お米を調理する
先日の老人の件から数日。
オルライトも少し複雑な気持ちを抱えつつもいつものように仕事をこなす。
そんな中エルフ達が育てている米についても何かと考える。
冬夕の暮らしている国では米食の文化という事から相談相談を持ちかけた様子。
「フユの暮らしてる国って確かお米が主食の国なのよね」
「そうだけど、それが何かあるのか」
「エルフ達が育ててたお米の事で、何かいい料理とかないかなって」
そこにある米はうるち米ではなく細米だった。
冬夕が普段食べている米はうるち米なので、なんとも返事に迷う。
「何かいい調理法とか知らないかしら」
「こいつは細米だよな、こういう米は炊くよりも炒め料理に向いてるらしいぜ」
「炒め料理、油で炒めるとかそういう事?」
「ああ、チャーハンとかビリヤニ、ジャンバラヤとかそういうのだな」
「よく分からないけど、このお米は炒めて食べると美味しいという事なのね」
細米は炊くのではなく炒めると美味しい米である。
かつてあった米不足の際に外国から米を輸入した時にも調理法を知らなかったのがある。
細米は炊くのではなく炒めるのに適した米なのだと。
「つまりこの細いお米は炒め料理にすると美味しい、いろいろ試してみましょ」
「でも細米しかないのか?」
「他のお米もあるけど、そっちも見てみる?」
「ああ、見せてもらっていいか」
「ええ、少し待ってて」
それから少ししてまた別の米も持ってくる。
それは冬夕がいつも見ているようなうるち米だった。
そっちはシンプルに炊いて食べれば美味しいものだ。
「これはどうかしら」
「これはシンプルなうるち米なんだな、これは炊いて食べれば問題ないぜ」
「それでいいのね、でもお米だけだとなんとなく味気ないわね」
「あたしの国だと塩気のあるおかずで米を食うっていう事は多いかな」
「塩気のあるおかず、つまり塩味が重要って事なのかしら」
冬夕の暮らしている国では塩気のあるおかずで米をたくさん食べるのが主流だ。
それはかつての貧しさから少量のおかずで多くの米を食べるという事に起因する。
なのでおかずがたくさんあるというのはいい事でもある。
「でもお米にも向き不向きってあるのね」
「あたしの住んでる国だと過去に米騒動なんて事も起きてるぐらいだからな」
「それだけお米をたくさん食べてるって事なのね」
「ただうるち米は炊いて食べる、細米は炒めて食べるのがいいぜ」
「ええ、分かったわ、でも作り方とかがよく分からないのよね」
炊いて食べるうるち米はシンプルにおかずがあればいい。
細米はチャーハンやビリヤニ、パエリアやジャンバラヤなどにするといい。
細米の使い方を考える前に油やスパイスが用意出来るかだが。
「そういえば炒めて食べるのってスパイスが必要になるのよね」
「そうなるな、基本的にスパイスはほぼ必須だし」
「スパイスも確かエルフが育ててた気がするわね」
「エルフって器用なんだな、なんでも育ててるのかよ」
「スパイスも種類があるから、それの配合からかしらね」
その辺は詳しい人に任せればいいという事になった。
炒め料理も様々で、シンプルなのはやはりチャーハンなのかもしれない。
それもありまずは鍋も必要になるという事に。
「そういえば炒め料理だとまずはお鍋よね」
「そうなるな、中華鍋とかパエリアパンとか必要になってくるし」
「それってどんなお鍋なの?」
「えっと、こんな感じの鍋だな」
「なるほど、これならドワーフに頼めば作ってくれると思うわ」
ドワーフは鍛冶が得意だが、その一方で鍋なども作ってくれる。
つまり鉄などの金属の扱い全般に長けているという事でもある。
ドワーフに頼めば中華鍋もパエリアパンも作ってくれるだろうとのことだ。
「でもお米を炒めるのに専用のお鍋まであるなんて凄いのね」
「フライパンでも作れなくはないんだけどな、ただそっちの方が美味く作れるんだよ」
「つまりお鍋はお米を美味しくするための道具って事なのね」
「米の炒め料理って鍋もそうだけど、火力が大切だったりとかもあるからな」
「奥が深いのね、お米料理って」
家庭ではチャーハンもフライパンで作ったりするのは普通である。
ただやはり中華鍋やパエリアパンで作るものはそれだけ美味しいのだ。
調理器具もそれだけ大切という事である。
「とりあえずいろいろ試してもらう事にするわね」
「ああ、細米は炒めて食う、うるち米は炊いて食うのがおすすめだな」
「ならまずはお鍋を頼まなきゃね」
米を食べるにはまず調理器具から。
うるち米は釜で炊き、細米は鍋で炒める。
それはかつて細米を美味しく食べる方法を知らなかったのもある。
お米は奥が深いのである。




