さらなる発展へ
オルライトが国から戻って数日。
村は当初の目的だった開発はほぼ完了し、ここからは独自の裁量になる。
とはいえ正式に領主にはまだなっていないので出来る事は限られる。
一旦新規のものを増やすのはストップし、正式に領主になるまでは村を見て回る事に。
「本当に立派になったものねぇ」
「オルライト様のおかげですよ、あの寂れていた村がこんな大都市になったんですから」
「そうね、でも国が予定していた開発事業ではあったのよね」
そんなオルライトも正式に領主になる事にはすでにサイン済みだ。
あとは人気が終わり次第正式に領主になる事となる。
「でも開発に関しては村の人達から反対の声もあるかと思っていたけど」
「村の人達はその辺は抵抗はないですからね、昔はここも発展してましたし」
「その昔って何年前ぐらいなのかしら」
「うちにある歴史書とかを見る限り200年ぐらいだったかと」
「200年、寂れていったのにも理由はあるって事なのかしらね」
村が栄えていたのは大体200年ぐらい前の話らしい。
ただ村の近くの山にはこの国に伝わる伝承に登場する樹もある。
その樹は昔からこの地に立っていて、伝承にも様々登場するらしい。
「でも伝承の樹って結局なんなのかしら、不思議な力を持ってるとかなのかしら」
「フユさんがこっちの世界に迷い込んだのはもしかして伝承の樹の力では?」
「あの日起きた地震ってもしかしてフユの世界とこの世界を繋げたとかかしら」
「その可能性はあると思いますよ、歴史書にも異邦の民がちょくちょく出てくるので」
「その異邦の民が伝承の樹の力でこの世界に迷い込んできたという事なのかしら」
バルカ曰く歴史書にも異邦の民の話はちょくちょく出てくるという。
その異邦の民は伝承の樹の力でこの世界に迷い込んだ人ではないのか。
当時はこの村にエルフなどはいなかったため、帰れたのかどうかは定かではないが。
「私も歴史書とかは読むけど、異邦の民ってこの世界の他国の人だと思ってたわよ」
「伝承の樹の力でこの世界に迷い込んだとしたら、そういう力があるのかもですね」
「伝承の樹、ますます謎は深まるわね」
「恐らくは伝承の樹にはやはり特別な力があるんだと思いますよ」
「確かに、あの樹だけは何があっても倒れたりしてないっぽいものね」
昔もこの村の周辺で山火事や地震はあったという。
だが伝承の樹はそれでも倒れる事も焼け落ちる事もなかったという。
やはり特別な樹であり、大きな力を秘めているのだろうか。
「伝承の樹がなんで伝承として残ってるのか、その理由までは分からないものね」
「とはいえ異邦人の話が歴史書に出てくる以上、やはり扉を開く力はあるのかもですね」
「扉ねぇ、確かにそういう力があるのならフユがこっちに来たのも納得ではあるわよね」
「伝承の樹はずっとこの村を見守ってきたのかもしれないですしね」
「下手したら国の発展や衰退も見てきたのかもしれないしね」
伝承の樹は長らくそれを見守ってきたのか。
その樹はいい事も悪い事も多くを見てきたのかもしれない。
謎は多いものの、やはり特別な力があるのは確定なのかもしれない。
「それはそうと正式に領主になったら、改めて村をもっと発展させたいんだけど」
「それは構わないと思いますよ、村の人達も反対はしないでしょうし」
「今は正式に領主になる前だから、権限にある程度の制限があるしね」
「とはいえ今の村の発展はオルライト様のおかげです、俺は感謝してますよ」
「バルカも公では私っていうけど、私的な場だと俺なのね」
そんなバルカも村の発展自体は歓迎の立場だったという。
村長ではあるものの、オルライトに一任してくれた事もやはり大きかった。
バルカはあくまでも村の人達を取りまとめる立場であるという事なのか。
「村長と領主がいると、領主が上の立場になるのは仕方ないのよね」
「そもそも領主館があるのがこの村というだけですよ、だからこそなんです」
「領主館がある街や村と、領内の他の街や村とはまた違うものね」
「領主に陳情に行くには領主館まで行く必要があるのもまた事実なんですよね」
「だからこの村は立地としても恵まれていたのよね」
村は領主館の目の前にあるという好立地だ。
だからこそ発展もスムーズに進んだという事をオルライトは理解している。
やはり領主館が近くにあるというのは大きいのだろう。
「とりあえず村の開発の再開は正式に領主になってからよね」
「今は休息の期間という事ですかね、オルライト様はよく働いてくれましたし」
「そうね、これだけ働いたのははじめてよ」
「でもオルライト様には本当に村のみんなは感謝していますからね」
「そう言ってもらえると嬉しいものよね、やってよかったわ」
オルライトも今は少し休む期間である。
正式に領主になったあとはさらなる開発へと着手する事となる。
村はまだまだ発展していけるとオルライトは感じているようだ。
「さて、何か甘いものでも食べに行きましょうか」
「今は休んでくださいね」
「まあ仕事は残ってるからそれの処理もしないとね」
そんなオルライトも正式に領主になるまでもう一ヶ月もない。
人気が終わり次第正式に領主になる事となる。
村の開発が再開されるのはそれからになる。
今は残っている仕事を片付ける事が優先だ。




