魔族は多芸
こっちの世界は夏が始まりつつあり、暑くなってきた季節。
ミラールとの協力関係により派遣された魔族達も様々な仕事で活躍している。
驚くのは魔族は多芸であり、どんな仕事もそつなくこなしている事。
ドワーフやエルフなどもその協力関係に助かっているという。
「魔族って本当になんでもこなせるのね」
「うむ、魔族達が役に立っているのなら嬉しい限りだ」
「鍛冶も農業も畜産、薬品作りや道具作りとかみんな助かってるって言ってるわ」
ミラールも仕事がない時は村に遊びに来ている。
そんな村も開拓により土地が広がった所から舗装が始まっている。
「魔族ってなんであんなに器用なの?」
「そうだな、魔界というのは産業が盛んな場所だ、学ぶより働く者が多いからな」
「そうなの?つまり学校に行くよりそのまま働く道に進む感じかしら」
「そもそも魔界に学校は少ないからな、学ぶには人を頼るか自費でやるしかない」
「だから技術を持つ人が多い一方で、計算が苦手みたいな話なのかしら」
魔界において魔族は学ぶより働く道に進む人が多い。
それにより技術を持つ者が多く育つという。
だがその一方で学校は少なく、経営者を目指すような事でもないと勉強はしないという。
「魔族の生き方ってそれこそ技術を身につける事が優先される感じなのかしら」
「そんな感じだな、学ばなければ出来ない職を目指す者はきちんと学ぶがな」
「そういう考え方の違いって興味深いものね」
「だからこそ魔族は外の世界に出稼ぎに行く事も多かったりするのだぞ」
「技術は優秀な人が多いから、誰かの下について働くのに向いているって事なのね」
魔界は力や強さこそが全ての世界だ。
だからこそ王となるべき存在はその強さによって選ばれる。
なお学校は珍しいが、最低限の読み書きだけは自発的に学ぶという。
「でも村で働いてくれる魔族達もミラールの言う通りな感じよね」
「ああ、魔族は強い相手に従う種族、だからこそ優れた者の力になれるのだ」
「物理的な強さだけじゃなく、技術的な強さも含まれるのね」
「技術は優れているが、強き相手を尊敬するからこそだな」
「魔界でも基本的にはその職場のリーダーに従うタイプなのかしら」
魔族というのは言うならば強き兵隊になれる人達が多い種族だ。
魔族を束ねるのは強き者だからこそ、そんな強い兵隊からリーダーが生まれる。
もちろんその技術は外の世界に行けば、その職場のリーダーより優れる事もあるという。
「魔族の価値観っていうやつなのかしら、多芸なのは仕事の種類が多いって感じよね」
「そうだな、魔界の中で働く者も多いが、出稼ぎに行く者も多いからな」
「とはいえ魔族ってどこで働いてもそつなく働くから、本当に助かるのよね」
「役に立っているようなら嬉しい限りだな」
「人によって得意なものはあるけど、いろんなところに入れられるのは強いわよね」
魔族にも人によって得意不得意は当然ある。
だが得意な事になれば平均以上に働いてくれる。
また新たに仕事を始めた村人にもある程度は教えられているという。
「魔界の事情や魔族の生き方というのは勉強になるものね」
「人間界では働く前に学ぶ事が多いのだろう」
「確かにね、貴族はほぼ確実に学校に行くし、平民も平民向けの学校があるし」
「人間は知識を身につけてから技術を学ぶのか、魔界とは正反対だな」
「魔界は学ばずに技術を覚えるタイプなのよね」
魔族は目で見て覚える人達が多いのが特徴だ。
なのでプロの技術もある程度は目で盗めてしまう。
そうした特技を持つものが多いのも魔族の特徴と言える。
「魔族と人間って見事に正反対な生き方をしてる感じがするわね」
「人間は知識を技術に活かすタイプが多いというのは分かるからな」
「その一方で魔族は知識ごと見て覚えるタイプというのは見ていて感じるわよね」
「それも魔族の特徴だな、技術は学ぶものでなく盗むものという考えが強い」
「技術を盗む、つまり持ち帰るのではなく目で見て学ぶ感じなのよね」
魔族にとって技術は盗むもの。
もちろん悪い意味ではなく、目で見て覚えるという意味での盗むだ。
なので魔族は見る力が強い種族でもある。
「魔族には本当に助かっているから、いい相手と手を結んだものよね」
「魔族達もいい稼ぎになっていると言っていたからな」
「それは嬉しい限りだわ」
魔界と手を組んだ事で様々な仕事が楽になっている。
各仕事場でもリーダーの人が魔族は物覚えがいいと感心している。
プロには劣るが、吸収能力はとても高い。
仕事を覚えるのが速いというのは何よりも強い武器なのだ。




