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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
4章

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70話 牛追い祭り

 今日、アルクーンの街は異様な様相を見せていた。静まり返った市街地に、それに見合わない異様な熱気。広場には街の男たちが何百人と一同に会し、男臭いったらありゃしない。

 そう、今日はアルクーン名物「牛追い祭り」の開催日なのだ……!


 ここ最近、街の様子がどこか騒がしいと思っていたら、そういう暑苦しい祭りがあるんだとか。この時は、俺とは縁のない行事だと思っていたんだ。


「……で、牛追い祭りってなんですか?」

 ある朝、たんぽぽ亭の食堂でミレナさんに尋ねてみた。


「ああ、祭りは初めてかい?」

「ええ。どこに行っても牛追い、牛追いって……そんなに有名な祭りなんですか?」

「そりゃあ、一番盛り上がる祭りだからねぇ。市街地を縦横無尽に駆け回る牛と、それを追い回す男たち」


 ミレナさんはパン生地をこねながら、祭りの情景を思い起こすように語った。うん、なにその危ない祭り。絶対行かないわ。


「……なんでそんなヤバい祭りやってるんですか……」

「う~ん……そりゃ、みんなもスリルとか興奮を味わいたいんじゃないかい?」

「スリルっていうか命の危機じゃないですか」

「そりゃあね!クライマックスの牛対決では怪我人がたっっっくさん出るからね!」


 ほれ見たことか。ってか牛対決ってなに??


「でも、参加しただけでお肉を貰えるし、牛を倒した人には超高級なやつが貰えるって話だよ?」

「それ、本当ですの!?」

「うわっ!?」


 いつの間にか近くにいたベル。"肉"って単語に反応して降りてきたのか?相変わらずの食欲の化身っぷりだ。


「それ、参加しますわ!ワタクシ!!」

「拙者も……」

「「うわっ!?」」


 いつの間にか近くにいたラヴィ。俺とベルは声を合わせて飛び退く。"肉"って単語に反応して降りてきたのか?相変わらずの狩猟本能だ。


「ふふ、残念ながら、この祭りに参加できるのは男だけだよ」

 ミレナさんはそう言ってチラッと俺を見る。


 いやいや、なんで俺を見るの!?俺、そんな危ないだけの意味分からん祭り出ないよ!?


「いや俺は――」

「マヒルさん!今すぐ、すぐさまエントリーですわっ!」

「行こう、マヒル殿。肉の為、尊い犠牲」


 ベルとラヴィは俺の腕をがっしりと掴むと、有無を言わさずたんぽぽ亭から引きずりだした。


「おぉい、ふざけんなっ!!嫌だ、俺は嫌だぁぁぁ!!!!」



 * * *



 ――そういうわけで無理矢理エントリーさせられた俺は、沈んだ気分のまま当日を迎えることになった。当日は、いつもの街並みとは違って至る所に赤い旗や提灯、物々しい柵が設置されている。


「なんだよこれぇ……」


 街の広場には、屈強な男たちが所狭しと入り乱れ足の踏み場も無い程だ。常に体のどこかが、誰とも知れない男の体と密着している。うぅぇっ、満員電車を思わせる。


 しばらく生き地獄を過ごしていると「パパーーパーッ!」と威勢のいいラッパの音が響いた。男たちからウォッ!と歓声が上がり、一気に熱気が巻き起こる。


 そして広場には、ゴロゴロと巨大な木製の箱が滑車に乗せて運ばれてきた。小屋くらいはありそうな箱はガタガタと揺れ、時折中から「ヴォッ、ヴォッ」という音が響いている。

 

 えぇ、これ本当に大丈夫なやつ……?

 ミレナさんが言うには、〔ビフ〕という温厚なモンスターを街に放すというが、この箱からは異常な殺気というか、気迫を感じるんだが……


 その異様な気迫を感じてか、会場の熱気は徐々にどよめきに変わっていった。

「な、なあ、あれってビフだよ、な?」「お、おう……そう聞いてるけど」「なんか、いつもと感じ違くね?」「ちびりそうだわ」


 男たちもざわつき始める。……え、なに、俺初参加でなんかトラブルにでも見舞われる感じ?

 視線の先で、箱がゴツッ!ガァンッ!と軋む。嫌な音が響く。

 小さく、でも確かにメキメキッという音が。いや、やばい。逃げ――


 メキャッ――


 嫌な破砕音と共に木箱が崩れ、中から姿を現したのは二体の真っ赤な牛。全身の血管は浮き出てどくどくと脈打ち、筋肉は爆ぜるように盛り上がり、角はまるで重機のようにぶっとくて長い。これのどこが温厚だ、ふざけんな!?


「す、す、〔スカーブルズ〕だぁぁぁ!!!!」


 誰かの叫びに呼応するように、真っ赤な猛牛スカーブルズは大きく「ブウオォォォォッッ!!」と唸りを上げる。平和な街の真ん中に、阿鼻叫喚の地獄が誕生した。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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