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けんぽう部  作者: 九重 遥
冬から春へ
126/129

126話 光あるところに陰がある。何度滅ぼされようと……

 今日も今日とて部活の日。

 前話の続き。

「凄かった……」

「どうしましたの、千歳」

 どこか放心した様子で虚空を見つめる千歳の様子に、セルミナはこそっと緋毬に聞いた。

「この前戦隊物の話しただろ。千歳が見たいって言ったから今までの放送分貸したんだ。そしたらコイツ一夜で見やがったんだ」

「だって面白かったから」

 緋毬は特に声を抑えてなかったため、千歳にも聞こえていた。

 弁明の言葉を千歳は言う。

 悪いのは面白いからだ。

「なるほど、それで余韻がまだ残っているのですわね」

 放課後まで余韻が続いてるのは長いが、それだけ面白かったということだろう。

「あれ見たせいで戦隊物の常識が一気に崩れたよ」

「戦隊物の常識?」

 実は今やっている問題作の戦隊物しか見たことがないセルミナ。千歳の言ったことがわからず首を捻る。

「色々あるな。まぁ、例えば色だ」

「色?」

「戦隊物のヒーローは色によって性格が決まっているんだ」

 緋毬はセルミナの様子を見て解説を始めた。

「赤はリーダーで熱血漢、青はクール、黄色はムードーメーカーって言う感じだ。まぁ、マンネリを防ぐためにイメージを変えることもあるからあんまあてには出来ねぇけど」

「なるほどですわ!」

「あの戦隊……レッドは熱血どころか、女性口説いてばかりだし、イエローは戦闘にも参加せずカレーばっかり食べてるけど、いる意味あるのって言いたくなる」

 他の仲間が戦っているのに一人カレー片手に観戦しているのだ。敵も空気を読んでいるのかイエローだけは攻撃しない。

「先週の料理勝負では大活躍だったじゃねぇか」

「レッドと浮気相手の夫さんのカレーを否定して、『明日来てください。俺が本物のカレーを教えてあげますよ』って言うのはどうかと思う。色々間違ってるよね」

「その流れで話をうまく纏めたのは驚きでしたわ」

「料理食べさせた後、普通に良いこと言い出したからな。ちょっと感動した」

 その場面を思い出しているのか、緋毬とセルミナは感慨深げだ。

 場にちょっと良い空気が流れる。

 千歳にしても二人の感想と同じなのだが、釈然としないのも確かだ。

 話題を入れ替えることで空気の入れ替えも図る。

「あと、ピンク色の人。一人だけ戦隊衣装じゃなくサンタクロースのコスプレなんだけど……」

「あれな」

 戦闘シーンでは一人異色な雰囲気を醸し出してる。

 というより、シュールだ。

 余談だが、なぜ赤いサンタ服を着ているのにピンクというのかというとピンクの腕章をつけているからだ。

「攻撃食らっても、ピンピンしてるのは不思議ですわ」

 戦隊衣装、つまりバトルスーツがあるから敵の攻撃を食らっても軽微のダメージで済むというのは納得出来る話だが、サンタクロースの衣装ではどう頑張っても説明出来ない。

「お色気枠だから気にするな」

「ダメージ食らっても服にしかダメージ受けていないもんね」

 最終的には下着姿になって、『くっ殺せ』というのが定番だ。視聴者にはこの要素がかなり好評なようだ。

 エロいことは正義なのだ。

「お色気枠だからだ。気にするな」

「それに毎週ピンクの人、別人になってますわ」

「お色気枠で使い捨てヒロインだから気にするな」

 最初の方は、ピンクの中の人の交代理由は説明があったのだが、最近では面倒になったのか説明もないまま進んでいく。本編でもピンクは仲間達に今までいたかのように扱われてたりする。なので物語的には不都合なく話が進んでいく。

「きっとピンクに関しては引き継ぎ作業がスムーズに行われてるんだろ」

「業務的と言うか会社的と言うか……」

「ヒーローだって組織なんだから、無理やり納得しとけ」

 深く考えたら負けなのだ。自分をいかにごかますかが大事なのである。

「こんな戦隊嫌だって言って出て行ったブルーがマトモに見える」

「そして敵になったのは熱い展開でしたわ」

「逆に敵組織のブラックがこっちの方が面白いって仲間になったのも、よく考えたらおかしいよね」

「ブルーがこんな世界滅ぼしてやるってダークサイド堕ちしたのは一抹の哀愁を感じさせるな。理想に燃えて正義をこじらせるとこうなるとわたしたちに教えてくれたんだ」

「絶対製作者はそんな大層なこと考えてないよ。絶対ノリで作ってるだけだと思う」

「まぁ、そうだな。あの番組は基本ノリで作られてる」

「たまに前話の話と違ってたりしてますから、先週分を見てなかったと思う時もありますわ」

「次回予告やあらすじだけで話を終わらしたりするからな。強引な一話完結だ」

 話が続きそうになっていても、一話完結のため無理やり話を終わらす。

 ある意味、熱意あるポリシーだと言えなくもないが、視聴者には混乱のもとだ。

 余談だが、しっかりと次回予告を見ないといけないためチャンネルを変えずにコマーシャルをちゃんと見るとスポンサーには好評だったりする。

「でも終わっちゃうんだね……」

「だな……」

「そうですわね」

 三者窓の外を眺めながら、言う。

 今週の放送で突然流された放送終了のニュース。

 予定ではもう1クールあったはずなのだが、大人の事情で打ち切りとなったのだ。

 はじけるのも程々に。

 専従戦隊ニゲルンジャーは大切なことを身をもって教えてくれたのだった。

次の更新は不規則になるかと。ごめんなさい。

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