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けんぽう部  作者: 九重 遥
秋から冬へ
104/129

104話 領土戦争勃発!

 今日も今日とて部活の日。

 場所は物理実験室。

「あ………」

 千歳が物理実験室のドアを開けて、中を見回して、固まった。

「おら、止まるな。千歳」

 千歳に続いて部室に入ろうとした緋毬が千歳が邪魔で入れない。千歳の背中を頭突きをして、中に入る様促す。

「あ、ごめん」

「って何を見て固まったんだ……」

 と、緋毬が視線を巡らすと部屋の隅に以前なかったものがあった。

「こたつ……」

「こたつだな。ウィズみー」

 畳のスペースにこたつが鎮座していたのだ。

 御影はこたつに顔を載せてぐだーっと、とろけた餅のように垂れていた。

「ひーちゃん、千歳君。君達も入ってこないかい」

 そして、そのままの姿で緋毬とこたつフィールドへ誘う。

 緋毬と千歳は顔を見合わせた後、こたつへいそいそと入っていった。

 季節は秋が過ぎ、師走になり、肌寒く感じる季節。

 暖かい場所への誘惑には勝てないのだ。

「オーッホホホ。セルミナ・フォー・ストラグル只今参上ですわ!」

「アリアも参上です。おまたせしました」

 また戸口が開き、セルミナとアリアが入ってきた。

「お、二人共お疲れ~」

 御影も千歳もお疲れと口々に言う。ただ、両手はこたつの中に入ったままだ。

 顔だけ二人に向け、とろけた声で出迎える。

「あら? 皆さん。何に入ってるのですの?」

「ん? セルミナ君はこたつを知らないのかい。論より証拠だ。入ったらわかるよ」

 御影は手招きしてセルミナを誘う。

 セルミナは素直に呼ばれるままこたつへと。

「暖かいですわぁ!」

 そして、喜びの声をあげる。

「これが、ジャパンが誇る暖房器具、こたつだ」

「アリア君も入って来ないかい? 寒いだろう?」

 と、御影は唯一こたつに入ってないアリアを誘う。

「招待ありがとうございます。ですが、入るスペースが……」

「あ!?」

 そう、こたつは四辺の正方形。

 一辺が一人の領土となっており、アリアが入るスペースがない。

「よし、千歳。出ろ!」

「ええっ!?」

「大丈夫です。緋毬様。アリアはメイドロボ。アリアの意思は置いておきますが、メイドロボは人々のお役に立てることが喜びです。ハンカチを噛んで凍えながら皆様を見守りましょう」

「言葉の節々に不満がってる!?」

「よし、千歳。こたつの上に登っていいからそこで!」

「そこでじゃないよ! 変わってないよね? 出なきゃいけないんだよね?」

「でも、緋毬。誰かが千歳に凝視されなければならないのは照れくさいですわ」

「それに千歳君が邪魔で話がしにくい」

「アリア的に大賛成です」

「ちょっと皆、受け入れすぎじゃない!? 詰めればなんとかいけそうじゃん! 凄い窮屈になりそうだけど……」

「仕方ねーな」

 と、緋毬は立ち上がる。

「緋毬?」

 そして、千歳の領土へと行き、

「わっ!」

「よいしょっと」

 千歳の膝の上へと腰を下ろした。

「こっちのが広々出来て良いだろ。文句あるか?」

「えーえっと」

 千歳は頬を掻きながら、目線を逸らす。顔が少し赤くなっているのはこたつのせいか。

「はい! アリアにはあります! 実はアリアも狙ってました! 交代、交代! 場所はアリアの膝の上に千歳様がでお願いします!」

「動くの面倒だ。今日は我慢しろ」

 だが、アリアの意見は素気無く却下されたのだ。

 極楽、極楽と緋毬は千歳椅子に体重を預ける。

「ひ、緋毬?」

「何だ? つか、恥ずかしがるな。瑠璃がいつもやってるだろ? それと同じだ」

「瑠璃?」

 いきなり出てきた名前にセルミナが首を捻る。

「ひーちゃんの妹だよね? 千歳君は兄様、兄様って呼ばれて慕われてるんだ」

「何で御影さん知っているんですか!?」

 千歳の驚きに、御影はくくっと笑う。

「瑠璃君に会うと、毎回千歳君の話題をせがまれるからね」

 いやー慕われてるねと御影は微笑む。

「だな。瑠璃はよく、あのクソ野郎いつ来るんですかって聞きやがる」

「本当に慕われてるの!? 敬称じゃなくて蔑称で呼ばれてるんだけど!」

「冗談だ」

「何だ、よかった」

「本当はあの人って呼ばれてる」

「凄い他人行儀だよね!? 嘘だよね? それも嘘だよね?」

「あー千歳椅子は反発あるし、暖かいから楽だ。これから瑠璃に譲るの止めるか」

「聞いて、緋毬!」

「緋毬様! アリアも! アリアも堪能しとうございます!」

 そして、実は御影もセルミナも千歳椅子に興味が出てきたり。そんなコタツ戦争。

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