栗の木が生えていた
すっかり秋本番になり村もすっかり涼しくなった。
そんな中エルフが何やら見つけたという。
少し様子を見に行ってみると、それは裏山に生えていたものの話だという。
その生えていたものとは。
「何か見つけたのかしら」
「はい、裏山にこれが生えていたようで、たくさん収穫してきました」
「これって栗の実?裏山に栗の木なんて生えてたのね」
エルフが裏山で見つけたという栗の実。
山を崩してまで土地を広げた身としては、山はまだ未知のものがあるのかもしれない。
「でも栗の実ね、食べられるのよね?一応は」
「はい、食べ方はいろいろありますけど、とりあえず火で煎ってみます?」
「あら、いいわね、焼き栗は私も好きなの」
「ではやってみますか、少し待っててくださいね」
「ええ、期待しているわよ」
そのまま鉄鍋を持ってきて栗を火にかけ始める。
弾ける音がしている中少し経って出来た様子。
殻を剥いていただいてみる事に。
「ん、これ美味しいわね、中は甘くてホクホクだわ」
「身は結構落ちていたので、恐らく結構前からある栗の木のようですよ」
「裏山にはもっといろいろあるのかしら?未踏の地っていう感じね」
「村の人達も崩していない山に行って山菜などを採っているようですしね」
「ここは海沿いの村だから、海から反対に行くとまだ山は残ってるのよね」
この村は海沿いである、なので海と反対方向に行くとそれなりに立派な山がある。
その山に入って山菜などを採ってきている村人もいるという。
村への街道こそ整備されているものの、村への街道からは山も見えるのだ。
「でも海と山に挟まれた村だからこそなのね、海にばかり注力していたのは誤算だったかしら」
「山の幸は他にもいくつか見つけているのですが、それをどうにか出来ないものですかね」
「うーん、正式に領主になってからの話になってきそうね」
「そうですか、ですが山は宝の山だと思いますよ」
「植物とかそういうものも食べられるものがあるのなら何かと使えそうね」
村が海沿いという事もあり、海の方にばかり注力していた。
そのため山の方は整備こそしていたものの、大体は手つかずだ。
エルフを始めとする何人かの村人も山に入って何かと採取していたようで。
「でも山ねぇ、そうだ、山ならキノコ栽培とか始めても面白そうね」
「キノコ栽培ですか?確かにやろうと思えば出来なくはないですが」
「高級なキノコなんかを栽培出来るようになったら面白そうよね」
「まあ市場を破壊するような事はしない方がいいとは思いますが」
「それはそうなのよね、でもそういう事に挑戦するのも悪くないと思うわよ」
高級なキノコを栽培出来るようになったら確かに市場は崩壊するかもしれない。
とはいえそれが出来るようになったらそれはそれで面白いだろう。
高級食材を大衆にも届けられるようになる、それはそれでメリットもあるのか。
「山にはこの栗の他にも何かとありそうね、調査を入れてみようかしら」
「それはいいと思いますよ、まずは調査からというのは大切ですから」
「そうね、何かと始めるのは少しあとからになりそうだけど」
「オルライト様は正式に領主になるつもりなんですよね?」
「ええ、打診は来ていたから二つ返事で返しておいたわ」
山の本格的な利用は正式に領主になってからの話になりそうだ。
とはいえ山に調査だけは今から入れておく事にした。
地質の調査や、生えている植物などの調査が主になりそうだ。
「それにしてもこの栗美味しいわね、パクパクイケるわ」
「栗は料理に使っても美味しいですからね、使い道は多様にありますよ」
「でも使うとしたらやっぱり甘いお菓子なんかになるのかしら」
「その方がいいかもしれませんね、栗のお菓子は美味しいですから」
「栗の木、やっぱり山は未開拓領域になるわね」
鉄鍋で煎った栗、シンプルなものの方が美味しいという事なのかもしれない。
水分が飛んだ栗の実はホクホクで口の中に甘さが広がる。
栗はデザートにするのに使えそうだと考える。
「エルフは植物には詳しいのね、栗の実の食べ方とかも知ってるし」
「栗自体は人間も食べていますけど、食べ方は様々ですからね」
「私も山の幸はもっと食べるべきなのかしら」
「山の幸は毒があるものも多いので、それを見分けないといけませんけどね」
「それはまあそうよね、特にキノコなんかはその見分けが難しいって聞くし」
毒キノコも当然生えているのが山という場所だ。
木の実などにも場合によっては毒がある場合もあったりする。
山の味覚は美味しいものも多いが危険なものもまた多いのだ。
「とりあえず山に調査を入れてみるわね、あと栗の実美味しかったわよ」
「はい、正式に領主になった時は遠慮なく頼ってくださいね」
「分かってるわ、まずは代行としての任期が終わるまでやるべき事をしないとね」
そんな街道沿いにある山の調査を入れる事を決めたオルライト。
村の入口には山があり、その先には海がある。
海にばかり注力していたので山はほぼ未開拓だ。
山の幸の名物なども作れるかもしれない。




