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運命の悪魔に見初められたんだが、あまりに純で可愛すぎる件について  作者: しるどら(47AgDragon)
第一章

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014:打ち合わせ


 次の朝。


 ユアンナを仲間に入れるために、とりあえず手元の運命を回す必要があるってことで、ギルドの外で待ち合わせて彼女から仕事を請けたわけだが。

 手続きを終えたユアンナは、ヴィーデをそれはもう好きなだけモフると、それじゃお願いねと去っていった。


 やっぱり、嵐のようだった。


「……つ、つかれた」


 さすがのヴィーデも参っているようだ。

 おそらくここまでモフられたことはないんだろう。

 普通に考えて、どこぞの御神体みたいなやつを気軽にモフれるようなことが出来るはずもないだろうし、当然といえば当然だが。


 まあ大変そうだったが一段落したので、宿に戻った。

 とりあえず朝飯を食いながら、情報の再確認をする。


「……で、ヴィーデさんや。俺は結局なにをすればいいんだ?」


「あ、そういえばそうだねえ。さしあたっては辺境貴族とドラゴンの退治かな」


「ぶはっ!?」


 思わず、飲んでるものを吹き出しそうになった。

 やばいやつ、それやばいやつ!


「まて、俺が請けた依頼って遺跡探索だよな?」


「そうだよ。そのついでによろしくない貴族様の素性を明るみに出したり、ドラゴンを倒すだけだよ」


「おいおいおい、ドラゴンって簡単に言ってくれてるけどな。それ、討伐隊が総出で山狩りする感じのやつじゃね?」


 さらっと、まるでそのへん散歩するぐらいに軽く言ってくれてますけどね。

 普通の人はちょっとでなくてもドラゴンとか退治しないんですよ。

 そもそも、貴族もドラゴンも敵に回すとかどっからでてきたんだよ。このへんでそんな話聞いたことねえぞ。


「ああ、大丈夫だよ。よろしくない貴族がよろしくないことをしようとしてるだけだから。そのついでにドラゴンが出てくるので、キミが止める」


 素敵に爽やかに、なんかこう、近所の年上のお姉さんに諭されるような雰囲気で断言された。

 えー、どう考えても、ドラゴンは俺の力じゃ止まらないですヴィーデ先生。


「いやいやいや、それ無理だから。そのへんの中堅モンスターでもヤバイから」


 丁重にお断りする。


 だって俺盗賊ですよ、そんなの逃げるの専門ですよ?

 ヴィーデと初めて会った時、覚悟さえ決めればドラゴンでもぶん殴れるとか、そんなことを一瞬でも思った俺を締め上げたい。


「ボクが知ってるのは運命の流れと結果だけだ。過程はキミに任す、そういうことでいいんだろう?」


 うん、ひたすら信頼されている笑顔がまぶしい。

 そんな、にこやかに信頼度の高い目でこっち見られても困る。


 そりゃたしかに任せろっていいましたけどね?

 ココまで大きくなると話は別じゃないかなって……うん、むしろ別であって欲しい。


「っても、遺跡の探索だったものが、いつの間にか貴族を敵に回した挙げ句、素敵にドラゴン退治とか聞いてねえし!?」


「気にするな。キミは出来る、結果がそうなっているんだから問題ないはずだよ」


 それはもう、すごく当然のように言われた。


 いやまあそうかも知れないが、人はちゃんと安全のためのロープがあっても、崖には気軽に飛び込めないんですよ。


 特に、一般的にはあまり関わらないほうがいいって思われてることの場合は。


「あー、はいはい。わかったよわかりましたよ、決めた時点でやるしかねえってんだろ。とりあえず、なんか傾向とか対策とかってあるのか聞いてもいいか?」


「ないね」


「ないのかよ!?」


「だってそうだろう。すでに結果が決まっていることに対して、ボクが何の手を打てっていうんだい?」


 ヴィーデは、心底不思議そうな顔をしてくる。


 そうだった、そうでしたよ。

 コイツの脳内には基本的に始めと終わりしかないんだった。

 ついでにいうと、それが当たり前過ぎて中身が完全に抜け落ちてる。


 魔物としては心底すげえんだが、人としては現状に満足して働かないクズってことだ。

 しかも、それ以外のことはよく知らないと来てる。

 だから、コイツを真人間にしてやるには、俺みたいなやつが過程を教え込んでやるしかないんだよな。


 人ってやつは、結果だけで物事をしないんですよ、ええ。


「あー、ヴィーデさんや。人ってやつは、結果にかかわらず出来る限りのことをするんですよ。そこでサボっちまったら、そりゃ人間をやめるときでな。だから、お前さんは運命がどうとか関係なしに全力を傾ける必要がある、オーケー?」


「ああ! そういえばそうだった! エイヤは本当にすごいな。ボクの周りの人はみんな結果が出ればそれで満足なやつばっかりだったから、つい忘れがちになってしまうんだ……」


 尊敬半分、反省半分。

 嬉しそうに反省をするのも可愛いと言えば可愛い。


 ……が。

 そもそもこれは反省するところじゃない。


「それと、反省するのもいいけどな? そこは喜ぶべきところだぞ、ヴィーデ。なにせ自分に必要なことがわかったんだ。十分な成果だろ?」


「……えっ?」


 そんなこと、考えてもみなかったって顔をされる。

 いちいち反応が可愛くて困る。


「喜んでいいって言ってんだよ。反省しても案外得られるものは少ないんだ。必要なのは問題とその改善であって、それが見つかったってのは立派な成果で、いいことなんだっての」


 人は申し訳ないって思うと、意外なほどに全部そのまま「申し訳ない」ってジャンルにまとめて放り込むし、同じ対応をする。

 肝心の問題点や改善点は放置したまま、どんな課題も関係なく、反省したことで改善した気になってしまう。


 同じ原因で同じことをやる。何度でも繰り返しやらかす。

 そのたびに毎回反省して、そのうち自分はダメなんだって落ち込んでいっちまう。

 別に悪いことでも、申し訳ないことでもないのに、勘違いしたまま自分を責めて自己否定していくのは苦しいに決まってる。


 基本的に、誰だって放っておけば癖で同じことをやるに決まってんだ、それのどこが悪いってんだよ。

 そんなの、気づいた時に毎回自己チェックして、出来ることから丁寧にケアしていくしかねえだろ。

 癖ってのは、無意識についうっかりやるから癖なんだ、気づいただけで立派ですよ。


「なるほど、そういうものなのか……! ああ、全く思ってもみなかった。こんなの、感動しすぎておかしくなってしまいそうだぞ……」


 半ば潤むぐらいに感動されてしまった。

 ホントに、コイツは真面目で人がいいというかなんというか。


「おう、自分の改善点が見つかるなんて、貴重な機会だろ。そういうのは礼だけ言って、活かせる機会で上手くいきゃ運がいいってやつだ」


 自分でわかってない事は、いきなり出来ないことだって多いからな。

 知らないことがうまくいかないのは、悪いことでもなんでもない。


「そこまでそんなふうに物事を考えられるものなんだ……キミは本当に良いやつなんだな、エイヤ」


 む、なんかこう、しみじみとされてしまった。


「……そうでもねえよ」


 頼むからそこマジにならないでくれ。

 単に、落ち込んだり変な意味で反省されたくなかったし、ヴィーデみたいなのには汚れてほしくないだけだ。

 なにより、そんな態度をされると俺の方がどうしていいかわかんなくなる。


「わかった、ボクもできるだけのことはやってみたいと思う。ただ、わからないことも多いと思うから、そのときは言ってくれ」


 うん、いい顔だ。

 そうそう、コイツはこういうほうが似合ってる。


 せっかく、こんな超絶すげえ存在が俺ごときに全部預けたいとか言ってくれてるんだ。

 そんなヤツの笑顔をこんなつまんねえことで曇らすわけにはいかねえんだよ。


 たしかにコイツはとんでもないすげえ魔物で、魔神とかそういうやつかもしれないが、フタを開けてみれば、ただの世間知らずなお嬢様なんだからよ。


「おう、そんときゃ容赦しねえからな、覚悟しろ」


「うむ。ぜひお願いするよ」


 とまあ、いい感じに話は一段落したわけだが。


 かっこいいこと言った手前、ドラゴンの対処についてはすっかり放置状態だった。

 当たり前の話だけど、ただの遺跡盗掘野郎がドラゴンなんてやつには縁もねえしなあ。

 さてどうしたものか。


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