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けんぽう部  作者: 九重 遥
夏から秋へ
55/129

55話 御影とあの人

 今日も今日とて部活の日。

 場所は廊下。

 御影が物理実験室に行く途中のことであった。

 それを見たのは。

「な、な、何をするだァー!?」

 そして、それを見た御影の第一声はこうだった。

「え、御影さん?」

「ん?」

 そして、そのおかしな声を聞き振り返ったのは二人。

 一ノ瀬こよりと千歳だった。

 二人は廊下に立ち止まって話していたのである。

 そこに御影が登場したのだ。

「せ、生徒会長! な、なんでここに!? いや、それは百歩譲っていい。しかし、千歳君と接触するなんてどういう了見なんだ!?」

 学校の廊下に生徒会長がいるのは変ではないうえに、了見も何もないだろうとツッコミどころ満載な言葉を御影は放つ。

「ど、どうしたのですか御影さん?」

 そのあまり剣幕に千歳は混乱する。

 対して、言われている側の一ノ瀬こよりは少し困ったように額を掻く。

「了見と言われても困ります、御影さん?」

 少し迷惑そうなその仕草に、御影はキッと眉根を寄せる。

「騙されないぞ! 千歳君を毒牙にかけようとしても無駄だ!」

「毒牙って、一ノ瀬先輩はそんなことしないですよ」

「騙されちゃ駄目だ、千歳君! というか騙されかかってるよ! 生徒会長を庇った時点できゃつの毒牙にかかっているよ!」

 御影は自分の身体をこよりと千歳の間に挟み込む。

 それはまるで親猫が子どもを守るように。

「生徒会長の狙いは恐らくけんぽう部の廃部だろう。けんぽう部で一番おとしやすそうな千歳君を真っ先に狙ったんだろうが、そうはいかないよ!」

 そして、御影はキリッと生徒会長を睨む。

「おとしやすそうなって……」

 自分は御影にそのように思われていたのかと愕然とする千歳。

「酷い言いがかりですね」

 はぁと溜息がこぼれる。

「それ以外に千歳君と接触する理由がないからね! さぁ、さっさと国に帰るがいい! 君にも家族がいるだろ」

 御影はシッシと虫を払うように手を振るが、こよりは意に介さず告げる。

「理由ならありますよ、御影さん」

「何ッ!?」

「だって私は千歳さんの友人ですから、会えばお話くらいします。当然でしょう」

「なっ! 友人って、弱みを握られたのか千歳君!?」

「ええっ! されてないですよ! 一ノ瀬先輩良い人ですし」

「騙されるな、千歳君。きっと生徒会長にとって友人とは自意識をなくした人形の蔑称だ!」

「また、御影さんは変なこと言う……」

 こよりは呆れた声をだす。だが、御影が止まらない。

「先日の駅前のように、アレしちゃったんだろう!」

「アレって何です?」

「御影さん!」

 千歳に聞かれたくないのか慌てて御影の名前を呼ぶこより。しかし、御影はやっぱり止まらない。

「駅前にたむろしてた若者がいたんだ。柄が悪くてね、皆困ってたんだ。で、生徒会長が一人で奴らの元へ。その後はどうなったのかは誰も知らない。ただ、後日その若者が清掃活動に勤しむ姿が目撃されるのみ」

「それって……」

「生徒会長に聞いても、素知らぬ顔で友人になって清掃活動の良さを教えこんだというだけんなんだ!」

「ああもう……秘密にしといてって言ったのに」

「凄い嘘っぽいですね、それ……」

 御影は千歳の言葉に頷く。

「ああ。そうだろう。だからこそ、私は警戒しているんだ。生徒会長は私が千歳君の友人という情報を察知して、こうして魔の手を伸ばしてきたんだ!」

「凄い誤解ですね、それは……」

 こよりはクスっと笑った。

「私が千歳さんの言いなりになることはあっても、千歳さんが私に言いなりにすることは出来ません」

「えっ……」

 普段の生徒会長ではあり得ない言動に御影は止まる。

 そして、こよりは告げた。

「それに、私達が出会ったのは千歳さんがこの学校に入る前のことですから」

生徒会長は実は難産でした。書いてはボツが3回ぐらいあります。

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