。


『うわああ! な、なにが起こった!? 新しい敵か!?』


 転がしておいた炸裂玉と油のビンが炎で弾けただけだが、十分に効果がある。

 炸裂玉なんてほとんど音だけで威力もお察しだが、油と一緒なら別だからな。

 そもそも、森に領主お出迎え用の荷馬車やキャンプセットなんか持ち込んでる方が悪い。


 おかげで、とてもいい感じのステキな宣戦布告になったけどな!


 で、そんな仕掛けに一瞬でも気を取られたら、警戒心なんて隙間だらけだ。

 入口の警備の意識、がら空きだよ。


「さ、今のうちにいくぜ?」


「本当に、魔法も魔力もなしにこんな事ができるんだね……」


 難なく、衛兵の後ろの暗がりを通って、堂々と洞窟に入る。

 神経は繊細に、行動は大胆に。


 ヴィーデからすると、見えているのに見えなくなるって事が、こんなにも簡単に起こせるのは信じられないらしい。

 実際には、認識の位置や予測など、見た目より簡単じゃないんだが。

 でも、俺からすると、魔法の場合でもおそらくあまり変わらないと思うんだよな。


 世の中ってのは、できることを効果的にやるだけだ。便利さにかまけてそれを見失ってると、普通にできることコトでもすごく見える。

 手軽で簡単ってのは、必ずしもいい事ばかりじゃないし、手順や意義は大事だからな。


「まあ、魔法で出来て当然なら、そうじゃない方法でもやりようはあるってことだ」


「なるほど……たとえ魔術や魔力でなくても、人の意識や考えの方向性をなにかで変えるってことには変わりないんだね」


「そういうことだ。やること一緒だろ?」


 魔法でもそうでなくても、ないものがあるようにする、ってのは一緒だからな。

 それが、魔法で起こされるモノなのか、人為的に起こす出来事かの違いでしかない


「深いなあ……知ってても、実際に目にすると驚くことばかりだよ」


 えー、なんだ、その、あれだ。

 だからって、そうやって心底尊敬の眼差しで見つめられると、さすがになんというかこそばゆいですお嬢様!

 衛兵連中の警戒心と違って、俺はまだランデブーの余韻が削がれたわけではないので!


えー、ありがたいことに、なんとこのたび、当作品の書籍化が決定しました!

これもひとえに、みなさまがたの応援や長らくの休止にも待っていただけたおかげであります

イラストレーターは例によって自分ですw

そんな打ち合わせとかもあったりしてましたんで遅くなった面とかもあります申し訳無さ


なんにしても明るい報告ができまして何よりです!

よろしくおねがいします!

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