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麻痺無双!~麻痺スキル縛りで異世界最強!?~  作者: スギセン
3章

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45話 唸れ、麻痺の連鎖

 ゴブリンたちの無数の群れの中、やたらデカいゴブリンが二体、こちらを見下ろすように立っていた。

 ただ立っているだけで、森の空気が重く淀む。


 肩幅は俺の二倍、胴体は樽みたいに太い。皮膚はどす黒く、あちこちに戦いの古傷が刻まれている。手には、粗悪ながらも凶悪な存在感を放つ手斧。


 こいつら、ゴブリンの上位種――〔ホブゴブリン〕ってやつか?


 そいつらはニヤニヤと口を裂き、赤く濁った目で俺たちを眺めながら、周囲のゴブリンに手で指示を出していた。

 嫌な予感しかしない。いや、予感というより確信だ。これから地獄が始まる。


「来るぞ!」

 俺は反射的に魔力を込め、叫んだ。


「【パライズ】!」


 せまりくる一匹の動きがピタリと止まる。その隙をラヴィが逃さない。鋭い剣閃が閃き、首が空を舞った。

 さらに別のゴブリンが突っ込んでくるが、俺の【パライズ】で固まり、ラヴィが容赦なく斬り伏せる。


 後方からベルが【暴波泡】を数発撃つ。……が、ぽよぽよと転がり、木の根っこに当たって弾んだだけだった。

 それでも、相手の足を止める程度の牽制にはなっている……はずだ。


「ふぅ……数は多いが、これくらいなら、なんとか――」

 そう思った瞬間、森の奥からドドドッと地響きが迫った。現れたのは……ゴブリン、追加二十体ほど。背筋が凍る。血の気が引く音が自分でも聞こえた気がした。


「嘘だろ……」


 一体ずつ麻痺らせる? いや、無理だ。俺の魔力だってそんな持久戦に耐えられない。どうすれば――。


 その時、頭の奥で何かがはじけた。


『スキル【麻痺連鎖(ショック・チェイン)】を獲得』

【スキル:麻痺連鎖(ショック・チェイン) Lv1】

 効果:対象を5秒間麻痺させ、近くにいる最大10体の敵を麻痺させる。

 消費MP 50


 脳裏に浮かぶ、聞き慣れない文字列。新スキルだ……!とにかく、今は迷ってる暇はない!


「頼むぞ! 痺れ散らかせ、【麻痺連鎖(ショック・チェイン)】!」


 俺の掌から小さな稲妻がほとばしり、一匹のゴブリンに直撃。


「ギャギギギギギィッ」


 次の瞬間、バチバチと雷が隣の個体へ、さらに隣へと走り、まるで青白い鎖が空を駆けるように、ゴブリンたちが次々と硬直し、訳も分からずドサドサと崩れ落ちていく。


「おおおおおっ! これは……!」


 興奮と安堵が同時に込み上げる。今だ、逃げるなら今しかない!

「撤退だ! ベル、撤退――」


 言いかけた俺の視界に、ベルの姿が飛び込んできた。

 三体のゴブリンに囲まれている。

 ベルの顔は恐怖で引きつり、唇が震え、助けを求める声すら出せずにこっちを見ていた。


「ベルぅぅぅぅ!!」


 叫んだ瞬間、ゴブリンの粗悪なナイフが振りかざされる。ベルまでは数メートルの距離。間に合うはずもない。こんなところで、仲間を……ベルを失うのか。彼女を……失いたく、ない……!


 俺は反射的に手を伸ばし――

 同時に、頭に焼けるような感覚が走った。視界が灰色がかり、世界全体にパリパリと電気が走る。


 そして、全ての動きが止まる――いや、極端に遅くなっていた。

 風がほとんど動かず、土埃が空中で静止している。


「……なんだ、これ……? いや、それよりも――」


 戸惑う暇もなく、俺は全力でベルへ駆けた。

 ゆっくりと落ちてくるナイフの軌跡をすり抜け、スタンブレイカーで周囲のゴブリンを叩き潰す。

 骨が砕ける鈍い手応えと、嫌な振動が腕を伝う。吐き気がこみ上げるが、構っている暇はない。


 次の瞬間、世界が色を取り戻し、音が押し寄せた。

 ゴブリンたちは同時に崩れ落ち、ベルは呆然と俺を見つめていた。その目は、目の前の出来事を受け入れらずに大きく見開かれている。


「大丈夫か、ベル!」

「……え?」

 

 息を切らしながら言うと、ベルはかすかに頷いた。

 ラヴィが血を拭いながら戻ってきて、「この数、キツイかも」と短く言う。俺も同感だ。


「今のうちに撤退しよう――」


 その時だった。

 ゴブリンの群れの奥から、ドガァン!と衝撃音が響く。群れが何者かに蹴散らされている。


 ゴブリンの集団の中から現れたのは――二メートル近い巨体。全身を覆う真っ白な毛。頭にはヤギのような角、そしてウサギのように長く垂れた耳。

 そいつは戦場を軽やかに駆け、ゴブリンを次々と粉砕していく。


 最後の一匹を叩き伏せると、大きく伸びをして――。


「ふあぁ……よく寝た」


 戦場とは不釣り合いなのんきな声が、静まり返った森に響いた。


「ん? なんだお前ら」


 そいつは耳のあたりをポリポリとかきながら、ゴブリンたちの亡骸の上で平然と立ち尽くしている。


「ギ、ギギヤッ!ギャギャッ!」


 ホブゴブリンが怒りを露にして、唾を撒き散らしながら何かを叫んでいる。


「おうおう、うるせえな」


 彼は素手のまま、ホブゴブリンと対峙した。そしてポキポキと指を鳴らすと、ボクシングのようなファイティングポーズをとった。

 その異様な気迫に俺は思わず唾を飲んだ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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次回もよろしくお願いしますm(_ _)m

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