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終わりの日、そして始まりの日

オルライトが村の領主代行になってから四年が経過した。

本日は契約の通りの任期が満了する日。

そして村の住民達にも正式に国からの通達が届いていた。

オルライトが改めて正式に村の領主に就任する事となる日が来たのだ。


「さて、改めて正式に村の領主に就任する事になったわけだけど」


「もっと大々的にお祝いとかしてもよかったんですが、これでいいんですか?」


「これでいいのよ、料理とかは平民達が食べ慣れてるものでやった方が落ち着くでしょ?」


正式に領主になった祝いの席は設けてくれたものの、並ぶ料理は庶民的なものばかり。


それはオルライトなりに村のみんなが食べ慣れているものの方がいいと思ったのだろう。


「でもあの日からあっという間の四年間だったわねぇ」


「そうですね、前の領主様が持病の悪化で療養する事になって、オルライト様が来て」


「私自身手探りではあったけど、出来る事はやったつもりよ」


「そして正式に領主になった事で、改めて領地の運営に乗り出すと」


「そういう事よ、でも四年間ってこんなに早く感じるものなのね」


時の流れの早さはあっという間だったというオルライト。

それだけ村の発展のために粉骨砕身働いてきたという事でもあるのだろう。


ある意味ライフワークバランスなどかなぐり捨てて働いてきたのかもしれない。


「でも流石に一万人を超えると、祝いの席に使うスペースが足りないわね」


「あくまでも参加は任意という事にしてあるので、全員は来ていませんけどね」


「せめて料理ぐらいは食べて欲しいとは思うんだけどね」


「まあそれも含めて、大きなイベントホールみたいなものでも建てるとかはどうですかね」


「イベントホール、確かにいいわね、多目的に使えるとなおいい感じかしら」


この祝いの席を見て大規模なイベントホールの大切さを感じた様子のオルライト。

なので正式に領主になって最初の仕事は大きなイベントホールの建設になりそうだ。


大規模なパーティーから音楽のコンサート、劇団なども呼べたらいいなと思う。


「大規模なイベントホールを建てるからには、劇団や楽団の公演も呼びたくなるわね」


「劇団や楽団ですか、でもそういうのはチケットだけでも平民にはかなり高いのでは?」


「ならイベントホールは大きいものと小さいものと二つ建てようかしら」


「小規模なイベントホールもですか?」


「そう、小規模なホールなら使用料も安く抑えられるし、小規模な楽団とかも呼べるしね」


小規模なイベントホール、それは小規模な楽団や劇団も呼べるという事でもある。

実際国には貴族御用達の劇団や楽団の他に、平民などに人気の小規模な楽団や劇団もある。


平民達の娯楽としての小さな劇団や楽団も呼べるというのは意味があるのだ。


「とりあえずまずはイベントホールね、あとは村での公演に遠方からの人が来て欲しいし」


「そうなると馬車代とかも馬鹿にならないと思いますけど、人の輸送費をどうするかですね」


「そこもまた課題になりそうね、とりあえず優先するのはイベントホールの建設かしら」


「イベントホールは常に使う施設ではないので、維持費も必要ですしね」


「そこは私の私財と税金でなんとかしていくしかないわよね」


イベントホールは常に使う施設ではないというのがある。

なのでそれの維持費などもまた必要になってくる。


そこは税金や私財から捻出していく事になりそうだ。


「とりあえず正式に領主になったからには開発も再開していく事になりそうね」


「その開発は国からこれをやれあれをやれとかの指示はないんですか?」


「そこまでの指示はなかったわね、あくまでも私がやりたい事をやっていいって」


「国がそこまで信頼している辺り、オルライト様への信頼が窺えますね」


「まあアッシュ家自体が国からの信頼がある家でもあるから」


オルライトの家自体が国からの信頼も厚い家であるという事。

だからこそ国も開発の中身はオルライトの自由にさせてくれたのだろう。


その結果が他種族や新興企業を誘致し、その名産品や製品を村で作る事に成功したという事だ。


「なんにせよ開発が明確に終わるのは、村からの納税額が安定した時らしいわよ」


「なるほど、それまでは開発を続けていいという事ですか」


「そういう事みたいね、開発に関しても正式に領主になった事で、権限全部使えるから」


「領主代行の時はあくまでも代行としての権限しか使えなかったんですね」


「とりあえず今日は終わりの日であり、始まりの日でもある、そういう事よ」


終わりの日であり始まりの日でもある。

それは代行という肩書が外れ、正式に領主という肩書に変わった日。


オルライトの領地運営はここからが正式に始まる事となるのだから。


「さて、挨拶が始まるから、終わったらまた食べに来るから」


「はい、村のみなさんにご報告しないといけませんしね」


「ええ、スピーチもしっかりやらなきゃ」


こうしてオルライトの領主代行の日々が終わり、領主としての日々が始まった。

村はこの四年で国が定める基準を満たし街へと変わった。


伝承の樹は今も村の近くの丘の上からこの村を見守っている。


謎多き伝承の樹がこの村、そしてこの国の歴史に関係しているのは確かなのだろう。


謎は多く、国の人間も詳しくは知らないが、それでもこの国のシンボルとしてその樹は立っている。


改めて正式な領主としてのオルライトの忙しい日々は始まるのだ。


様々な異種族、さらには異世界人から魔族までこの村は全てを包みこんでくれるのだから。


幼き日は野生児とすら言われたその娘は貴族としての責任感もまた強い立派な人間である。

オルライトの物語はまだ前半戦どころかあらすじさえも終わっていないのだから。

もうちっとだけ続くんじゃ。

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