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けんぽう部  作者: 九重 遥
冬から春へ
125/129

125話 専従戦隊ニゲルンジャー

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

「戦隊物って良いよなぁ……」

 緋毬のこの一言が始まりだった。

「いきなりどうしたの?」

 千歳は携帯をいじってた手を止めて緋毬に聞く。

「いや、な。最近戦隊物にハマっててな」

「土曜の深夜にやってるやつだよね。私も見てるよ」

「わたくしも見てますわ! 録画で、録画でですわ!」

 そして、話を聞いてたのか御影とセルミナも話に加わる。

 何故か録画を強調するセルミナ。褒めて欲しいのだろうか。

「え、皆見てるの!?」

 見てないのは千歳一人。助けを求めるように給仕をしているアリアを見るも、

「アリアも一般教養として見ております」

 無表情で首を振るのであった。

「その番組って一般教養言うほどなの? テレビだよね? 言っちゃ悪いけど視聴対象者は児童だよね?」

「一般教養というか一般常識になりつつあるかな」

「だな。それに戦隊物が児童向けつーのは偏見だぞ」

「そうだよ、千歳君。今話してるのもそうだけど、今の戦隊物は児童の親も対象にしてるから、大人が見ても面白いんだ」

「ですわね。わたくしも馬鹿にしてましたが、見てハマりましたわ」

 ウンウンと皆が頷く。

「はぁー。そうなんだぁ」

 千歳は口を大きく開けて皆の話を聞く。

 千歳の戦隊物の知識は何故か昭和な感じなので、平成の戦隊物事情を知って感心するばかりだ。

「先週なんて、浮気した主人公が料理バトルで浮気問題を解決する話だったんだぞ。すげー面白かった」

「来週は海外に高飛びする話でしたわよね。楽しみですわ!」

「内容がブラックすぎるよ!? 戦隊物だよね!? 一個も戦隊物の要素なんて出てきてないんだけど!?」

「料理バトルに勝ったけど、主人公は浮気相手との関係を清算することを選んだんだ。その時、追いすがる浮気相手に武器を使って説得したんだ」

「『それ以上俺につきまとうな。俺のこの手は汚れているんだ』って物悲しく言う台詞ですね。アリアもいつか千歳様が言ってくれるのではないかと期待しております」

「ツッコミどころがありすぎて困るんだけど!? 武器使ってって脅したの? 犯罪じゃないの!?」

「戦隊物にそれは今更だろう」

「そうだけど!? そうだけど!?」

 納得いかないと地団駄を踏む千歳。

 ヒーローならば、法を破ってもいいという暗黙の了解がある。

 厳密に法律を守るならば破壊活動をしている敵に対しては素手で制圧するか警察にお任せするしかない。警察に助けを求めるヒーローはちょっと嫌だ。

 戦隊物のヒーローは法律を無視して銃火器ぶっ放して、巨大ロボで暴れるのが美学である。

「ふふっ。ブラックなのは深夜枠だからだよ」

「そ、そういえば言ってましたね」

 聞き流していたが、確かに最初らへんで御影が言ってたのだ。

「伏線というやつですわ!」

「隠してもないし、さっき言ったばかりの言葉だろ。伏線って言うのか、それ?」

「使ってみたかっただけですわ!」

 悪びれず得意満面に胸を張るセルミナ。

 ここまで自慢気に言われた反論は出来ない。

「深夜だから、これだけ好き勝手にやれるってのはあるな」

 だから、緋毬はツッコミを入れずに話を進める。

 テレビは時間帯によって規制が違うというルールはないのだが、視聴する年齢層の違いからテレビ局側が自主規制している部分が緩やかになるのだ。

「深夜は児童見れないもんね」

 なら、安心かなぁと千歳は胸を撫で下ろす。

 浮気やら、脅迫がある番組は児童に悪影響を及ぼしかねないからだ。

「しかし、たまに可愛いマスコットキャラクターでたりするよね? あれって子ども向けも考慮してるのかな?」

「ええっ!?」

「でも御影。そのマスコットキャラクターは敵に悪堕ちウイルスを注入されて敵になるのが定番ですわよね?」

「その際、ゾンビっぽい外見になるのがホラーだね」

「絶対子どもが見ちゃいけない番組だ!?」

 どうなってるの、それと千歳は悲鳴を上げる。

「だから、何の因果か児童が見ちゃったせいで問題視されているんだ」

 だから一般常識となりつつあると御影は言う。

「子どもは深夜まで起きるなと言いたいな」

「変な戦隊物をやってる方がおかしいと思うんだけど」

「正論は言うな。だから今打ち切りされるかの瀬戸際なんだ」

「だけど、スタッフは打ち切り間際でも攻めてますわよね。潔さを感じる姿勢は武士っぽくてわたくし好きですわ」

「炎上のお陰で視聴率アップだヒャッホーって敵役の幹部が言ってたものな」

「……何か僕も見たくなってきたよ」

 悪に堕ちるってこういう事なのかなぁと千歳は思った。

 後日、緋毬に今までの放送された分の録画を貸してもらった千歳。

 一睡もせずに視聴したのはこれまた言うまでもないことである。

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