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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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84話 ベルと二人で森の中

「どういうことですのぉっ!?」


 ラヴィの修行の件について、ベルに報告に行った俺は鼓膜を破壊されることになった。どんだけラヴィが好きなんだよコイツは……


「うるっせぇな! どうもこうも、ラヴィはしばらくの間修行するんだっつうの!」

「あぁ、ラヴィさん……ワタクシ、心配で心配でなりません……いっそ、着いていってしまおうかしら」


 ベルは真剣な表情でなんか言っている。


「おまっ、邪魔になるだけだろ……ラヴィはラヴィのやることがあって、同じパーティーとしてはそれを尊重するべきじゃないか?」

「……それは、そうですけれど……」


 ベルはふてくされたように、ぷーっと頬をふくらます。五歳児か。

「それに、ラヴィがいないからって俺たちのやることは変わりないんだからな」

「やることって、なんですの?」

「そりゃあ、冒険者の努め、クエストだろうが」


 * * *


 うららかに、秋風そよぐ昼下がり。俺たちはというと、アルクーンの街から数時間の場所にある、薄暗い森の奥へと足を踏み入れていた。なにやら急ぎの依頼とのことで、今日のクエストは害虫駆除に決まった。


ーーー


【討伐クエスト】

 依頼内容:ベドワーム三体の討伐(Eランク推奨)

 目的地:アルクーン市外・南の森

 報酬:3000ゴルド+特別報酬あり

 備考:気持ちの悪い生物の目撃情報あり。森の汚染が懸念されるので、繁殖前に殲滅求む。


 ーーー


「《ベドワーム》ねぇ……」

 俺は依頼書をぴらっと広げて、改めてクエスト内容を確認する。あのクールな受付嬢セラ姐の『どうしてもお願いです!』って懇願に負けて請け負っちゃったけど、どんなモンスターなのやら。

 Eランククエストの割には報酬がうまいし、セラ姐がポロッと『イモムシの様な』とかって言ってたのが気がかりだけど。


「まったく、お願いされたらすーぐなんでも引き受けてしまうんですもの」

 俺の隣で、ベルは腕を組みながらツカツカと歩く。


「んなこと言ったって、あんな必死な顔でお願いされたらなぁ……それに、他のクエストはちょい難易度高めだったろ?ラヴィがいない今、俺たちはできることを地道にやるのさー」

「それはそうですけど……。うぅ、ラヴィさん……早く会いたいですわ……」

「いや、どうせ夜にはたんぽぽ亭に帰ってくるじゃんか。ラヴィのことより、自分のことを心配したほうがいいぞ?何が出てくるか分からんからな」


 そう、危険度の低いモンスターとはいえ、セラ姐があんなにお願いしてくる位だ。それはもう、生理的に受け付けないような、外見嫌悪感マシマシなやつが出てくる可能性が大いにある。というか、ほぼそうだろう。

 それをベルに勘ぐられると「行きたくないですわ」と駄々をこねるに違いないから、なるべくスピーディーに準備、出発をしたわけだ。俺ってば策士ぃ!


 ひたすらに歩いていると、いつの間にか森の雰囲気が変わった。雰囲気というか、空気というか――


「……なんだこの匂い。なんか、甘い?」

「本当ですわ! 花の香りかしら?すごく良い香りですわね!」

「そうか?俺には、何だか香水みたいで鼻にずんとくるわ」

「それは、優雅な日常における経験値の差でしてよ?貧相なマヒルのお鼻さんっ」


 ベルはそう言うと、ご機嫌にスキップしだした。あんにゃろ、背後から麻痺らせたろうか。

 

「きゃっ!」

 前を歩くベルが、急に悲鳴を上げた。


「どうした、ベル?」

「何か、水滴が首筋に……」

「おま、そんなことでいちいち悲鳴あげてんじゃないよ……これだからお嬢様は……」

「なっ!少しは心配しなさいよ! もし、あらゆるものを溶かし去る溶解液だったらどうするんですの!?」

「そん時ぁ、大丈夫かなーって思うよ、それは」

「もっとちゃんと心配してくださいましっ!?」


 いやいや、何が溶解液だ。こんだけ文句を言う元気があるんだからどっちみち大丈夫だろ。

 ……てか、どんどん甘い匂いが強くなってる気がするんだが。それも、辺り一帯から……というより、むしろ俺たちのすぐそばから――ベルから……?


「おい、ベル。お前臭いぞ」

「んなっ!?いきなりなんて失礼なことを――って、ひゃあっ!?」

「すまん、ちょっと失礼」


 ベルの向きをくるーりと変え、首筋のあたりに顔を近付ける。すんごく、甘ったるい。明確に匂いが違う。


「なあ、香水とか付けてきてないよな?」

「そ、そんなもの付けてくるわけないですわ!それより、いきなり何をするんですの!?」

「ちょっ、自分の首筋触って匂い嗅いでみ?」

「はい……?」


 ベルは納得のいかない様子ながらも、言われた通りに首筋をさする。


「え……?すっごく甘い匂い。どうしてですの?」

「知らんよ。知らんけど、さっき首筋に落ちたのって……?」


 俺たちは無言で目を合わせると、ゆっくりと頭上を見上げた。そこには、大きな枝にワシっと掴まり、ぶらんぶらんと体を揺らす巨大なイモムシのような何かがいた。


「いやあぁぁぁぁっ!!!気持ち悪いですわっ!」

 ベルは毎度ながらに絶叫し、そのまま俺にガシッと抱き付いた!いや、痛い痛い!バトルドレスの防具が俺のみぞおちに食い込んでるっ!嬉しくない……!


「ちょ、落ち着けって! い、痛いギブギブ……!」

 なんとかベルを引き剥がし、巨大なイモムシのような何かを観察する。恐らくあれが今回のターゲットであるベドワームだろう。

 おじいちゃんの指のようにシワシワなのに、ぶよぶよと異様な膨らみのある体。所々にびょーんと伸びた毛のようなものがあり、無数の小さな足をワシャワシャと動かしている。柔らかい体は今にも落ちてきそうで、考えただけで鳥肌が立つ。


 ほうらみろ、まーたこういう系だ。ゴキローチの時みたく、ベルお嬢さんが気絶しなければいいんだけどな。さて、害虫駆除開始といくか……!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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