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けんぽう部  作者: 九重 遥
夏から秋へ
63/129

63話 作ることに意義がある!

 今日も今日とて部活の日。

 場所は家庭科室。

「御影と千歳とアリアが送る、お料理教室」

「さて、まずは役割紹介を。アシスタントの御影と」

「料理担当の千歳と」

「司会進行のアリアで今日はお送りする予定です」

ででんと効果音が発生しそうなノリでそこに集まった三名の部員が名乗りをあげる。

「さて、今日の料理は何だろうか、千歳君」

「今日はカレーパンを作らされます」

 前回、前々回で千歳はカレーパンのことが全然わかってないと糾弾されたのだ。

 だから、カレーパンのことをわかるために一度作るべきだという話になったのだ。

「うん。これでカレーパンの奥深さを知って千歳の人生が潤うこと間違いなしだね」

「嗚呼……千歳様のどす黒い人生が薔薇色模様に染まるのですね。メイドロボとしてマスターの人生が潤うことに感慨に似た気持ちが湧いてきます」

「カレーパンを知らなかっただけでそこまで言われるの!?」

 千歳が悲鳴を上げるが、御影とアリアはうんうんと首を縦に振るのみだ。

「まぁ、製作時間の関係上、発酵と揚げる作業は千歳君の自宅で行う予定だけどね」

 パンを作る作業は常に発酵との戦いなのだ。

 一次発酵、二次発酵という工程があり、その度に生地を寝かせないといかない。

 何もしなくて置いておくだけでいいのだが、その分時間がかかるのだ。

「人数が少ないのは残念ですね」

「セルミナ様は参加できずに口惜しがっていました。あと、出来上がったカレーパンを持ってくるようにとの言付けを預かっております」

「そこまで食べたいんだ、セルミナさん……」

 セルミナの食欲に少しビビる千歳。

「というより、何で僕の家で全部やらないのです? その方が手間がないと思うのですが」

「それでも良かったんだが、活動実績が欲しくてね。使うことにしたんだよ」

 けんぽう部の活動にカレーパン作りが何の関係があるのだろうと千歳は思うのだが、ツッコムのは止めておいた。

「まずボウルにイースト菌と塩を入れ、そこにぬるま湯を入れます」

 千歳は手際よく作業しながら、説明を入れる。

「そして、暫く放置します。一次発酵とか言われるやつです」

 家庭科室の窓際にボウルを置く。発酵は適度に温かい場所が良いのだ。

「で、その間に中身のカレーを作ります。今回は時間の関係上既成品のカレーでいきます」

「そのまま使うのかい、千歳君?」

「いえ、ちょっと煮詰めます。粘度があったほうがパンに合いますから」

 そして、弱火で煮詰めること10分ほど、ちょうどいい塩梅になった。

「うん、ではこのぐらいで。そして、一次発酵の方もちょうどいい具合ですね。では、ボウルにふるった小麦粉、オリーブオイルを入れ先程のイースト菌を入れてこねます」

「では、この作業は御影様がお願いします」

 司会進行のアリアがそう発言する。

「私がかい?」

「ええ。千歳様が御影さんの手の成分で作った方がいいと駄々をこねまして」

「変態チックだな、千歳君は。少し引くよ」

 言葉では非難しているが、御影の動作には一切の拒否感はなかった。

「言ってませんからね! 信じないでくださいよ!」

「はは、わかってるから」

 ある程度生地がまとまりだしてから、生地を机の上に移しこねていく。

「最初はベチョベチョしてる感じがしたけど、こねていくと感触が良くなってきたよ。いつまでこねればいいのかな?」

「そうですね。女性の乳房ぐらい(巨乳)………と千歳様が仰ってました」

「千歳君、戦争だ」

 生地をドスンと机に叩きつけ、御影は千歳を睨みつける。

「言ってないですし! アリアも変なこと言わないで!」

「さて、アリア的には十分な弾力だと思いますが。千歳様、触って確かめてください」

「この流れで僕が確認するの!?」

「千歳様が生地が巨乳の感触があるか確かめるだけのお仕事です。御影様のお手製ですので、御影様の胸と思って確かめてください」

「凄くやり辛いですけど!?」

「さ、五年後の私だ、きっと……」

「凄くやり辛い!?」

 御影が千歳を睨む中、千歳は確認をする。大丈夫と判断してボウルに戻し、ラップをする。

「で、この生地を寝かし。カレーを包んで揚げれば出来上がりです。出来上がったカレーパンがこちら」

 アリアが密封したボウルを直し、どこからかカレーパン取り出す。

「出来上がったものがあるの!?」

「昨日のリベンジです。それと家庭科室には電子レンジとオーブンがありますので」

「カレーパン作る意味あったの!?」

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