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けんぽう部  作者: 九重 遥
秋から冬へ
83/129

83話 2016年のサミットは伊勢志摩!

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

 皆の前にはお題箱。

「アリア。検閲は?」

「終えてます」

 アリアの返答に、緋毬はそうかと頷く。

 そして、部員をゆっくりと見回しながら、緋毬は言った。 

「皆、準備は出来たか? 神への祈りは? 悔いの残らぬ人生を過ごせた自信は?」

「ねぇ、今からお題箱引くだけだよね?」

「私たちは見たくないものを見ず、見たいものを見る。もし、それを否定する者あらば研究所を灰にしよう。勝てば官軍負ければ賊軍、盛者必衰の理をあらわし、勝者の論理をしたためよう」

「ねぇ、今からお題箱引くだけだよね?」

「我らけんぽう部、いざ修羅の道へ」

「「いざ、修羅の道へ!」」

 千歳以外の部員が口を揃えて言う。

「もしかして打ち合わせしてる!? ノリがよすぎない!?」

 千歳は皆を見るが、誰も千歳を相手をしない。

 アリアがお題箱に手を入れ、一枚の紙を取り出した。

「ええと『47都道府県、三重』と書かれております」

「「…………」」

「え、え?」

 場に沈黙が流れる。

 千歳はその沈黙の意味がわからず右往左往するが、誰も千歳の視線に応えない。

 ただ、黙ってお題箱に書かれたお題を見つめるのみだ。

「……これはギリギリありかな?」

 幾ばくかの沈黙の後、ポツリと緋毬が言った。

「うーん。なしかありかで言えばありだね」

「わたくしは大丈夫ですわ」

「アリアは給仕役ですので、皆様の指示に従います」

 御影、セルミナ、アリアの言葉に緋毬は大きく頷いて宣言した。

「よし、本日のお題は三重県でいこう」

「あ、通った」

 わけがわからないまま、固唾を呑んで見守っていた千歳が安堵をつく。

「さて、三重県って言えば国だよな?」

「え?」

 意味のわからない言葉が緋毬の口から出た。

「そうだね。三重県はうまし国と呼ばれたり、日本まんなか共和国だったりと複数の国の名称を持っているね。それと、規模がでっかいから日本に多々あるミニ独立国とは違う括りで分類されたりしてるね」

「知らない言葉が色々出てきた!?」

 千歳の驚愕に、御影は頬を緩ます。

「ふふっ、最初から説明するとね。美し国って言うのは三重県は自然や美食や歴史に恵まれてたからそう呼ばれたそうだよ」

「確かに、三重県って伊勢神宮があったり世界遺産に登録された熊野古道とかありますもんね。歴史と自然があります」

「あら、千歳。ニンジャを忘れちゃ駄目ですのよ」

 フフンと鼻をならしながら、セルミナは言う。

 セルミナの自慢気な様子を見て千歳は、やっぱり外国の人って忍者が好きなんだなぁと微笑ましいものを感じた。

「そうですね。伊賀忍者も三重県ですね」

「ええそうですわ! あぁ、一度でいいから目の前で超能力を見てみたいですわ」

「違う忍者ですよ、それ! 普通の忍者は超能力使えませんからね!」

「ですわ?」

 あれーと首を捻るセルミナ。

「くくっ。では次の説明をするね。日本まんなか共和国は福井県、滋賀県、三重県、岐阜県の4県が属する組織の名称でね、広域的な観光誘致だとか日本からの独立を狙ってるとか、まことしやかな噂が流れているのだよ」

「前者と後者全然違いますよね!? というか後半嘘ですよね!?」

「複数の県が一緒になっているので普通のミニ独立国とは本気度が違うと言われてるね」

「騙されない、僕は騙されない。ミニ独立国なんて本当はないんだ。そもそも日本に独立国っておかしいんだ」

「千歳君は疑り深いなぁ。ねぇ、アリア君、ミニ独立国ってあるよね?」

 御影の問いにアリアは無表情で頷く。

「はい。日本には40を超えるミニ独立国があります」 

「ええっ!? 本当に!? 多くない? そんなに独立を企んでる国あるの? ほぼ全ての県の数だよね、それ!」

「いいじゃありませんの、独立を企むぐらい。問題は天むすは三重県発祥の食べ物なのに、あたかも名古屋が発明した食べ物のように振る舞われていることですわ!」

「独立は軽い問題じゃないよね!? 日本分裂だよ! いきなり出てきた天むすよりよっぽど重要だよね!」

「まぁ、千歳。天むすを馬鹿にしますの?」

「馬鹿にはしてないけど……置いておいていい問題だ、だよね?」

 セルミナの目つきが怖いと、千歳は緋毬に助けを求めるように視線を投げかける。

「まぁ、落ち着けセルミナ。天むすの件はな、ドラマがあるんだよ。それを知らずに非難するのはわたし的に良くないと思うんだ」

「そうなんですの?」

「ええとな……」

 三重の話は何処へやら。

 天むすの話になり、近辺に天むすを売っている店の話に移行し、その日の部活は終わった。


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