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けんぽう部  作者: 九重 遥
冬から春へ
129/129

129話 愛知じゃないヨ、愛媛だヨ!

今の愛媛のキャッチコピーのヒントはサブタイトル。



 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

 前話の続き。

「ちっ、千歳にキャッチフレーズを説明するのに時間取られて、全然愛媛のことが語れない」

 緋毬はジト目で千歳を睨む。お題箱をやり始めてはや三十分、まだ何も進んでいないのである。

「ご、ごめん」

「ひーちゃん、いいじゃないか。愛媛の愛がちーちゃんにも理解してもらえたんだし」

 まぁまぁと緋毬をなだめる御影。

 愛媛の愛について一人でも知ってもらえれば、それは有益なのだ。

「では、お題箱のお題『愛媛県』について話し合いましょう。では、千歳様、愛媛県といえば?」

「え? え? えーーーっと、道後温泉かな? テ、テレビでもよ、よく出るし?」

 いきなりパスが来ると思わなかった千歳。しどろもどろになりながらも、なんとか答える。

 なぜか愛媛県に熱を入れている女性陣、迂闊な答えは言えない雰囲気だ。怒られないかなと恐る恐る皆の反応を見ると、

「なかなかいい所を突くな」

「ですわね。さすが、千歳ですわ」

 なかなかの好評価。千歳の胸に安堵が。

「あ、受け入れられた。よかった」

「愛媛県の過去のキャッチコピーにも観光愛媛と銘打つくらいだからね。有数観光場所の道後温泉は愛媛には欠かすことができないよ」

「過去の? 今のキャッチコピーはなんで……」

「そもそも道後温泉というのは……」

「え、今のキャッチコピーは?」

「ちょっとカメラ止めて」


 言ってはいけない言葉がある。

 普段なら問題はないが、先程のやり取りがあるため説明がし辛いのである。

 ついでに言っておくと、愛媛県は愛知県とは仲が悪くないことを明記しておく。むしろ、同じ愛の文字があり、親しみがもてる。観光誘致にも積極的だ。直行便も出ているよ!

「え、ええと……そうそう、道後温泉の話だね」

「日本最古の温泉と言われますわ!」

 指を天に突き出しながら宣言するのはセルミナ。

「うん。伊予国風土記遺文には、聖徳太子が来浴したことが記されるほど、昔から愛されてきたんだ」

「へぇ、そんな昔からというか……そんな歴史の偉人が入りにきてたんだんね」

 教科書に出てくるほど有名な人が、入りに来たんだと驚く千歳。昔は飛行機や電車なんて便利な乗り物はなかったから、当然徒歩だろう。並々ならぬ熱意で入りに来たに違いない(個人の感想です。実証するものではないのでご注意を)

「他にも文豪にも愛されてるね。夏目漱石の『坊っちゃん』の舞台にもなったし、近代俳句の父とも言われた正岡子規をはじめ、与謝野晶子や吉川英治も道後温泉に来遊してるんだ」

 セルミナの奇行に反応せずに淡々と説明を続ける御影。皆も慣れたもので、ふむふむと御影の話を聞く。

「勿論、温泉だけじゃないね。他にも観光都市として愛媛は魅力的な面が多数ある」

「ズバリ、食事ですわね!」

 皆に流されたセルミナだが、こちらも慣れたもので気にすることなくグイグイ話に入ってくる。

「ふふっ、確かに食事も美味しいものが多いね」

 御影としては城とか仏閣の話をしようと思ったが、セルミナの期待に目を輝かせた様子に軌道修正する。

「観光にきて、飯が不味かったら興ざめだからな」

「海が周りにあるので海産物が豊富だからね。名物にもなっているね。例えば、じゃこ天とか鯛めしとか、たこ飯、あなごめし……」

「美味しそうですわ!」

「特に面白いのは鯛めしだね。こちらは愛媛の中でも地域によっては同じ名前なのに別物の料理が出てくるんだ」

「えっ!? 違うのですか! 鯛めしってあれですよね。鯛をご飯と一緒に炊くやつですよね?」

「うん。一般的に鯛めしと言われるのは炊き込みご飯のタイプだね」

 余談だが、鯛を一匹丸ごと入れて炊き上げるのは素人にはおすすめできない調理法なのでご注意を。鯛の重みでご飯の対流が妨げられ、ご飯がベチャッとなるのだ。なので、ご家庭では丸ごとではなく切り身にして炊き上げる方法をおすすめする。

「でも、宇和島を中心とした南予エリアでは、生卵を溶いた甘めのタレに鯛の刺身を入れてグルグルってかき混ぜて、ご飯の上にのっけて食べるんだ。もぅ、これがたまらないくらい美味しいんだ! 甘~いタレが生卵によくあってね。それを熱々のご飯でいただくのがたまらないんだ!」

「食べたいですわ!」

「くそぅ、私も食べたくなってきたな。みーめ……」

 御影の説明で皆食欲をかきたてられる。想像したら駄目だ。甘い醤油ベースのタレと卵、コリコリと歯ごたえの良い新鮮な鯛の刺身。美味いに決まっている!

「そうそう、愛媛にはちゃんぽんも面白くてね。八幡浜にあるちゃんぽんは長崎とは違い……」

「禁止ーー!! その話禁止ーー!!」

「ですわー!! もう今日のご飯は鯛めしに決めましたの! お腹がすく話題は禁止ですわーー!!」

 八幡浜のソウルフードである八幡浜ちゃんぽんを語ろうとしたら、レフェリーストップが。

 鯛めしでさえ、食べたくてたまらないのだ。これ以上ご飯の話をされると危険すぎる。

 愛媛のご飯は美味しい。それでいいじゃないか。

 観光客お待ちしております。


愛媛はいいとこ、寄っといで。

たまに愛媛空港の蛇口からポンジュースでますし。

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