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けんぽう部  作者: 九重 遥
夏から秋へ
42/129

42話 物を投げ続けて幾星霜

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

「何で神代流と扇子が関係ありますの?」

 セルミナが疑問を投げかけた。

 神代流は武術だ。

 そこに何故、扇子という暑さを和らげるために使う物が関係するのか。

「わかったぞ、千歳君。鉄扇みたいに近距離の武器に使うのだな!」

 ここぞとばかりに御影が発言する。知的キャラへの昇格を諦めてはなかったようだ。

「鉄扇というのは、扇子の骨を鉄製でこしらえた扇子のことだ。護身用の武器として古くは戦国時代から登場するという。神代流も戦国時代からあったそうだから、鉄扇術に似た技が残されていたに違いない!」

 ズバンと効果音が出そうな勢いで御影は断言する。

「…………ファイナルアンサー?」

 そんな御影にアリアは問いかける。

 本当にその答えでいいのかと。

「…………ファイナルアンサーだ」

 ゴクリと唾を飲み、御影が答える。

 そして、静寂の後。

「残念!」

「うが~~~。やっぱり私に知的キャラは無理なのか!」

「では、千歳様。解説をどうぞ」

「いいけど、さっきの小芝居なんなの……?」

 若干引きながら、千歳は咳をして空気を入れ替える。

「ま、まぁ御影さんの言ってたことも間違ってない部分があるよ。神代流は色んな武術を取り入れて作られた武術なんだ」

「取り入れたつーかパクっただけだけどな」

 千歳の説明に緋毬がボソリと呟いた。

 千歳は緋毬の言葉に汗が出るが、聞かなかったことにした。

「そ、それで神代流に近接武器を扱う項目があるんだ。それが三檻乃型。ぶつけるのに適した武器なら剣、槍、斧、果ては扇子のようなものまで何でもござれって感じで」

「凄いな。千歳君は色んな武器を扱えるのか……」

「みー、違うぞ」

 思わず驚愕の声をあげた御影にちょい待ったと制止をかける緋毬。

「ひーちゃん、違うって?」

「千歳が言ってただろ。ぶつけるのに適した武器ならって、三檻乃型は近接武器を投げる流派なんだ」

「武器を投げますの!?」

 近接武器は手にしてなんぼのものだ。それを手放すとはどういうことか。

「たはは。緋毬の言う通り三檻乃型は武器を使わず、投げる武術なんだ」

「それは……もしかしなくともまずくないかね?」

 戦場で自分の武器を投げるは自殺行為。外したが最後、無手になるのだ。

 御影は戸惑いながらも当然の疑問を千歳に投げかける。

「うん。三檻乃型は一投一殺。投げれば必ず相手を倒す。倒せなかったら負けという武術なんだ。故に生き残るためには必中を自分に課さないといけないんだ」

 対して千歳はあっけらかんと明るく言った。

「三檻乃型を習う際に誓う言葉があるんだ」

 そして、咏うように千歳は言う。

「『我は不忠の徒なり。

 他の武芸者の誹りを受け。

 鍛冶が作りし武器を無碍に扱う。

 只、ひたすらに己の道を往くために。

 報いは受けん。

 しかし、それは敗北の時。

 おのが命をくれてやる。

 求めるは最強。

 差し出すは命。

 必殺を必至と己に課し。

 只、ひたすたに己の道を往く』ってね」

「なっ、おかしな武術だろ」

 皆を代表して緋毬が言った。

「おかしいというかイカれてますわ!」

「アリアも同意します」

「すまないが、私もだ」

「何も否定できない!?」

「で、更におかしいのはその武術をマスターした千歳は百発百中の精度で物を投げるってことだ」

「「うわ、こわっ」」

 この日、千歳はおかしいということで結論が出た。

次回は

『43話 上か下かは選ばせてやる!』

『44話 2016年サミットは茨城つくば!』

『45話 東京ドーム約46797個分の大きさです』

を予定。

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